アップル全社員にAI「掌握」迫る-クックCEOが異例の会議
米アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)は1日、本社講堂で異例の全社会議を開き、人工知能(AI)分野の将来性と今後の「素晴らしい」製品群について社員を鼓舞した。
事情に詳しい関係者によれば、クック氏はAI革命がインターネットやスマートフォン、クラウドコンピューティング、アプリに匹敵もしくはそれ以上の規模になると説明し、「アップルがやらねばならないことだ。われわれがやる。これは、われわれの掌握すべきものだ」と語った。「そのための投資を行う」考えも示したという。
アップルはAIの分野で出遅れている。「Apple Intelligence」発表のタイミングは、オープンAIやアルファベット傘下グーグル、マイクロソフトなどが相次いでAI製品を投入した何カ月も後で、反響は鈍かった。
それでもクック氏は決算発表後の会議で楽観的なトーンを保ち、有望な新技術にアップルが後発で参入してきた傾向に言及した。
「Macの前にPCがあり、iPhoneの前にスマートフォンがあり、iPadの前に多くのタブレットがあり、iPodの前にもMP3プレーヤーがあった」と述べ、アップルはそれらの製品カテゴリーの「現代的」バージョンを発明したと強調。「これが私のAIに対する考えだ」と語った。
クック氏は通常、世界各地のオフィスを訪問する際にタウンホール型ミーティングを行う。全社集会を本社のスティーブ・ジョブズ・シアターで開くのは珍しい。アップルの広報担当者は今回の会議についてコメントを控えた。
1時間にわたった同会議では、ジェフ・ウィリアムズ最高執行責任者(COO)の退任、Apple TV+ の視聴者拡大、補聴器機能を持つ「AirPods Pro」などのヘルスケア分野での進展にも触れた。
同氏は決算説明会と同様、AI投資を「大規模に」進めていると社員に対して述べた。過去1年で1万2000人を採用し、そのうち40%が研究開発(R&D)部門に配属されたという。
AI戦略の要となるのはチップ開発部門だとクック氏は説明した。同社はAI機能に対応する高性能クラウドチップ「Baltra」の開発を進めているほか、ヒューストンでは新たなAIサーバー製造施設の設置が進行中だ。
会議にはソフトウエアエンジニアリング担当上級副社長のクレイグ・フェデリギ氏も登壇し、音声アシスタント「Siri(シリ)」の将来的な刷新計画について説明した。
クック氏はスピーチで、社員がAIを製品や業務に迅速に取り入れる必要があるとし、「AIを活用しなければ、われわれは取り残される。それは許されない」と強調。従業員はAIツールの展開を加速し、マネジャーやサービス・サポートチームにも同様の取り組みを促すべきだと述べた。
ブルームバーグのこれまでの報道によれば、アップルは来年、初の折り畳み型iPhoneを投入する見通しで、スマートホーム機器の開発や新型ヘッドセット、スマートグラス、ロボティクス分野への展開、iPhone発売20周年に合わせたデザイン刷新なども進めている。
クック氏は「製品ラインアップは語れないが、とにかく素晴らしい」と述べ、「近いうちに見られるものもあれば、もう少し先のものもあるが、いずれにしても期待してほしい」と語った。
原題:Apple CEO Tells Staff AI Is ‘Ours to Grab’ in Hourlong Pep Talk(抜粋)