5.6万年前のグランドキャニオン大規模崩落、隕石衝突に関連か 地質学的証拠が示唆
地球の土砂崩れは、浸食、地震、火山噴火などの結果として起きるが、理論上は小惑星衝突の衝撃波が断崖の崩落を引き起こす可能性もある。 論文の共同執筆者で、米コロラド大学ボルダー校(UCB)月科学探査センターの所長を務める、アリゾナ州にある有名なバリンジャークレーター(アリゾナ大隕石孔)の専門家のデビッド・クリングは同クレーターの形成年代を再測定し、天体衝突が5万3000年~6万3000年前に起きたと結論づけた。 バリンジャークレーターを形成した天体衝突は、崖崩れを引き起こすほどの規模だったのか。この衝突や他の天体衝突の物理的過程に関するクリングの記述と計算結果によると、衝突によってマグニチュード5超の地震が起き、衝突地点から160km北のグランドキャニオンに(ものの数秒で)到達した衝撃波によってマグニチュード3.5の揺れが発生したと考えられる。すなわち、バリンジャーの天体衝突によってグランドキャニオンの切り立った断崖が「振動で緩んだ状態」になり、「いつ崩落してもおかしくない状況」になったのかもしれない。これは今日もなおグランドキャニオンで起きている多数の落石が示している通りだ。 カールストロームは「隕石衝突、大規模な崖崩れ、古代湖の堆積物、河川水位よりも高い位置にある流木はすべてめったに起きない稀な出来事だ。それらの発生年代の平均値が、5万5600年プラスマイナス1300年という狭い期間に集中している。このことは、これらの出来事に因果関係があるとする仮説に信憑性を与えている」と結論づけている。 今回の論文「Grand Canyon landslide-dam and paleolake triggered by the Meteor Crater impact at 56 ka」は学術誌Geologyに掲載された。オンラインで全文を閲覧できる。 追加資料とインタビューは米ニューメキシコ大学より提供された。
David Bressan