【米国市況】S&P続伸、強気筋が高リスクの賭け-ドル142円台前半

米国株は続伸。ウォール街のトレーダーは慎重ながらも株式に一段の資金を投じ、相場の回復を後押ししている。米企業が経済成長の鈍化や関税に伴う業績混乱を乗り越えるとし、リスクの高い賭けに出ている。

株式 終値 前営業日比 変化率 S&P500種株価指数 5560.83 32.08 0.58% ダウ工業株30種平均 40527.62 300.03 0.75% ナスダック総合指数 17461.32 95.19 0.55%

  朝方に発表された消費者信頼感指数と求人件数は共に低調な内容だったものの、S&P500種株価指数は6営業日続伸。6日間の上昇率は約8%と、2022年3月以来の大幅となった。貿易戦争の影響を巡る不透明感から一部大手企業が業績予想を撤回する中、株式相場は一時下落する場面もあった。

  トランプ大統領による関税政策の混乱は収束の気配を見せていないが、株式市場では強気筋が相場の反発を後押ししている。反発局面の初期段階に乗り遅れたくないという投資家心理が働いているとの見方もある。米国株反発の長い歴史を意識した動きだ。

  また米連邦公開市場委員会(FOMC)がリセッション(景気後退)を防ぐため利下げに動くとの見方も広がっており、リスク資産に投資する論拠が強まる可能性もある。

  ただ昨年の大半において順調に推移してきた米経済は、消費者の疲弊や貿易赤字の拡大により2025年の初めに勢いを失った。

  そうした中、トランプ大統領は貿易政策を一部見直す。自動車業界に影響を及ぼしている関税の負担軽減に関する大統領令に署名した。

  ナットアライアンス・セキュリティーズのアンドルー・ブレナー氏は「リセッションや株価のさらなる下落を予想する声はなお多いが、株式市場には『トランプ・プット』が、経済には『FRBプット』が現実的だとわれわれは考えている」と指摘。「相場の展開中に天井と底を見極めるのは難しいが、最悪期は過ぎたと、われわれは考えている」と述べた。

  企業の動きを見ると、アマゾン・ドット・コムはサイト上で関税費用を表示する計画は一切ないと述べた。トランプ政権はこれより先、同社サイト上で関税コスト表示の計画があるとの報道を受け、敵対的な行為だと非難していた。またラトニック米商務長官はCNBCで、アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)が「iPhone」の米国内生産を望んでいると語った。

  レイモンド・ジェームズのラリー・アダム最高投資責任者(CIO)はインタビューで、「関税に関しては、不確実性のピークは過ぎた」としつつも、「経済については、これから不確実性のピークに近づいていくと思われる」と述べた。

  同氏はS&P500種の年末までの目標である5800を維持しつつ、その水準に達するには長い時間がかかると指摘。「その間は、私なら慎重姿勢を強める。この先、経済の減速を裏付けるより明確なデータを目にすると考えられるためだ」と語った。

  HSBCホールディングスのストラテジストは、S&P500種の年末目標を6700から5600に引き下げた。関税と予想を下回る米経済成長が、企業利益を圧迫するとみている。

  ニコル・イヌイ氏らストラテジストは顧客リポートで、「関税による混乱が落ち着き、米連邦公開市場委員会(FOMC)が利下げに踏み切るまで、ないしインフレ圧力が強まらない間は、市場のシナリオはリセッションとスタグフレーションの間を行き来するだろう」と記した。

国債

  米国債相場は上昇。このままいけば月間ベースでは4カ月続伸となる。トランプ政権の関税政策により経済が減速すると、投資家はみている。

国債 直近値 前営業日比(bp) 変化率 米30年債利回り 4.65% -3.6 -0.78% 米10年債利回り 4.17% -3.9 -0.91% 米2年債利回り 3.65% -4.1 -1.11%     米東部時間 16時45分

  民間調査機関のコンファレンスボードが発表した4月の米消費者信頼感は、ほぼ5年ぶりの水準に落ち込んだ。これを受け、10年債利回りは約2ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下。3月の求人件数は市場予想を下回り、昨年9月以来の低水準となった。

