NASAが小惑星探査ミッション「Psyche」探査機の問題を調査中 キセノン供給圧力が低下

NASA=アメリカ航空宇宙局は2025年4月29日付で、小惑星探査ミッション「Psyche(サイキ)」の探査機で発生した電気推進システムの問題を調査中であると発表しました。

Psyche探査機にはキセノンを使用するイオンエンジンが搭載されていて、2024年5月から稼働しています。

NASAによると、エンジンにキセノンガスを供給する配管で2025年4月1日に圧力の低下を検知。圧力は36psiから約26psiまで低下しており、Psyche探査機は設計通りにエンジンを停止させました。

Psycheミッションのチームは、圧力低下の原因を技術者が解明するまでの間、イオンエンジンの稼働を延期する決定を下しています。ミッションの設計上、2025年6月中旬までならば、稼働を一時的に停止していても軌道に影響は現れないとされています。

キセノンの供給ラインは2系統用意されているため、稼働再開に向けて予備の系統に切り替える可能性もあるということです。

Psycheとは

Psycheは火星と木星の間に広がる小惑星帯を公転する最大幅280kmの小惑星「Psyche(プシケ)」の周回探査を目的とするミッションで、低コスト・高効率な探査を目指すNASAの「ディスカバリー計画」14番目のミッションとして2017年に選定されました。

Psycheは鉄やニッケルといった金属を豊富に含む「M型小惑星」に分類されていて、その正体は初期の太陽系で形成された原始惑星のコア(核)ではないかと予想されてきました。過去に探査機が接近して観測した小惑星や彗星は主に岩石や氷でできていたため、Psyche探査機は金属質の小惑星を初めて間近で観測することになります。

地球のコアを直接調べることはできませんが、原始惑星のコアだった可能性があるPsycheの観測を通じて、地球のような惑星の形成についての貴重な情報が得られると期待されています。

2023年10月にアメリカ企業SpaceXの「Falcon Heavy(ファルコンヘビー)」ロケットで打ち上げられたPsyche探査機は、2026年春に火星でスイングバイを実施した後、2029年にPsycheに到着して、26か月間にわたる周回探査を実施する予定です。

関連画像・映像

【▲ NASAの小惑星探査ミッション「Psyche(サイキ)」の探査機の想像図(Credit: NASA/JPL-Caltech/ASU)】

文・編集/sorae編集部

関連記事

参考文献・出典

関連記事: