GDP「年率1%成長」でも揺らぐ足元 4〜6月、伸びる設備投資に不安
- 記事を印刷する
- メールで送る
- リンクをコピーする
- note
- X(旧Twitter)
- はてなブックマーク
- Bluesky
国内景気が粘り腰をみせた。内閣府が15日に発表した4〜6月期国内総生産(GDP)は足元の成長が1年続いた場合の年率換算で前期比実質1.0%増だった。けん引役は企業の設備投資だ。今後も伸びが続くかは不透明感が強い。足元では米関税政策などで投資計画を見直す企業の動きが出ている。
4〜6月期のGDPは5四半期連続でプラス成長となり、伸び率はゼロ%台半ばとされる日本の潜在成長率を上回った。実額は年換算でみると実質で562兆9878億円、名目で633兆3047億円といずれも過去最高を更新した。名目成長率は年率でプラス5.1%だった。
けん引役となったのが設備投資で、前期に比べ実質で1.3%増えた。1〜3月期の1.0%増から加速し、5四半期連続で前期を上回った。
ソフトウエア投資が押し上げに寄与した。企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進などが背景にある。ビルの着工などに伴う建設向けの投資もプラスに働いた。
4〜6月期のGDPは他の主要項目も伸びた。輸出は電子部品・デバイスなどが増え2.0%増となった。個人消費も0.2%増と伸びは低いものの、インフレによる底割れは回避した。
先行きは暗雲が漂う。企業の間では今後の投資活動を慎重に見極める動きが出てきている。
機械工具大手のOSGは米関税政策の不透明感や欧州での需要停滞を背景に、25年11月期の設備投資計画を縮小する方針だ。「不要不急な設備投資を来期以降に先送りすることで、10億〜40億円程度の圧縮を見込む」と大沢伸朗社長は話す。
ファクトリーオートメーション(FA)部品大手のSMCは7月、半導体や工作機械向けの国内受注が落ち込んだ。同社の太田昌宏取締役は足元の需要環境について「中国以外は米追加関税などの影響でメーカーの設備投資が進まず苦戦している」と説明する。
景気の先行指標とされる工作機械の購買意欲も鈍る。日本工作機械工業会によると国内受注額は7月まで4カ月連続で前年同月を下回った。「中小企業の投資意欲が鈍い」(オークマ)との声がある。部品加工を受託する企業の中には、先行き不透明感から設備投資を抑えており、既存の古い機械の改修でしのぐ動きがあるという。
政策の混乱が企業の投資活動の悪化に表れるのにはタイムラグがある。内閣府が過去のデータを基に分析したところ、政策の不透明感が高まった場合、機械投資は2四半期後から大きく落ち込むことがわかった。
春以降に米トランプ政権が矢継ぎ早に打ち出した関税政策は、年後半の設備投資にブレーキをかける可能性がある。
日本政策投資銀行が8月4日に公表した25年度の設備投資計画調査によると、25年度の大企業全産業の国内投資額は24年度実績に比べて14.3%増だった。24年度に計画として示された21.6%増ほどの勢いはない。人手不足や資材高騰なども足かせとなる。
米関税引き上げに世界景気の悪化が重なり、輸出が低迷するリスクもある。
半導体製造装置で国内最大手の東京エレクトロンは、26年3月期の業績見通しが一転減益となった。顧客の海外半導体メーカーの間で投資計画を見直す動きがある。川本弘常務執行役員は「一部の先端半導体などの投資回復が思ったほどではなかった。パソコン買い替え需要の期待もあったがまだそこまで盛り上がっていない」と話す。
設備投資や輸出に不安がある中、息の長い景気回復には個人消費の伸びが欠かせない。
4〜6月期の消費は実質で前期比0.2%増と物価高のなかでも底堅いが、GDP全体を押し上げるほどの勢いはなかった。毎月勤労統計調査で見た実質賃金は前年同月比でマイナスが続く。インフレ率を上回る賃金上昇が実現できるかが引き続き重要となる。
- 記事を印刷する
- メールで送る
- リンクをコピーする
- note
- X(旧Twitter)
- はてなブックマーク
- Bluesky
こちらもおすすめ(自動検索)
操作を実行できませんでした。時間を空けて再度お試しください。
権限不足のため、フォローできません
日本経済新聞の編集者が選んだ押さえておきたい「ニュース5本」をお届けします。(週5回配信)
ご登録いただいたメールアドレス宛てにニュースレターの配信と日経電子版のキャンペーン情報などをお送りします(登録後の配信解除も可能です)。これらメール配信の目的に限りメールアドレスを利用します。日経IDなどその他のサービスに自動で登録されることはありません。
入力いただいたメールアドレスにメールを送付しました。メールのリンクをクリックすると記事全文をお読みいただけます。
ニュースレターの登録に失敗しました。ご覧頂いている記事は、対象外になっています。
入力いただきましたメールアドレスは既に登録済みとなっております。ニュースレターの配信をお待ち下さい。