木材とトウモロコシから洗剤を作ることに成功

サイエンス

洗濯用洗剤から食器洗い用洗剤まで、洗剤は生活に欠かせないものです。ところが、これらの洗剤に使われる化学物質は分解が困難であったり、生態系を変えてしまう藻を発生させたりするという問題があるため、研究者らは「環境に優しい洗剤」の開発を進めています。そんな中、木材とトウモロコシ由来のタンパク質から洗剤を作ることに成功したと、中国の研究者らが明らかにしました。

Physical Cross-Linking of Cellulose Nanofibrils with Zein Particles as an Eco-Friendly Detergent | Langmuir

https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.langmuir.4c04398

Researchers create eco-friendly detergent from wood fiber and corn protein - American Chemical Society https://www.acs.org/pressroom/presspacs/2025/march/researchers-create-eco-friendly-detergent-from-wood-fiber-and-corn-protein.html

界面活性剤として使われる化学物質のアルキルフェノールエトキシレートなどは、生体のホルモン作用に影響を与える「環境ホルモン」と見なされ、近年はこうした物質を環境や生物に優しい物質に置き換えようとする努力が続けられています。ただし、環境に優しい洗剤は製造が難しく、洗い流しにくいため、製造コストや小売コストが高くつくだけでなく、衣服や食器の表面や繊維を傷める可能性もあります。そのため、低コストで簡単に製造でき、環境にも洗浄対象にも優しい、効果的な代替品が望まれています。

このニーズに応えるため、天津科技大学のウェンリー・リュー氏らは豊富な再生可能資源に含まれる成分から環境に優しい洗剤を開発しました。 リュー氏らは木材から採取した極小のセルロース系繊維と、トウモロコシの主タンパク質であるゼインを組み合わせた新しい液体を考案。インクやラー油、トマトペーストで汚れた綿布をきれいにする実験を行ったところ、1%の濃度では従来の洗剤より洗浄効果が低かったものの、5%の濃度では1%の濃度の洗剤より効果的に汚れを落とすことに成功しました。さらに、綿布に残留物を残すこともありませんでした。

また、陶器、ステンレス、ガラス、プラスチック製の皿についた油の汚れを落とす能力をテストしたところ、ここでもセルロースとゼインでできた洗剤は同じ希釈度の市販の食器用洗剤とほぼ同等の洗浄力を示したとのこと。例えばステンレスの板ではセルロース/ゼインの5%溶液で92%の汚れが落ち、市販の食器用洗剤は1%溶液で87%の汚れを落としたそうです。このことから、セルロースとゼインでできた洗剤の濃度を5%まで上げれば、市販の洗剤よりも優れた洗浄力を発揮すると結論づけられました。 リュー氏らによると、セルロース系繊維は水を引き寄せたりはじいたりすることができ、一方でゼインは油分を閉じ込める働きがあるそうで、これにより従来の洗剤に負けない効果を発揮するそうです。

リュー氏らは「セルロースとゼインでできた洗剤の結果は、現在市販されている合成洗剤に代わる、効率的で費用対効果の高い持続可能な洗剤になりうることを示している」と述べました。

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