トランプ氏の中東訪問、サウジからの投資1兆ドルは困難な見通し

米国のトランプ米大統領は、13日ー16日の日程で中東を訪問している。同氏は、サウジアラビアから1兆ドル(約148兆円)の投資約束をとりつけたい考えだが、サウジの経済変革という巨大な野望と、利害が衝突する可能性がある。

  ブルームバーグ・ニュースの推定によると、石油依存の経済を多角化するというサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子の計画には、2兆ドル近くの費用がかかる見通しだ。この計画に詳しい関係者や米国政府の予測、サウジアラビアの推定、調査会社ミードのデータに基づいて算出した。世界経済におけるサウジアラビアの役割を大きく変える、壮大な計画だ。

  何十年にもわたり国内支出を上回る収入を得ていたサウジは、海外に投資できる巨額の余剰資金を持っていた。ところが、高い国内支出と原油価格の下落により、状況は反転した。原油は依然として膨大な現金を生み出しているものの、サウジ経済の変革には多額の費用がかかる。

  米国務省の推計と建設関係者によると、完成時に1.5兆ドルを超える可能性がある未来都市プロジェクト「ネオム」をはじめとする巨大投資プロジェクトで、サウジの赤字額は増大している。ネオムは2017年に発表された際、5000億ドルのコストが見込まれていた。

  サウジは、2030年の万国博覧会、34年の国際サッカー連盟(FIFA)ワールドカップ、27年アジア・サッカー連盟(AFC)アジアカップなど、大規模な投資を要する複数の国際イベントも開催する予定だ。ネオムの一部、トロジェナプロジェクトは、29年アジア冬季オリンピック向けに、30キロメートルのスキー場を新設する。

  ブルームバーグ・ニュースが取材したエコノミスト2人によると、こうしたイベントの開催準備と開催にかかる費用は数百億ドルに上る可能性があるが、政府が詳細を公表していないため、具体的な数字は不明だ。

  こうした支出により、訪問中のトランプ氏にムハンマド皇太子が提示できる投資額は抑えられる可能性がある。サウジはすでに、ネオム計画の一部を縮小している。同国の9400億ドルの公共投資基金も、多くのプロジェクトの予算を削減し、支出義務を果たすために借入れを拡大している。サウジの現在の債務水準は低いものの、徐々に増加するリスクがある。

  ブルームバーグ・エコノミクスの新興市場担当チーフエコノミスト、ジアド・ダウード氏は「トランプ氏は1兆ドルの投資を求めているが、サウジアラビアは提供できない」と指摘する。ダウード氏はサウジの経常収支が過去1年間で赤字に転落したことを挙げ、「サウジは原油価格が比較的高い水準にあるにもかかわらず資本輸入国となり、これは少なくとも2030年まで続きそうだ。同国と世界経済との関係は、再構築されることになるだろう」との見方を示した。

  トランプ氏は、多数の著名企業の経営者らと共に、ムハンマド皇太子と会談する予定だ。今回の訪問中に大規模な投資計画を発表し、米国とサウジのさまざまなビジネス提携を公表したとしても、その資金の多くは当面、すぐに米国経済に流入するとは限らない。

  アラビア湾岸諸国研究所のティム・キャレン客員研究員は「今後4年間で1兆ドルの新規貿易と投資は実現しない」と述べた。同氏によると、この規模の投資はサウジ公共投資基金の全資産、サウジの国内総生産(GDP)約1年分に匹敵する。

原題:Trump Faces $2 Trillion Hurdle to Win Money From Saudi Prince (2)(抜粋)

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