【オートレース】荒尾聡「過去は過去。大事なのは先」~SG川口オート第44回オールスターオートレース

◆第44回オールスターオートレース(SG、27日・4日目、川口オートレース場)

 今、飯塚の絶対的エースは、もどかしく悩んでいる。

 まだまだ、その座を譲りたくはない。でも、かわいがる若手たちの台頭をどこか心待ちにしている自分もいる。

 「今の僕は、何というか狭間にいる感じなんですよね…」と荒尾聡はポツリつぶやいた。

 自身初となるSG初制覇を達成したのが、2007年オールスターだった。デビュー7年目のスピード戴冠をこのタイトルで実現し、2019年、2020年大会でもVを決めた。

 さあ、4度目のオールスター制覇はあるか。実現の可能性を本人に問うと、冒頭のフレーズが思わず彼の口から聞き漏れた。

 「だって、今年は本当に不調過ぎるもんね。実際にお金はたくさん使って、いろいろとやってはいるんですが、なかなか動いてくれないんだ。たぶん、今年の賞金は回収できていないと思うよ。う~ん、本当に手は動かしているんだけれど…」

 永遠のプリンスも43歳になった。この長引く不振は、単なる一過性のものなのか。それとも、加齢に起因する緩やかなピークアウトの時期がいよいよ到来したのか。本人は「まだまだやれるはずなんだ…」と自身を鼓舞し続けながら、今シリーズも時間を費やして、懸命に作業をこなし続けている。

 「やっぱりね、自信って怖いですよね。自信を付けるためには、ものすごく時間が掛かるのに、自信をなくしてしまうのって、これが逆で本当に一瞬なんだよね。まだまだ踏ん張れるんだと思ってはいるのですが、ああ、そろそろ(世代交代の)順番なのかなあ~って、どこかで考えてしまうんですよね」

 荒尾が強く望んでいることがある。それは、彼と同じ飯塚に所属する若手たちの頼もしき躍進である。

 「今の若い子たちのスピードとか勢いは本当にすごいんだ。自分も抵抗するのに懸命ですが、そういう速くてイキがいい若手が僕と同じ飯塚の子なら、もう彼らに潔く次を託せるんだけれど、今の速い子たちってみんな他の場なんだよなあ。僕が若手だった頃は、飯塚の強い先輩たちからたくさんのいいものを受け継がせて頂きました。今、また同じそういう流れになってくれたら、僕もうれしいんだけれどね。飯塚の若手はだめだなって、よそで思われてしまうのは、やっぱり絶対に許せないからね」

 飯塚にも中村杏亮や長田稚也、福岡鷹など、近い将来タイトルを狙える素材は登場してきてはいるが、それでも川口に属する黒川京介や佐藤励といった圧倒的素材には及び切れない現況である。

 「そうなんだよね。だから、もう少し僕も頑張らないとね。自分自身はまた飯塚NO1の座を取り戻すことを目標にやって来て、今はまたトップになれましたが、NO1を奪われていた有吉辰也さんは本当にすごいですよね。若手にならともかく、先輩の有吉さんには負けちゃあだめだもんね!頼もしい後輩たちが出てくるまで、まだまだ頑張らなくっちゃね。もう、そこは葛藤です。最後に、初めてオールスターを獲った時の感想を教えて欲しい?う~ん、もう20年近く前のことでしょ。泣いた記憶はないけれど、そこまでよくは覚えていないかな。ほらっ、過去は過去だから。大事なのは、これから先だと思うよ!」

 さっきまで、今後もエース道を突き進むべきか、このまま若手たちにその座を禅譲するか、大いに葛藤していると口では言っていたのに、「過去は過去。大事なのは先」って、やっぱり荒尾さん、まだまだ大エースのポジションを明け渡すつもりはなさそうです。そうこなくっちゃ。それでこそ、天下の飯塚総大将です。

 ファンと一緒に安心しました。(淡路 哲雄)

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