NTTドコモ第2四半期は増収減益、「ドコモMAX」の拡充と「ネットワーク品質」改善で利益改善を図る

代表取締役社長の前田義晃氏

 NTTドコモは4日、2025年度第2四半期決算を発表した。営業収益は前年比+1.3%の3兆327億円、営業利益は-14.2%の4747億円、四半期利益は-12.7%の3398億円だった。法人とスマートライフセグメントは増収増益した一方、コンシューマー通信は減収減益となった。

 コンシューマー通信セグメントの営業収益は1兆6495億円だった前年同期から431億円減収の1兆6064億円となった。モバイル通信サービス収入や機器収入の減少が主な要因だが、代表取締役社長の前田義晃氏はサービス収入の対前年減収幅は四半期単独で減少しているとし、復調傾向にあると分析する。前田社長は、コンシューマーモバイル通信市場の現況を「これまでになく競争は激化している」とし、販促施策の強化など顧客基盤強化を進め、通期で「MNPプラス」(他社への流出よりも流入が多い)を目指すとした。

 前田社長は「MNP転入ユーザー数が昨年に比べてかなり多いがサービス収入が減少している、ということは、転出ユーザー数が多くなっているということ。販売促進をそれなりにしてきたが、それだけ他社が積極的な取り組みをしていると理解している」と分析した。

 新料金プラン「ドコモMAX」については、さらなるサービス拡充を発表する。10月の数字でポイ活プランをあわせて150万契約を超えたとしており、旧プランからの移行率も9月時点で58%となっている。2026年3月の目標数字「300万契約」に向けて、2月から映像特典のラインアップを強化し、スポーツだけでなくエンターテイメントやアニメなどさまざまな特典を提供し、「特別な体験価値の提供」で、契約数を伸ばしていく構えだ。

 ユーザー1人あたりの単価を示すARPUは、対前年+30円の3960円となった。ドコモMAXなど新料金への移行拡大が貢献しているとし、引き続き向上への取り組みを進めていく。

 スマートライフセグメントでは、金融とdポイントなどのマーケティングソリューション、エンターテイメントの3事業ですべて増収を達成。営業収益は前年同期の5901億円から+348億円の6249億円となった。

 金融事業では、dカードの上位カード「dカードPLATINUM」の会員数が100万会員を突破し、決済取扱高の伸長に貢献した。投資分野では、d払いアプリ内の「かんたん資産運用」を開始以降、新規口座開設数が増加しており、顧客層拡大に寄与した。今後は、出資する住信SBI銀行を含め投資や保険とともに通信と決済を連携させ、より最適な金融サービスをユーザーに提案し、金融事業全体の拡大を目指す。

 エンターテイメント領域では、WOWOWとのコンテンツ共同調達、制作で連携していくことが同日発表された。2社の強みを活かしたコンテンツの拡充で収益拡大を目指していく。

 法人セグメントの営業収益は、前年同期の8789億円から+591億円の9380億円となった。成長領域というインテグレーション、プラットフォーム事業が順調で、公共、製造、流通業界の需要増や中小におけるパッケージソリューションが成長したという。

 プラットフォーム事業では、AI時代のニーズを満たす「AI-Centric ICTプラットフォーム」を掲げ、NaaS(Network as a Service)を強みにさまざまな法人顧客に対しDXソリューションを提供。グローバルの評価機関においてもドコモのNaaSは評価されているとしている。

 説明会では、業績とは別立てでネットワーク品質の改善状況について説明された。5G基地局については、2023年度末と比較して約1.3倍の数になっていると説明。ノキアのデュアルバンド対応MMUやHPUEの導入、Sub6対応レピーターの導入など、最新技術、設備を積極導入し、通信品質向上に取り組んでいるという。

 今年度下期では、上期よりも基地局の構築を加速させる。上期と比較して3倍の5G基地局を構築するとし、2026年度は25年度以上の構築数とする計画もあるとし、改善への動きをアピールする。

 品質の現況とし、全国主要都市中心部と主要鉄道沿線での改善状況を取り上げる。全国主要都市中心部のダウンリンクスループットは2024年3月比で25年9月には+25%、26年3月には+30%以上になると説明。主要鉄道路線においても同様に9月に+40%、26年3月には+50%以上になるとしており、これまでの取り組みの成果と共に、これからの取り組みによりさらに通信品質改善が期待できるとした。

 質疑で前田社長は「正直、時間がかかっていることは事実」と指摘。基本は首都圏を中心とした都市部に問題が多いとしたものの、基地局建設には地権者との調整などで時間が掛かっていると話す。一方、先述の「下期3倍の5G基地局構築(上期比)」は「完全に目処が立っている」とし、ユーザーに期待してほしいとした。

