【分析】物価高騰よりも「尻」、トランプ氏が男性の体に言及するのをやめられない理由
演説中にヒューステッド上院議員を指さすトランプ大統領=12日、オハイオ州ヤングスタウン/Alex Wong/Getty Images
(CNN) トランプ米大統領が男性上院議員の「尻」について語ったこと自体は、さほど興味を引く話ではない。
興味深いのは、トランプ氏がこの話を何度も繰り返していることだ。
たぶんガソリン価格よりも、尻の筋肉について語る方が楽しいのだろう。
2026年中間選挙を目前に控えた最終週の動きを注視している人なら、トランプ氏がジョン・ヒューステッド上院議員の尻をいたく気に入っていることは、もう知っているはずだ。
CNNのアンダーソン・クーパー・キャスターは、ヒューステッド氏の体格についてのトランプ氏の見解を手際よくまとめている。
トランプ氏はどうやら、この話題が自分にもヒューステッド氏本人にもプラスになっている、と本気で考えているようで、自ら始めておきながら終結の糸口がつかめないイラン戦争や、引き下げに苦慮している物価などではなく、あえて尻について語ってきた。
トランプ氏は25日、米FOXビジネスのラリー・クドロー氏との電話インタビューで、ハステッド氏の体を褒(ほ)めたことに自分から言及。自身の称賛によって世論調査でハステッド氏の支持率が上がったと主張した。
念のため指摘しておくと、クドロー氏が質問したのはヒューステッド氏についてでも同氏の尻についてでもなく、オハイオ州上院選についてですらなかった。単に共和党が多数派を維持できるかという一般的な見通しを尋ねただけだ。ところがトランプ氏はヒューステッド氏について延々と語り、尻にまつわる話題がオハイオ州上院選のターニングポイントになったと主張した。
インタビューの一部を紹介しよう。クドロー氏の反応は示唆的だ。
トランプ氏:「彼の支持率は14ポイントほど上がった。私の集会のおかげだ。あの言葉、つまりAで始まる言葉を使った時、誰もが『なぜそんな話をするんだ』と言っていた。映像は全部は流れず、一部だけだった。私は彼の体を見て、『この男のたくましさを見てくれ。クレージーだろ』と言及した」
クドロー氏:「はあ」
トランプ氏:「すると連中は『何だって? なんでそんなことを言うのか』という反応だった。例のフェイクニュースだ。連中は『一体なぜ』と言っていたが、せめてあと30秒聞いていれば、どういうことか分かったはずだ」
クドロー氏:「はあ」
トランプ氏:「だが知っての通り、効果は絶大だった」
クドロー氏:「ええ」
トランプ氏がどの世論調査を指しているのかは不明だが、最近の調査によると、オハイオ州上院選は相変わらず接戦が続いており、民主党のシェロッド・ブラウン元上院議員がわずかにリードしている可能性もある。
ヒューステッド氏はFOXニュースで、注目を浴びたことで筋力トレーニングに励む気になっていると明かした。
ヒューステッド氏の24日の話では、「妻に『ジムに通って、評判に見合う体を維持しないといけないな』と伝えた」という。
誰だって、テキサス州のケン・パクストン司法長官よりはヒューステッド氏の立場になりたいだろう。上院選に出馬しているパクストン氏はトランプ氏からたびたび服装を酷評され、尻を使った下品な表現で「困った奴」とまで言われている。
トランプ氏の政治的嗅覚(きゅうかく)は独特で、これまでの実績はあるが、最近は常識をあざ笑うような言動がますます目立つ。ジョージア州での集会では、ガソリン価格高騰にいら立つ米国の有権者に寄り添うどころか、米国はイランとの戦争で「富」を得ているとの主張を打ち出した。
トランプ氏は24日には、「フェイクニュースの見出しが目に浮かぶ」「『トランプ大統領は金もうけの話ばかり、ガソリン価格高騰に苦しむ国民を尻目に』。そんな見出しになるだろう。だが私に言わせれば、知ったことではない。我々は大きな富を得ている」と語った。
