トランプ氏、欧・カナダの対抗関税に「もちろん対応」-報復の応酬に

トランプ米大統領は12日、欧州連合(EU)が260億ユーロ(約4兆2000億円)相当の米国製品に輸入関税を課す計画を発表したのを受け、米国も対応すると述べた。米国が発動した鉄鋼とアルミニウムに対する25%の関税に対してはカナダもEUに続いて報復措置の発表に踏み切っており、世界的な貿易戦争が一段と激化する恐れがある。

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  トランプ氏はホワイトハウスで、EUに対して報復するかとの記者団の質問に「もちろん対応する」と答えた。ただ、どのような措置を講じるのか、詳細については明らかにしなかった。

  第1次トランプ政権時代に報復措置として導入され、その後一時的に停止されていたEUの金属関税は、これまで一度も発動されたことのないものも含め、4月1日に全面的に再導入される予定。

  EUは最高25%の関税を課す農産物および工業製品の追加リストを作成することを目指し、加盟国との協議を直ちに開始する。交渉の余地を残すため4月中旬までに導入するとし、EUの行政執行機関である欧州委員会で貿易・経済安全保障を担当するシェフチョビッチ委員が交渉を主導すると、当局者は説明した。  

  欧州委のフォンデアライエン委員長はストラスブールで記者会見し、「本日実施する対抗措置は、強力でありながらも妥当なものだ」とした上で、「地政学的および政治的な不確実性に満ちた世界において、このような関税によって経済に負担をかけることは、双方にとって利益にならないと確信している」と訴えた。

カナダも報復措置

  カナダも約300億カナダ・ドル(約3兆900億円)相当の米国製品に25%の関税を課すと発表した。対象には鉄鋼・アルミのほか、コンピューターやスポーツ用品などの消費財も含まれる。今回の措置は米国の鉄鋼・アルミ関税と同額規模とし、米東部時間13日午前零時01分に発動すると、ルブラン財務相が明らかにした。

  一方、カナダ政府当局者は、貿易戦争からの出口も引き続き模索していると話す。ルブラン氏は13日にラトニック米商務長官と会談する予定。同会談にはシャンパーニュ革新・科学・産業相、オンタリオ州のフォード州首相も同席する。

  トランプ氏は11日、オンタリオ州が米国向けに供給する電力価格に上乗せしたことへの報復として、カナダに対する鉄鋼・アルミ関税を50%に引き上げる方針を発表。だがその後、フォード州首相が上乗せ分の停止を表明したことで、一転して50%への引き上げを撤回した経緯がある。

  ここ2日大きく売られていた米国株式市場では、米消費者物価指数(CPI)が予想を下回る伸びにとどまったことを好感し、S&P500種株価指数が反発。ただ、トランプ氏の関税政策を巡る警戒が根強く、カナダが対抗措置を発表すると、同指数はマイナス圏に沈む場面もあった。

  米国債相場もCPI発表直後こそ値上がりしたが、その後は流れが反転。貿易戦争が激化するリスクが意識され、年限全般で利回りが上昇した。

  メイバンク・セキュリティーズの機関投資家向け株式セールストレーディング責任者、コクフン・ウォン氏は「トレーダーや投資家は関税引き上げによる圧力を感じている」と指摘。「貿易紛争の激化をますます織り込みつつある」と述べた。

日本はダンピング

  ラトニック米商務長官はFOXビジネスの番組に出演し、日本が鉄鋼をダンピング(不当廉売)していると批判した。

  同氏は世界には鉄鋼をダンピングしている国が存在するとして、日本と中国に言及。「これらの国は過剰に生産して、不当に廉価で販売し、米国勢を廃業に追い込もうとしている」と述べた。また、アルミニウムを安値で販売しているとして、オーストラリアにも批判の矛先を向けた。

  その上で、こうした動きを終わらせる必要があると主張。「トランプ大統領はこれに取り組んでおり、米国を守っている」と語った。

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韓国も対応を準備へ

  韓国の産業通商資源省は声明で、安徳根産業相が13日に鉄鋼業界の最高経営責任者(CEO)や専門家らとの会合を開き、米国による鉄鋼への関税賦課に対する措置を今月中に準備すると発表した。

  安氏は、米国の鉄鋼関税に対し、高官級交流を通じて総力を挙げて対応すると確約。CEOらとの会合に基づき、鉄鋼通商と不公正輸入への対応策を策定するとした。

視線は相互関税

  米国が例外なく発動した鉄鋼・アルミ関税に対して、韓国、台湾、日本、オーストラリアなどは即座の報復措置を見送っている。英国は「より広範な経済協定の迅速な交渉」に焦点を当てるとしている。ブラジルも報復措置を検討する前に、トランプ政権との代替策を模索する構え。メキシコは4月2日以降に米国がさらなる関税を発表するのを待って対応する方針を示した。

  中国は即座に対抗措置を打ち出すことはなかったが、米小売り大手ウォルマートが中国のサプライヤーに対し、米国による関税引き上げ分を値下げで負担するよう求めたとの報道を受け、同社幹部を呼んで懸念を示した。

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  こうした動きから、貿易相手に同水準の関税を課すとするトランプ氏の「相互」関税計画を巡って、各国・地域が米国との妥協点を探るために複雑な交渉を繰り広げる構えであることがうかがわれる。

原題:Trump Vows US Will Respond to Europe’s Metal Tariff RetaliationCanada Strikes Back in Trade War With Tariffs on US Metals (3)、S. Korea to Prepare Measures on US Steel Tariffs in March(抜粋)

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