世界で長期債売り加速、日本が筆頭-財政悪化やインフレ再燃を警戒

日本やドイツ、英国、フランスの長期国債利回りが14日の取引で軒並み上昇。財政赤字拡大への懸念が高まる中、国債需要が減退した。

  日本の30年債利回りは2カ月ぶりの大幅な上げを記録し、同様の年限のドイツ債利回りも14年ぶりの高水準に迫った。日独では金融政策よりも財政悪化懸念の方が強く意識されている。米国債の売り圧力はそれほど大きくないものの、米30年債利回りは1カ月ぶりの高水準に達した。

  足元の利回り上昇の直接的なきっかけは、日本の参議院選挙を巡って拡張的な財政政策への懸念が拡大したことや、トランプ米大統領が週末に欧州連合(EU)などへの関税を発表したことだ。これを受けて、過剰な政府債務や放漫財政、国債供給のだぶつき、根強いインフレといった深刻な懸念が再燃した。

  MSFインベストメント・マネジメントのシニアマネジングディレクター、ブノワ・アンヌ氏は、「市場の主要な注目が金融政策から、予算や国家債務の動向へと移った」と述べた。

  投資家の需要が衰えなければ問題はないが、「放漫財政への強い懐疑心」が急速に高まり得ることが過去の例で示されていると、アン氏は指摘する。

  短期債の利回りは政策金利の動向をより反映しやすく、利下げ観測を背景に比較的小幅な動きにとどまっている。しかし、長期ゾーンでの需要減退は、各国で膨らむ政府債務がいずれ限界点に達するとの懸念を如実に物語っている。

日本、ドイツ

  各国政府は国債の発行を増やす方向にある。ドイツは今年、軍備とインフラ整備のため、長年の財政緊縮路線を転換。日本では参院選を控え、与野党が現金給付や減税の公約を有権者に訴えている。

  日本の30年債利回りは10ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)超上昇し、5月に付けた過去最高水準に近づいた。日本銀行は昨年にマイナス金利政策を終了し、それ以降2回の利上げを実施した。次回7月30-31日の金融政策決定会合では、政策金利は現行水準0.5%での据え置きが広く予想されている。

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  超長期債の需要が減退している背景には、日銀が国債買い入れの減額を徐々に進めていることに加え、英国と同様、生命保険会社などの伝統的な買い手が購入を縮小していることがある。

  バークレイズ証券の為替債券調査部長、門田真一郎氏は、過去とは異なる環境だと指摘。今回の選挙に特有の状況だと思うと語った。

  ドイツでは30年債が下落し、利回りは3bp上昇の3.25%と、2023年以来の高水準を記録した。同国のメルツ首相は、トランプ氏が警告した30%の関税が導入された場合、欧州最大の輸出国であるドイツ経済は深刻な打撃を受けるだろうと述べた。

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トランプ減税巡る不安

  米30年債利回りは、ニューヨーク時間午前11時時点で3bp上昇の4.98%。月初からは20bp余り上昇している。

  オールスプリング・グローバル・インベストメンツ債券部門のチーフ投資ストラテジスト、ジョージ・ボリー氏は「米30年債利回りは5%近辺にあり、再び5%を上抜ける可能性が高い」と、ブルームバーグ・ラジオで語った。「財政赤字を伴う支出が世界に広がっており、その圧力の逃げ場が長期ゾーンに集中している」と述べた。

  米国では、トランプ氏の「大きくて美しい法案」が今後10年で数兆ドル規模の追加債務をもたらすとみられており、投資家の不安がくすぶっている。

「インフレ行きの財政バス」

  ヘッジファンドのブルー・エッジ・アドバイザーズでポートフォリオマネジャーを務めるカルビン・ヤオ氏(シンガポール在勤)は、長期国債の利回りは「当面この水準に張り付くだろう」とし、成長が鈍化するまで利回りは下がらないとの見方を示した。

  ヤオ氏は米国債のいわゆるスティープナー取引のポジションを取っており、2年債と5年債が10年債と30年債をそれぞれアウトパフォームすると見込んでいる。

  「米国も日本も欧州も、ガソリン満タンでインフレ行きの財政バスに乗っているようなものだ」とヤオ氏は語った。

  一方、英国とフランスでは、巨額債務の削減が進まない中、借り入れコストが急上昇している。

原題:Japan Leads Global Long-Bond Drop as Spending Takes Center-Stage(抜粋)

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