初期宇宙の“霧”を晴らした紫外線 ハッブルが観測した約124億年前の銀河「MXDFz4.4」
STScI(宇宙望遠鏡科学研究所)のIlias Goovaerts氏を筆頭とする研究チームは、ビッグバンから14億年後、今から約124億年前の初期宇宙に存在した銀河「MXDFz4.4」に関する研究成果を発表しました。 初期宇宙の「小さな赤い点」の正体は? 分厚いガスに包まれた巨大なブラックホールか 研究チームによると、この銀河からは、当時の宇宙空間を満たしていた不透明な中性ガスを電離させて透明に変えるほどの強力な紫外線が放たれていることが確認されたといいます。研究チームの成果をまとめた論文は、学術誌「The Astrophysical Journal」のオンライン版に掲載されています。
NASA(アメリカ航空宇宙局)によると、ビッグバンから約10億年間の初期の宇宙では、まるで濃い「霧」のように、中性水素ガスが宇宙空間に満ちていました。天体が発した光はこのガスによって真っ直ぐに進むことができず、宇宙は不透明な状態にありましたが、数億年という長い時間をかけてガスが徐々に電離したことで、透明な状態へと変化していったとみられています。 この劇的な環境の変化は「宇宙の再電離」と呼ばれています。中性水素ガスの「霧」を晴らしたのはどのような天体で、どれほどのエネルギーを放っていたのかは、天文学における長年の大きな疑問のひとつとなっています。
今回観測されたMXDFz4.4は、この宇宙の再電離が終わりつつあった時代(赤方偏移z=4.442)に存在していた銀河です。 NASAによると、MXDFz4.4は面積では天の川銀河の約100分の1という小さな規模だったものの、天の川銀河の最大10倍のペースで星を生み出すスターバースト(短期間に激しいペースで大量の星が形成される現象)が起きていたといいます。 これまでは、初期宇宙に存在した中性水素ガスの「霧」は非常に濃かったため、それを晴らす原因となった電離光子(原子から電子を引き剥がすほどエネルギーの高い光)を直接観測するのは不可能だと考えられてきました。研究チームは今回、ハッブル(Hubble)宇宙望遠鏡が過去に長時間露光で取得した観測データを活用することで、MXDFz4.4から放たれたライマン連続光(水素原子を電離させる強力な紫外線)を捉えることに成功しています。 研究チームによれば、ジェームズ・ウェッブ(James Webb)宇宙望遠鏡の観測データを組み合わせて分析を行った結果、MXDFz4.4では観測された時点から遡って過去数百万年間にわたって、急激な星形成活動が起きていたことが確認されました。また、ESO(ヨーロッパ南天天文台)のVLT(超大型望遠鏡)による観測データからは、MXDFz4.4が約124億年前に存在したことが特定されています。 直接観測できないと思われていた光が観測できた理由については、狭い領域に密集して誕生した若い大質量星からの強力な放射や、こうした星々が短い寿命を終えて起こした超新星爆発によって銀河を取り巻く濃いガスが吹き飛ばされたことで、光の通り道が生じたからだと考えられています。論文では、星々が生成した電離光子の半分以上(50%~100%)が、この通り道を通じて銀河の外へ放出されたと推測されています。