ロシア軍が三日連続でウクライナを大規模空襲、米トランプ大統領は「プーチンは狂ってしまった」と非難(JSF)
2025年5月26日にロシア軍は三日連続となる長距離ドローン・ミサイル攻撃をウクライナに行い、合計で364空中目標(ドローン355機と巡航ミサイル9発)が飛来しています。この戦争でドローンの一度の飛来数が300機を超えたのは初めてで、過去最大数です。
- 2025年05月26日:364飛来(ドローン355機と巡航ミサイル9発)
- 2025年05月25日:367飛来(ドローン298機と弾道/巡航ミサイル69発)
- 2025年05月24日:264飛来(ドローン250機と弾道ミサイル14発)
最近の半年間(2024年11月~2025年4月)でロシア軍が発射した長距離ドローンの飛来数は17468機で、ほぼ毎日飛んで来ています。この半年間の平均で1日あたり100機弱が飛来している事になるので、ここ3日間のドローン飛来数903機は1日あたり約300機で通常の3倍の規模となっています。
ただし長距離ドローン攻撃は昨年の夏以降に安価な囮無人機が大量に混じりだしているので(囮無人機の本格的な大量使用は2024年10月以降)、自爆無人機の飛来数はこれより少ない筈です。おそらく比率としては自爆無人機は半分以下(3分の1以下も有り得る)ですが、残骸の全数調査は数が多過ぎて現実的ではなく、自爆無人機と囮無人機の正確な割合は不明です。
2025年5月26日迎撃戦闘:ウクライナ空軍司令部
- Kh-101巡航ミサイル×9飛来9撃墜
- 敵性無人機×355飛来288排除(233撃墜+55未到達)
ЗБИТО - 9 КР X-101
ЗНЕШКОДЖЕНО - 288 БпЛА
- 233 уражено вогневими засобами
- 55 локаційно втрач./подавлено РЕБ
- うち55機は位置喪失し未到達。/電子戦妨害の影響も
※КР : Крилата ракета, 巡航ミサイル ※直訳では有翼ミサイル
※БР : Балістична ракета, 弾道ミサイル ※今回は飛来無し
※БпЛА : Безпілотний літальний апарат, 無人航空機
※РЕБ : Радіоелектронна боротьба, 無線電子戦
ドローン飛来数355機は過去最大
5月26日の迎撃戦闘では戦略爆撃から発射された巡航ミサイル9発は全て撃墜し完封しましたが、長距離ドローン攻撃は過去最大355飛来を迎撃で止めきれず67機に突破されています。ドローンに対する迎撃率は55未到達を除外して計算すると迎撃率78%となっており、やや苦戦しています。ただしこれまでシャヘド自爆無人機などの長距離型のドローンに対する迎撃率はおおむね75~95%で推移して来たので、その範囲内ではあります。
過去3カ月分の巡航ミサイルの使用記録(亜音速型)
- 2025年05月26日:Kh-101×9
- 2025年05月25日:Kh-101/カリブル×55、Kh-59/69×4
- 2025年04月24日:Kh-101×37、カリブル×12、イスカンデルK×6、Kh-59/69×4
- 2025年04月06日:Kh-101/Kh-55SM×9、カリブル×8
- 2025年03月08日:イスカンデルK×1
- 2025年03月07日:Kh-101/Kh-55SM×35、カリブル×8、Kh-59/69×8
巡航ミサイル使用数は5月(68発)、4月(76発)、3月(52発)という推移になっています。攻撃の主力である戦略爆撃機から発射するKh-101巡航ミサイルに絞ると5月(64発)、4月(46発)、3月(35発)という推移です。
3月20日にウクライナ側の攻撃でロシア空軍エンゲリス基地の弾薬庫が破壊され、集積されていたKh-101巡航ミサイルが誘爆により96発が失われたとウクライナ側は判定しています。これが2カ月経って生産により備蓄は補充され使用数が戻りつつあります。
「プーチンは狂ってしまった」と米トランプ大統領、2025年5月25日
※ロシア軍による5月25日の大規模空襲でウクライナ民間人13名が死亡したことについて米トランプ大統領がロシアのプーチン大統領に対して激しい憤りを表明。
フレアを放出しながら飛ぶロシア軍のKh-101巡航ミサイル
※Kh-101巡航ミサイルはチャフ/フレア・ディスペンサーを搭載する世界でもこれしか実用化されていない珍しいミサイルで、この映像ではフレア(囮熱源)を放出しながら飛行、突入直前と思われる。チャフ(電波欺瞞紙)も選択可能。放出タイミングはおそらく事前プログラム方式。
※2023年1月30日のウクライナ空軍司令部の報告から、2023年1月26日にウクライナ西部ヴィーンヌィツャで撃墜したロシア軍Kh-101巡航ミサイル。12個の穴が開いた機器がチャフ/フレア・ディスペンサー「Л-504(L-504)」。2023年2月16日に残骸を分析した調査報告が出ている。関連記事
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