トランプ政権の司法長官が「TikTok禁止法を無視しろ」という書簡をGoogle・Apple・Amazon・Microsoftなどに送付していたことが判明

2025年07月04日 13時05分 ネットサービス

アメリカではTikTokのサービス停止を定めるTikTok禁止法が2024年4月に成立したのですが、ドナルド・トランプ大統領は2025年1月の大統領就任直後にTikTok禁止法の施行を延期する大統領令に署名し、その後も延期を繰り返しています。そんなTikTok禁止法を巡る文書の情報公開請求の結果、パム・ボンディ司法長官がGoogleやAppleなどのテクノロジー企業に対して「TikTok禁止法は合法的に無視できる」という旨の書簡を送付していたことが明らかになりました。

Trump Claims Sweeping Power to Nullify Laws, Letters on TikTok Ban Show

An Authority To License Illegal Conduct

アメリカは中国企業に対する規制を強めており、中国企業のByteDanceが運営するTikTokについても国家安全保障上の脅威から規制法案の制定を進めていました。そして、2024年4月にはTikTok禁止法とも呼ばれる「Protecting Americans from Foreign Adversary Controlled Applications Act(PAFACA：外国の敵対者が管理するアプリケーションからアメリカ人を守る法)」が成立しました。

TikTok禁止法には「TikTokが2025年1月19日までに事業を売却しない場合、TikTokのサービス提供とアプリ配布を禁止する」という条項が含まれており、実際に2025年1月19日にはGoogle PlayやApp StoreでTikTokアプリの配布が停止されました。同日にはTikTokのサービス自体も停止したのですが、当時大統領就任前だったトランプ大統領の働きかけによってサービスそのものは短時間で復旧しました。その後、トランプ大統領は大統領就任直後の2025年1月20日にTikTok禁止法の施行を75日間延期する大統領令に署名。2025年4月5日には2回目の施行延期令に署名し、2025年6月17日には3回目の施行延期令に署名しています。

トランプ大統領がTikTok禁止法の施行を90日延長する大統領令に署名し3度目の施行延期 - GIGAZINE

新たに、情報公開請求の結果、パム・ボンディ司法長官が複数のテクノロジー企業に「TikTok禁止法は合法的に無視できる」という旨を記した書簡を送付していたことが明らかになりました。書簡の送付日はトランプ大統領による2回目のTikTok禁止法延期令と同日の2025年4月5日で、書簡を受け取った企業にはGoogle、Apple、Microsoft、Amazon、Oracle、Akamai、LGなどが含まれています。 ボンディ司法長官がGoogleに送付した書簡が以下。ボンディ司法長官は「トランプ大統領は、TikTokの閉鎖についてアメリカの国家安全保障と外交問題に対応するという憲法上の義務に抵触していると判断した」と述べ、トランプ大統領によるTikTok禁止法延期令が憲法上の義務を遂行するための適格なものであったと主張しています。

さらに、ボンディ司法長官は「企業に対してTikTok禁止法に関連する罰則が科されそうなった場合、司法省が訴訟への介入を含む措置を講じて罰則の執行を阻止する」とも述べ、各テクノロジー企業に対して「TikTok禁止法を無視しても影響がない」ということを強調しています。

上記の通り、ボンディ司法長官はトランプ大統領にTikTok禁止法の施行を措置する権限があると主張しているわけですが、ハーバード大学ロースクールのジャック・ゴールドスミス教授は「歴代大統領は法執行の裁量権を積極的に行使してきた。しかし、法律の運用を全面的に停止したり、法律の違反に対する罰則を免除したりはしなかった」と述べ、トランプ大統領の行為がこれまでの大統領の前例にない越権行為であると指摘しています。また、ゴールドスミス教授は1838年の判例を根拠に「憲法は大統領に対して法律を無視する権限を与えてはいない」とも指摘しています。 なお、開示された文書の全文は以下のリンク先で閲覧できます。

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