太陽系外の浮遊惑星、観測史上最高速度で成長中 毎秒66億トンのガス・塵を吸収

猛烈な勢いで周辺のガスや塵を取り込む自由浮遊惑星のイメージ図/ESO/L. Calçada/M. Kornmesser via CNN Newsource

(CNN) 天文学者らがかねて観測している太陽系外の自由浮遊惑星について、ある意味ではより恒星に近い活動をしている実態がこのほど明らかになった。その途方もない成長速度は、これまで確認したどの浮遊惑星にも見られない特徴だという。

「Cha 1107―7626」と呼ばれるこの自由浮遊惑星は、地球から620光年の距離にある。カメレオン座の中に位置するが、どの恒星の周りも回っていない。

惑星の質量は太陽系最大の惑星である木星の5~10倍に相当し、現在も毎秒その大きさを増している。天体物理学の専門誌「アストロフィジカルジャーナル・レターズ」で2日に発表された研究論文が明らかにした。

自由浮遊惑星「Cha 1107―7626」に大量のガスや塵が流れ込む様子を描いたアニメーション/ESO/L. Calçada/M. Kornmesser

誕生から100万~200万年経過したと推定されるCha 1107―7626だが、論文共著者で英スコットランドのセント・アンドルーズ大学に籍を置く天文学者、アレックス・ショルツ氏によれば、この惑星は依然として形成の途中だ。100万~200万年は相当の年月に思えるかもしれないが、天文学的に言えば幼年期に相当する。太陽系に属する惑星は、誕生からおよそ45億年が経過している。

Cha 1107―7626は円盤状のガスと塵(ちり)に囲まれている。それらは絶え間なく惑星に降り注ぎ、集積する。天文学者らはこの過程を「降着」と呼んでいる。ただ若い惑星が成長する速度にはばらつきがあると、論文の著者らは指摘する。

チリのアタカマ砂漠に設置された欧州南天天文台(ESO)の超大型望遠鏡「VLT」による観測を行い、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡でも追加の観測を実施したところ、Cha 1107―7626における物質の集積は数カ月前の8倍の速度で進んでいることが分かった。吸収されるガスや塵の量は毎秒66億トンに上り、観測史上で最速のペースとなっている。

こうした爆発的な活動は異例であり、これまで記録されたどの惑星の成長ペースよりも力強いと、論文筆頭著者で伊国立天体物理学研究所の天文学者、ビクトル・アルメンドロスアバド氏は指摘。研究によって惑星の形成と進化における激烈さに光が当たるとの認識を示した。

2008年の発見以来、天文学者らはCha 1107―7626を複数の異なる望遠鏡で観測。幼い惑星の進化とその周辺の現象について知見を深めてきた。24年にはウェッブ望遠鏡により、円盤状の物質が惑星を取り囲んでいるのを明確に検知した。

また観測の結果、ある奇妙な事象が発生したことが分かった。今年4月と5月の時点では安定していた降着のペースが、6月から8月にかけて爆発的に増大したのだ。

「当初は短期的な事象だろうと完全に思い込んでいた。それが極めて普通のパターンだから」「爆発的成長が7、8月まで続いた時は、まさに愕然(がくぜん)とした」(ショルツ氏)

ウェッブ望遠鏡で追加の観測を行ったところ、円盤状物質にも化学的な変化が生じていることが明らかになった。爆発的成長時に現れた水蒸気は、以前の円盤内には存在していなかった物質だ。これほど暗い天体の周辺で起きる微細な変化を検知できるのは、ウェッブ望遠鏡だけだとショルツ氏は述べた。今回の研究以前、円盤状物質の化学組成の変化は恒星の周囲のみで確認されていた。惑星の周囲でこの現象を検知したのはこれが初めてだった。

爆発的な降着が発生する前と発生してからの観測結果を比較したところ、磁気活動がその主な原動力とみられることが分かった。磁力によって大量のガスと塵が惑星に降り注いでいると考えられる。これは通常、恒星の成長に関連して発生する現象だ。

しかし新たな観測が示唆するように、恒星と比較して質量が格段に小さい天体でも、その成長を加速させるだけの強力な磁場を発生させる場合があると、論文の著者らは指摘している。自由浮遊惑星の質量は、太陽の1%に満たない。

このような自由浮遊惑星がどのようにして生まれるのか、明確なことはまだ分かっていない。考えられるのは本来恒星を周回していた惑星が、他の天体の重力的影響によってその軌道を飛び出すケースだ。または極めて質量の小さい天体が、たまたま恒星に類似した過程を通じて形成されている可能性もある。Cha 1107―7626に関しては、後者に該当するのではないかと天文学者らはみている。

ショルツ氏によればCha 1107―7626は、恒星と同様に分子雲の崩壊と断片から形成されている公算が最も大きいという。

米航空宇宙局(NASA)によると、分子雲とはガスと塵でできた低温の雲で、数百光年の距離にわたって広がることもある。

新たなデータを過去の記録と比較したところ、研究チームはCha 1107―7626が16年にも高い速度での降着を経験していることを突き止めた。これは急成長が繰り返し起きている可能性を示唆する。

現在チームは、爆発的な成長がどのくらいの期間続くのか、そしてどれだけの頻度で発生しているのかを調査したいと考えている。

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