 今後のトラフィック量について前田社長は「基本的には増え続ける認識」と、継続的な取り組みを実施する一方、コスト効率にも目を向けて、基地局装置の調達などでは、スケールアップすることで全体のコストを下げていく取り組みなど、工夫しながら整備していく実情も語った。

 ここからは、主な質疑を取り上げる。

――d NEOBANKの名称についての反響や住信SBI銀行の行名変更など今後の見通しを

前田社長 d NEOBANKの反響は良いと思う。住信SBI銀行と一緒に協議して決めた名前で、どちらかというと住信SBI銀行側から提案があった話だった。実施中のキャンペーンも大変好評で、反響は良いと思う。今、口座数を増やす意味でキャンペーンをやり始めているが、さまざまな連携サービス、お得になるようなサービスを来年度くらいから進めていけるように準備している。

 名称を変更する方向で考えているが、関係者との協議を続けており、時期も含めてあらためて紹介できるタイミングがあればと思う。

――住信SBI銀行のBaaS(Banking as a Service、銀行の機能やサービスをクラウドサービスのようにAPIを通じて提供する)の見通しは?

前田社長 これからも、積極的に展開していく。法人向けでニーズが非常に高く、ほかのさまざまなサービスをやりながら銀行機能も提供していきたいという、ある意味BtoBtoCのモデルをやっていきたいパートナー企業はまだたくさんいると認識している。

――ドコモMAXの特典について、DAZNとLeminoでジャンルが重なる配信があるが、棲み分けなどどのような関係性になるのか? ワールドカップ配信の報道なども一部あったが。

前田社長 ワールドカップの配信は、私も全然聞いていない。全然知らない。

 ドコモMAXのユーザーの中には、サービスにコンテンツが紐付けられているのでわかりにくいところはあると思う。ユーザーが見たときにわかりやすくできるか、というところは検討していきたい。

 ただ、元々それぞれ単体のサービスで存在しているのもあるので、どういうコンテンツにしていくかは、それぞれのサービスで分けて考えていくところもある。結果として少し重なってしまったりする可能性はどうしてもあると思う。なるべく、ユーザーにわかりやすくなるようにしていきたい。

――ドコモMAXの選べる特典について、DAZNとNBAに比べて拡充されるLeminoとdアニメストアで価格差が大きいと思うが、どのように考えているのか? ラインアップの拡大はあるか?

前田社長 ドコモMAXは、もともと提供価値でユーザーに選んでもらいたいという思いで始めた。現在ドコモMAXを選んでいないユーザーを考えたときに、多くのユーザーを満足させるということで今回拡充した。既存サービスの料金というよりは、ユーザーがどのコンテンツで楽しんでもらいたいか、ということを考えて、そこに対して応えていくということを重要視しており、このラインアップとなった。

 今後のコンテンツ拡充も、もちろんある。ユーザーニーズをしっかり汲み取りながらいいサービスにしていきたい。

――irumo(0.5GB)の終了はどのような影響があったか?

前田社長 MNP転出が増えたというよりも、価格帯に対して反応するユーザーを取れなくなったことの影響が大きいと思う。ただ、0.5GBプランを契約したユーザーには、早期に解約するユーザーがかなり多くの部分を占めていたので、一過性のものとは言えないと考えている。

 一方で、ドコモminiでやっている容量帯と価格は、競合他社がサブブランドで提供している部分なので、0.5GBプランをやっていないことが大きく劣っているわけではない。逆に早期解約ユーザーが少なくなり、顧客基盤が強化されていくことになるので、基本的にはポジティブなことだと思う。

――MNP転出の流出先で多いキャリアはどこ?

前田社長 回答は控えるが、キャリアによってもかなり違う状況になっている。

――iPhone 17発売日にeSIMの手続きでトラブルがあったが、準備できていなかったのか?

前田社長 もちろん準備してきたが、かなり多くのユーザーが手続きをしたためこのような状況となってしまった。必ずしも対処が十分ではなかったと反省している。今後こういうことがないよう、しっかり進めて参りたい。

――ネットワーク品質改善に時間が掛かっている要因はほかにあるのでは? 電波干渉など別の要因があるのでは?

前田社長 基本的に、建設に直接関わるプロセスで時間が掛かっているので、干渉などで時間が掛かっているわけではない。

 26年度の取り組みを発表したが、これからもやり続けていかなければならない。我々としても完全にナンバーワンに返り咲きたいということでやっているので、まだまだ充実させていく。下期3倍の5G基地局構築という計画は、このレベルでも他社に匹敵するレベルになってくると考えているので、2025年度末には、かなり良くなってきている、他社並みになってきていると思う。それを超えるために26年度もしっかり取り組ませていただく。

――品質向上に向けて、新しい技術を取り入れたり、アップデートはあるか?

前田社長 具体的に今考えられているものはない。

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