進化したGRヤリスに異変!? モータースポーツ起点のクルマづくりだからこそ生じるトヨタの試練
/ コラム
どうしてもトヨタが好きで、トヨタの内情を知りたい!! ということで自腹でレースやラリー現場に足をはこぶ大学生に原稿をもらってみることに。正直なところまだまだ甘いところもありますが、次世代人材としてあたたかい目で見てあげてください。今回はGRヤリスに搭載されたDAT(ダイレクトオートマチックトランスミッション)に生じた異変に迫っていく!
文/:大学生くま吉くん/写真:大学生くま吉くん、トヨタ
【画像ギャラリー】ポイントはレスポンスの遅れ!? トヨタの飽くなき進化は試練の歴史! まだまだアップデートの余地はアリ!(3枚)モリゾウチャレンジカップ参戦車両のレプリカ
勝田貴元に続く次世代のドライバーを発掘、育成を目的に昨シーズンから始まったMCC(モリゾウチャレンジカップ)。2年目となる今年、MTのGRヤリスに加え、DATのGRヤリスも参加可能となった。しかしMCCの現場では原因不明の異変が起きていた。
その異変の原因は何なのか、それを明らかにするために著者はGRヤリスの担当エンジニアに話を聞いてきた!!
MCCの現場で起きている異変、それはズバリ「DAT勢の苦戦」だ。そもそもMCCは全日本ラリー選手権JN2クラス内に併設されており、参加可能な車両は「2020年発売のGRヤリス(MT)」と「2024年発売の進化型GRヤリス(DAT)」の2車種に限られている。
そして2020年発売のGRヤリス(MT)の最高出力は272ps、最大トルクは370Nm。一方、2024年発売の進化型GRヤリス(DAT)は最高出力304ps、最大トルクは400Nm。加えて空力面や車体なども「もっといいクルマづくり」により進化しており、スペック上では明らかにDATが優れているように見える。
それでもDATが苦戦しているということは、「性能調整」にてDATの性能を落としているのか? 答えは否。
今シーズンの開幕前に著者がトヨタ自動車に聞いてみた際に「MTとDATの性能調整は、差が検証し切れないため(性能調整は)実施せず」と答えていた。ならば、このDAT勢の苦戦の原因は車両側にあるはず!!
そこで著者は、2025年の富士24時間レースで、GRヤリスの担当エンジニアにその原因を尋ねることにした。
より性能に磨きのかかったGR-DAT(GAZOO Racing Direct Automatic Transmission)
GRヤリスの担当エンジニアによると、DAT勢がMCCで苦戦している主な原因は「レスポンスの遅さ」だという。MT車の場合、ドライバーがクラッチとシフトを操作するため、加減速のタイミングが直感的かつダイレクトに伝わっていく。
一方で、DAT車は現状、「トルクコンバーターを常に滑らせる構造のため、アクセル操作に対する反応がほんの少し遅れる傾向がある」そうだ。
この特性は、スーパー耐久(S耐)などのサーキット走行では問題になりにくく、むしろシフトロスが少ない分、MTより速いことも多々ある。
しかしラリー(MCC)では、急な加減速を繰り返すため、この「レスポンスの遅れ」が顕著なデメリットとして現れているわけだ。
もちろんこれは、GRヤリスの担当エンジニアの見解であり、トヨタ自動車から公式に発信されている訳ではないが、GRヤリスを知り尽くした担当エンジニアの発言として、非常に信憑性のある意見だと著者は感じている。
S耐の現場でも鍛えられているGRヤリスDAT
ここで気になるのは今後の対応だ。
モリゾウさんが常日頃、言っているようにトヨタは「モータースポーツを起点としたもっと良いクルマづくり」を目的にモータースポーツに参加している。
いくら次世代ドライバーの発掘と育成を目的にしているMCCといえども、ラリーの現場で出た課題はフィードバックしなければならない。
そこで、このDATのレスポンス問題についてソフトウェアアップデートなどで対応可能かどうか尋ねたところ、「今後のアップデートで改善していく予定です」との回答が得られた。
さらに、「アップデート後にはDAT車が圧勝する可能性もあるか?」という質問には、「あるかもしれないね(笑)」と前向きな言葉を頂いた。
果たして今後、DAT勢の逆襲はあるのか、注目だ!!