「日給1万円、3日後に支払い」──Threadsで急増する“アルバイト詐欺”に引っ掛かってみた 実際の手口は?
7月ごろから、Metaが提供するSNS「Threads」(スレッズ)で、ネットショップのアルバイト募集に関する詐欺被害を訴える投稿が急増しています。 【画像で見る】LINEからWebページへ移動するように指示される。URLはすぐに送信取消された Threads経由でアルバイトに応募すると、最初は研修期間として1日数時間の受発注業務を依頼されるのですが、その後に「共同出資で店舗を運営することになった」として多額の出資金を要求されるというものです。 こうしたネットショップにまつわる詐欺は、Threadsに限らずさまざまな場所で勧誘が行われている実態があります。7月28日には三重県の50代男性がTikTokで知り合った人物に「ネットショッピングを経営しないか」と誘われ、5420万円の詐欺被害に遭っています。 現在、Threadsを中心に行われている詐欺では、6月30日に日本で提供が始まった「TikTok Shop」(TikTok内で利用できるEC機能)のアルバイト募集をうたっているものが多いようです。 Threadsには、被害者と思われる人々が「TikTokショップの副業で84万ものお金を用意しろと言われた」「私も同じパターンで600万円と言われ、必死にお金集めた」といった投稿が寄せられています。 そこで、詐欺の具体的な手口を知るために、TikTok Shopのアルバイトをうたう募集に応募してみました。なお、今回使用しているSNSアカウントは、全てテスト用のアカウントです。
Threadsには「ネットショップ業務募集」「注文処理スタッフ募集中」といった投稿が多数見られます。「1日数時間で日給1万円、3日後に支払いを受けられる」というパターンが多いようです。 筆者はThreadsで募集していたアカウントに連絡しました。「InstagramのDMで連絡をください」とあったので、おそらくThreadsのDMが始まる前(7月15日以前)から行っていたのだと思われます。 ThreadsからInstagramに遷移し、DMで働きたいと伝えました。すると、TikTokプラットフォームでの注文処理が主な業務となること、1日1~3時間で働くこと、3日間の試用期間があることなどを告げられます。 興味があるならLINEアカウントのQRコードを送るようにと言われました。「QRコードの撮り方が分からない」と言ってみましたが、優しく手順を教えてくれました。 QRコードを送ると、すぐにLINEの「友だち」に追加されました。A氏と名乗るアカウントは、先ほどと同じように業務の説明をしてから、年齢と職歴、結婚の有無について尋ねてきました。希望の勤務時間も聞かれ、時間帯を固定したいと言っていたため、先方はスケジュールを組んで対応しているのかもしれません。 続いて、「TikTokビジネス版」をダウンロードするように言われます。そんな名前のアプリは存在しませんが、送られてきたリンクからWebページにアクセスすると、アプリストアへのリンクが用意されたページが表示されました。 筆者のスマホはiPhoneなので「App Store」と記されているリンクを踏むと、「TestFlight」と「TikTok」のインストールボタンが表示されます。App Storeのリンクを踏めば、通常はストアのアプリページが開くため、この時点でもおかしいことが分かります。 まずはTestFlightをインストールします。TestFlightとは、iOS用に開発したアプリをストア配信前に限定公開できるAppleのプラットフォームです。次に「TikTok」と称されるアプリをインストールします。実際には「TikTok BHIOpe」というアプリ名で、デベロッパ名は「Hafay KAZAZ」と記されていました。 インストールすると、TikTokとそっくりのアプリが起動します。ここに、Googleアカウントでログインするように言われます。なぜGoogleアカウントなのか、理由は不明です。 ログインすると、「ショップセンター」というタブを開き、店舗を開設するように指導されます。ここまで、スクリーンショットをLINEに送ると、タップすべき部分が記されたスクリーンショットが返される形式で指示が続きます。 「店舗情報」には、実在するカー用品専門店の名前を入れるように言われました。店舗の写真も送られてきます。また、自分の運転免許証、身分証明書、健康保険証などの番号と画像、自分の氏名を入れるように指示されます。招待コードも指定されます。勧誘が成功した場合の識別用かもしれません。 潜入はここまでとしましたが、手口は以下のような流れであることが分かりました。 1. ThreadsなどからLINEアカウントに誘導 2. LINEから偽アプリをインストールさせる 3. 偽アプリに個人情報を入力させる この時点で、自分のThreadsやInstagram、LINEアカウントを相手に知られています。偽アプリに入力してしまうと、自分のIDも相手に送信してしまうことになります。おそらくこの後、口座番号などの金銭をやりとりする情報も伝えることになると思われます。 実際にアルバイトをすると、報酬を得られる人とそうでない人がいるようです。その後、研修期間が終わったからとネットショップ共同運営のための出資金を求められます。「お金がない」と断っても、カードローンで借りるように勧められた人もいます。 Threadsで被害を訴える投稿には、暴力団の名前を出されている人もいたようです。個人情報を知られている上で脅されると、つい言いなりになってしまうこともあるのでしょう。闇バイトでも、先に相手に個人情報をつかまれてしまうため、犯罪を実行してしまうケースがあります。