国民がヒューステッド氏の体の話を聞きたがっているかどうかについても、トランプ氏は気にかけていない。トランプ氏の念頭にあるのは、ヒューステッド氏の体格を話題にすることが選挙で有利に働くという確信だ。
トランプ氏はミシガン州での25日の選挙集会で再びこの話題を取り上げ、普段は男性よりも女性、とりわけ自分を支持する女性ラッパーの体に関心があると強調した。
ミシガン州上院選の共和党候補、マイク・ロジャース元下院議員をからかい半分に褒める場面もあった。
「マイク、もしそれで当選が確実になるなら、君の尻についても同じことを言いたいところだ」(トランプ氏)
この前日、フロリダ州南部で投票を済ませたトランプ氏は妻メラニア氏の隣に立ち、ヒューステッド氏の体つきに世間の注目を集めたことが本人のためになったと語っていた。
ノースカロライナ州の集会では、この話をいったんやめた時点で、ヒューステッド氏の支持率は10ポイントも上昇していたと主張した。
トランプ氏が他人の体に口を挟むのは今に始まったことではない。24年大統領選では、伝説のゴルフ選手アーノルド・パーマー氏の局部のサイズについて言及。政界進出する以前にも、ラジオ番組でハワード・スターン氏と一緒に、自分の娘を含む女性についてあれこれ語り合ったことがある。
どういうわけか、トランプ氏はヒューステッド氏の体格に関する話が選挙集会の鉄板ネタとして受けると思っているようだ。
第2次トランプ政権では男女の役割や男らしさの概念にスポットライトが当たっており、政権やその支持者はとりわけ、トランスジェンダー問題に注力する姿勢が目立つ。
トランプ氏自身は基本的に運動嫌いだが、政権に居並ぶ男性高官にとっては、筋骨隆々の男らしさを誇示することが重要らしい。
ヘグセス国防長官はSNSにトレーニング動画を投稿。軍内でテストステロン療法をもっと普及させ、受けやすくしたい考えを示している。
ロバート・ケネディ・ジュニア保健福祉長官は、ジーンズ姿で運動するインターネット上の動画で有名だ。
フロリダ州での先週の集会では、トランプ氏がケネディ氏の体格を自慢げに褒めたたえる場面もあった。
トランプ氏は聴衆に「真面目な話、ボブ(ケネディ氏)のあのガタイ、体つきを見た人はいないか? 誰か見たことはないのか?」と問いかけ、「30歳のような体だ」と語った。
選挙戦が終盤を迎え、トランプ氏以外にも他の政治家の体を褒めそやす動きが出ている。
オバマ元大統領は先日、黒のVネック姿で選挙戦に臨むミシガン州上院選の民主党候補、アブドゥル・エルサイード氏について語った。
「彼は根っからの体育会系だ」「あのたくましい腕を見てほしい。だからああいうTシャツを着ているんだ。私はTシャツ姿で選挙活動をした経験はない。あんな立派な腕ではないから」とオバマ氏。先週末の集会での一コマだ。
ブラウン氏に対してはもう少し手厳しかった。ブラウン氏はオハイオ州の議席への返り咲きを目指しており、オバマ氏は週末の集会でブラウン氏の応援にも回った。
オバマ氏は「彼はいまだに、20年前に初めて会った時の同じスーツを着ている!」とコメント。批判めいているが、ブラウン氏が自分自身よりもオハイオ州民のことを気にかけている証しとして持ち出したものだ。
議会での活動に大きく影響するような話ではない。それでもオハイオ州の有権者は、オバマ氏が推す「着古したスーツの男」か、トランプ氏が好む「引き締まった尻の男」か、選択を迫られることになる。
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本稿はCNNのザッカリー・ウルフ記者による分析記事です。