指1本でチェックできる…追跡調査で確認された「出世しやすい人」と「出世しにくい人」を分ける"要素" 「空気を読む人」はよく言えば柔軟、悪く言えば軽薄
セルフモニタリングが高い人のほうが、低い人よりも組織内で出世しやすいことを示す研究結果があります。
セルフモニタリングが高い人は集団のリーダーになりやすく、さまざまな役割を果たし、周囲の変化に敏感であることが求められる管理職として、高い評価を得やすいことがわかっています。が、この能力には「微妙なもの」も含まれています。つまり、仕事で失敗したときに自らを正当化し、他者に責任を押しつけることにも長けているのです。
一方このような局面で、セルフモニタリングの低い人は批判の矛先をうまくかわすことができずに、失敗の責任を全面的に被ることがあります。こうした様子が、周り(とくに同じようにセルフモニタリングの低い人たち)からは「誠実」だと見なされることもあります。
しかし、セルフモニタリングの低い人の態度が、組織内での円滑な人間関係にとってマイナスに作用することもあります。職場で対立が生じたとき、セルフモニタリングの低い人は強硬な態度をとり、自らの主張を曲げないことがあるのです。対照的にセルフモニタリングの高い人は、妥協と連携を通じて対立を解決しようとします。
追跡調査でわかった「5年後」の違い
マーティン・キルダフとデビッド・デイは、「Do Chameleons Get Ahead? The Effects of Self-Monitoring on Managerial Careers」(カメレオンは出世するか? セルフモニタリングが昇進に及ぼす効果)と題した論文で、興味深い研究結果を報告しています。
二人は経営大学院の学生のセルフモニタリング・スコアを入学時に測定しておいてから、卒業後の社会的成功具合を、5年かけて追跡調査しました。
その結果、セルフモニタリングの高い人のキャリアには、はっきりとしたパターンがあることがわかりました。5年のあいだ、転職によってキャリアアップの可能性を高めていること、さらに、同じ会社に勤め続けている場合でも、昇進の割合が高いことがわかりました。彼らは昇進の可能性を高めようとして、自分が上の役職に相応しい人間であることを示すような振る舞いをします。
写真=iStock.com/metamorworks
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対照的に、セルフモニタリングの低い人は、会社への強い忠誠心を示し、セルフモニタリングの高い人のようにキャリアアップに相応しいような振る舞いを示そうとはしなかったのです。
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スコアが高いほどセルフモニタリングが高いことを意味します。
セルフモニタリングが高い人は、人からどう見られているかを気にし、状況に合わせて振る舞います。低い人は、人からどう見られているかを気にしないので、状況ではなく自分の価値観に従います。
人目を気にせず自分に正直に振る舞うのと、相手の気持ちを察して振る舞うのとでは、どちらが実りある人間関係につながると思いますか?
または、場の雰囲気を読んで行動するのと、周りのことは気にせずに自分を貫くのとでは、どちらの態度が仕事で効果を発揮するでしょう?
先の質問数が多すぎて面倒くさいという場合は、簡単な方法を紹介します。誰かがあなたの目の前に立っているとして、その人から「指で額にアルファベットの“Q”を書いてください」と言われたとします。今すぐ、額に“Q”を書いてみてください。
あなたは、“Q”の下の出っ張りの部分を、自分から見て右側(相手から見ると“Q”は逆さまに見える)に書いたでしょうか? それとも、自分から見て左側(相手から見て実際に“Q”に見える)に書いたでしょうか?
そう、前者はセルフモニタリングが低く、後者は高くなります(もし“Q”以外の文字を書いた天邪鬼な人がいたとしたら、少なくとも協調性が低いとは言えるかもしれません)。
内向型ならパーティには行かない?
セルフモニタリングが高い人は、場の空気に敏感です。それゆえに、場にふさわしいと思われる行動をとれるかどうかが、とても重要だと考えます。このことをよく示す実験があります。それは、学生の被験者に、「パーティに行って、たくさんの人と話すミッションに参加するかどうか(外向型として振る舞うべき状況に参加するかどうか)」を選ばせるというものです。
セルフモニタリングが高い学生は、自らが外向型か内向型かにかかわらず、状況とやるべきことが明確な場合に参加を選ぶ傾向が見られました。一方セルフモニタリングが低い学生は、自らが外向型の場合にのみ、参加する傾向が見られたのです。
どのような状況であれば参加したいかと条件を尋ねると、セルフモニタリングが高い人は「どのように振る舞えばいいかが明確な状況」、低い人は「自らの外向レベルに合った状況」と回答しました。