  投資家は米経済活動の減速を警戒し、引き続き短期の米国債を選好しており、ブルームバーグ米国債指数は月間ベースで4カ月連続の上昇となりそうだ。米連邦公開市場委員会(FOMC)が0.5ポイント利下げに動くとの見方を背景に5カ月連続上昇を記録した、昨年9月以来の長期上昇となる。

  BMOキャピタル・マーケッツの米金利戦略責任者イアン・リンジェン氏は「われわれは短期的に経済データのさらなる軟化を警戒しており、成長見通しに対する投資家の不安が強まる中、金利低下を見込むスタンスに傾いている」とリポートに記した。

為替

  外国為替市場ではドルが主要通貨全てに対して上昇。トランプ政権が自動車業界に影響を及ぼしている関税の負担を軽減するとの報道が好感された。ユーロは下落。域内のインフレ期待が1年ぶり高水準に接近しているとの調査データに反応した。

  円は対ドルで値下がり。一時1ドル=142円76銭まで下げた。下げを埋める場面もあったが、トランプ大統領が自動車業界への関税負担の軽減で大統領令に署名すると報じられる中、再び売りが優勢となった。

為替 直近値 前営業日比 変化率 ブルームバーグ・ドル指数 1222.19 2.37 0.19% ドル/円 ¥142.37 ¥0.36 0.25% ユーロ/ドル $1.1389 -$0.0031 -0.27%     米東部時間 16時45分

原油

  原油先物相場は大幅続落。経済指標が米経済軟化の兆しを示し、世界的な貿易戦争が需要の見通しを悪化させ、売りが優勢になった。

  ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)原油先物は約2週間ぶりの安値で終えた。4月の米消費者信頼感は大幅に悪化し、トランプ大統領の関税措置に起因する悲観的な見通しが新たに示された。今週は他にも重要統計の発表が予定されている。特に中国の製造業データは、世界最大の原油輸入国である同国の経済力についてさらに明確な兆候を示すと予想されている。

  米原油相場は月間で2021年以来の大幅安になる見込みで、米中による報復関税や、石油輸出国機構(OPEC)と非加盟の産油国で構成するOPECプラスの生産引き上げ計画が価格を圧迫している。

  ナターシャ・カネバ氏率いるJPモルガン・チェースのアナリストは、サウジアラビアを含む主要なOPECプラス加盟国が5月5日の次回会合で、計画されている生産拡大を加速させる可能性が「高まっている」とリポートで指摘した。

  A/Sグローバル・リスク・マネジメントのチーフアナリスト、アルネ・ローマン・ラスムッセン氏は「ここ数カ月の成長は主に在庫積み増しと関税前の買いだめに支えられてきたことが明確になりつつある」と指摘。「その効果は薄れつつあり、消費が生産拡大ではなく既存の在庫を崩し始めることで、米経済の成長は著しく鈍化する可能性がある」と語った。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物6月限は前日比1.63ドル(2.6%)安の1バレル=60.42ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント6月限は2.4%安の64.25ドルで取引を終えた。

  金相場は反落。トランプ大統領が自動車業界への関税負担を軽減するとの期待からドルが上昇し、安全資産である金への需要が後退した。

  ペッパーストーングループのリサーチストラテジスト、ディリン・ウー氏はリポートで「交渉の進展はゆっくりかもしれないが、ホワイトハウスが再び交渉に前向きな姿勢を示したことで、市場のセンチメントはパニック売りから慎重な楽観へとシフトし、金価格に下押し圧力をかけている」と指摘した。

  それでも今週発表される米経済指標に労働市場悪化を示す兆候が見られた場合、「6月の米利下げ観測が強まり、金の上昇局面が復活する可能性は高い」と、ウー氏は述べた。

  金スポット価格はニューヨーク時間午後3時15分現在、前営業日比21.15ドル(0.6%)安の1オンス=3322.83ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物6月限は14.10ドル(0.4%)安の3333.60ドルで引けた。

原題:Stock Bulls Fuel Best Winning Run Since March 2022: Markets Wrap(抜粋)

Treasuries Eye April Gains as Investors Bet on Slower US Economy

Dollar Rises Amid Auto-Tariff Relief Expectations: Inside G-10

Oil Tumbles as Trump’s Trade War Pummels Outlook for Demand

Gold Falls on Stronger Dollar as US Offers Auto Tariff Reprieve

関連記事: