今後確実に消えていくシロモノですが……あえて考えたい令和時代の「官能エンジン車」
今後の自動車界は確実に電動化へと向かい、内燃機関は消え去るのがほぼ確定している。電動化を否定する気はさらさらないが、電気自動車の魅力はまた後日紹介するとして、ここでは令和の価値基準で探す「官能エンジン」について語る!!※本稿は2025年9月のものです文:ベストカー編集部/写真:中里慎一郎
初出:『ベストカー』2025年10月10日号
【画像ギャラリー】消える高回転エンジン……それでもクルマ好きは興奮を求める!! 令和の価値基準で探す「官能エンジン」(37枚)昔と今とではエンジンに求めるものは大きく変わってきているが、現代の価値基準から選び出される「官能エンジン」が存在する
今の時代、BEVに限らず、ストロングハイブリッド、あるいはマイルドハイブリッドなど、自動車動力の電動化が必須というのは避けられない現実だ。
もちろん電動化を否定する気持ちは毛頭ない。
しかし、「ないものねだり」と言われようが、「懐古趣味」と言われようが、やっぱり内燃機関が繰り出す独特の音や振動は、それがビート感や鼓動となってドライバーの心を虜にするというのも、また真実だ。
2025年。地球規模として目指すべきカーボンニュートラル(CN)へのカウントダウンが進む現在、新たな価値観で味わえる「官能エンジン車」がある。それはどんなエンジンを搭載したクルマなのか? 鈴木直也氏、片岡英明氏、松田秀士氏が解き明かす。
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ベストカー「今の時代の“官能エンジン車”とはどんなエンジンを積んだクルマなのかを考えていくため、ロードスター、スイフト、WRX S4、CX-60、レクサス RX350の5車に改めてお乗りいただきましたが、いかがでしたか?」
鈴木「ボクは今日、ベストカーの別件の取材で参加できなかったけれど、この5車は何度も乗っているので大丈夫!」
片岡「レクサスRX350の直4、2.4Lターボは久しぶりに乗りました」
松田「トヨタの2.4Lターボ、意外と気持ちいいんです。シュワーンと軽快に吹け上がって、トルクもしっかり出ているし、回転の上昇とパワーの出方がいかにも内燃機関っぽい」
鈴木「8速ATのギア比やシフトレスポンスなんかも効いている」
松田「あの8ATはいい!」
鈴木「それにしても昔風の高回転までスカーンと回して気持ちいい官能エンジンってのは、今はないよね」
片岡「排ガスと燃費対策ですよね。ロングストロークになって、中回転域でのトルクを出すチュー二ングが主流になりました」
鈴木「時代の変化だよね。今や排ガス出して燃費がよくないエンジンは、商品として成立しない」
松田「ボクがレースを始めた1983年、スーパーシビックレースというのに出ていたんだけど、このエンジンが高回転までよく回ってとにかく気持ちいいし速かった。
で、翌年F3に乗るんですが、この直4、2Lが回らないんです。5000rpmとか6000rpmで頭打ち。でも、F3ではそれが速いんです。中速のトルクでコーナーからいかに早く立ち上がるかで直線のスピードを乗せていく」
鈴木「ドライバーが高揚する気持ちのいい吹け上がりと、レースで実際に速いエンジンは違う、というね」
松田「そうです。グループA時代のBMW M3は直4の2.3L・NAで高回転まで気持ちよく吹ける。ある時エンジニアが新しいセッティングを試したいと言って、ぜんぜん吹けない仕様を持ってきた。走らせていると高揚感はないんだけど、ラップタイムは確実に上がっているんです。まさに中速域のトルクなんです」
「官能エンジン」の価値基準が大きく変化した現在も、内燃機関の魅力を感じさせてくれる新たなクルマがたくさんある
鈴木「昔はパワーを出すためには無理やり高回転まで回すしか方法がなかったけれど、中速域でしっかりトルクを出せば、そんなに高回転まで回す必要もない」
片岡「現在のエンジンはこの考え方ですよね」
鈴木「今回のスイフト、直3、1.2Lはマイルドハイブリッドだけど、あれはフィーリング的には純内燃機関と言ってもいいよね」
片岡「モーターは3.1ps、6.1kgmで発進時のアシスト程度。ストロングハイブリッドのようなモーター駆動感覚はありません」
松田「特筆する内容のエンジンではないんだけど、走らせていると、エンジン車ってこういうのだったよね、という感覚を味わえた」
鈴木「スズキはわざわざ直列3気筒エンジンを新開発したんだよね。効率よくして燃費を引き上げている。真面目だよね」
松田「回転マスが小さくて、軽快でレスポンスがいい」
片岡「従来の4気筒よりも軽快でシュンシュン回る」
鈴木「ファン・トゥ・ドライブという意味では、1.4Lターボのスイフトスポーツよりもボクは好きだな」
片岡「スイスポの1.4Lターボも悪くはないけど、もうひと伸び欲しいところで頭打ちになっちゃうのが残念なんです」
鈴木「MTよりも6速ATで乗ったほうがあのエンジン特性にはマッチする」
松田「でも、レースやジムカーナなんかではタイムが出るトルク特性なんだよね」