愛されて40年のヨーグルッペ、名前の由来は東北弁?…新海誠作品きっかけで全国区に

 宮崎県都城市の乳製品メーカー「南日本酪農協同」の乳酸菌飲料「ヨーグルッペ」が発売から40周年を迎えた。「子どもも大人も飲みやすい乳製品を」と生まれた南九州発のロングセラー商品はアニメ映画に登場したことなどをきっかけに、全国各地にファンを持つ人気ドリンクとなっている。(石原拓海)

「ヨーグルッペ中毒者」からメール

 昨年10月、南日本酪農協同に自らを「ヨーグルッペ中毒者」と名乗る福井県の消費者からメールが届いた。

南日本酪農協同本社でヨーグルッペを飲む石川課長(都城市で)

 「先日職場のスタッフから何気なしに貴社の商品を頂き、飲んで以来すっかりヨーグルッペの虜になってしまいました。とんでもない出 逢(あ) いを果たしてしまって困ってます」

 そんな言葉に続き、ヨーグルッペを置いているスーパーを探して買い求めている様子などが記されていた。

「高い技術力で開発」

 「デーリィ」ブランドの牛乳で知られる南日本酪農協同がヨーグルッペを発売したのは1985年。3種類の乳酸菌と乳を配合して開発し、酸味を控えた口当たりの良いマイルドな味わいを特徴としている。

ヨーグルッペなどを製造している南日本酪農協同の都城工場(同社提供)

 当時は技術的に困難とされたペクチンと呼ばれる天然由来の多糖類を安定剤としており、同社は「高い技術力によって開発された乳酸菌飲料」とする。名前の由来は、初代社長の木之下利夫さんが、縁のあった東北地方の方言「~っぺ」を取り入れたのが有力とされているという。

 ただ、商品としての知名度は高くなく、当初の販路は南九州が中心。同社は宮崎、鹿児島両県を中心に小売店を回るキャンペーンを展開するなどし、徐々にファンを増やしていった。

「秒速5センチメートル」きっかけに

 その後、新海誠さんが監督を務め、2007年に公開されたアニメ映画「秒速5センチメートル」で、登場人物がコンビニでヨーグルッペを買うシーンが登場して知名度はさらに高まった。この映画は3本の短編で構成され、登場したシーンは鹿児島県・種子島が舞台の第2話。アニメスタジオ「コミックス・ウェーブ・フィルム」によると、ロケハンに行った際、地元のコンビニに売られているのを見かけたのが登場のきっかけになったという。

 南日本酪農協同の石川年樹・企画管理課長は「この映画をきっかけに一気に全国で知られるようになった。東京で九州や宮崎のフェアが開かれると声がかかるようになった」と話す。今や北海道を除く全国各地のスーパーやコンビニで販売されるようになり、昨年度のヨーグルッペの売り上げは07年度の約2倍だった。

マンゴー味も

 ヨーグルッペの基本のラインアップは紙パックの「プレーンタイプ」(200ミリ・リットル、希望小売価格税抜き102円)や「りんご」(同)など。現在は40周年を記念し、「マンゴー」と「サワーメロン風味」も販売されている。

 石川課長は「もっと多くの方にヨーグルッペを知っていただけるようなプロモーションを展開していきたい」と話す。

 同社商品企画課の西立野莉子さん(23)は小さい頃からヨーグルッペファン。ほのかな甘みが好きで、どんな仕事に就こうか考えた際に「ヨーグルッペを広めたり、製造に関わったりしたい」と思ったという。「これからも全国の方に飲んでほしい」と願っている。

 北海道では、関連会社の北海道日高乳業が手がける姉妹商品「北海道日高乳業 ヨーグルッペ」が92年から販売されている。一部の原料の仕様が違うことなどから、南日本酪農協同のヨーグルッペとは風味が若干異なるという。

県内外にファンがいる「愛のスコール」

愛のスコールも人気

 南日本酪農協同には、ヨーグルッペより前の1972年に発売された乳性炭酸飲料「愛のスコール」もあり、こちらも全国で販売される人気商品だ。当時、乳性炭酸飲料は珍しかったという。同社によると、当時の木之下利夫社長が釣りに出かけた際、クーラーボックスに入れていた牛乳とサイダーがこぼれ、混ざったことが開発のきっかけになった。

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