【解説】 トランプ氏、なぜウクライナでうまくいかないのか ガザでは停戦合意まとめたが

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画像説明, トランプ米大統領とロシアのプーチン大統領は、4年近くに及ぶウクライナでの戦争に関する会談を予定していたが、棚上げとなった(ハルキウ、21日)

アメリカとロシアの首脳会談が差し迫っているとの報道は、大きく誇張されていたようだ。

トランプ氏は21日午後、ホワイトハウスで記者団に対し、「無駄な会談はしたくない」と述べた上で、「時間の無駄にはしたくないから、どうなるか様子を見る」と語った。

トランプ氏は先週エジプトで、ガザでの停戦合意を祝う発言を行った際、首席交渉人だったスティーヴ・ウィトコフ中東担当特使に新たな要請を伝えた。

しかし、ウィトコフ氏とそのチームがガザでの突破口を開いた状況を、開戦から間もなく4年になるウクライナで再現するのは難しいとみられている。

実際、イスラエル国内でもネタニヤフ首相よりも高い人気を誇っており、この立場がイスラエルの指導者に対する特有の影響力につながっている。

さらに、トランプ氏は地域の主要なアラブ関係者と政治的・経済的なつながりを持っており、合意を強制するための豊富な外交的手段を有していた。

対照的に、ウクライナでの戦争においては、トランプ氏が持つ影響力ははるかに限定的だ。過去9カ月間、トランプ氏はプーチン氏に強硬姿勢で迫ろうとしたかと思えば、ゼレンスキー大統領に対して圧力をかけるなど、対応が揺れ動いてきた。しかし、いずれも目立った効果は見られていない。

トランプ氏は、自らの交渉力を誇示することを好むが、プーチン氏やゼレンスキー氏との会談は、戦争の解決に向けた進展をもたらしていないようだ。

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画像説明, トランプ氏とプーチン氏の8月の会談は、具体的な成果をもたらさなかった

プーチン氏は、トランプ氏が合意を望んでいること、そして対面による交渉を信じていることを、トランプ氏に影響を与える手段として利用している節がある。

7月、トランプ氏が上院で共和党の支持を受けた対ロ制裁法案に署名する見通しが強まったタイミングで、プーチン氏はアラスカでの首脳会談に同意した。この法案はその後、棚上げされた。

先週にも、ホワイトハウスが巡航ミサイル「トマホーク」や地対空ミサイルシステム「パトリオット」をウクライナに供与することを真剣に検討しているとの報道が広まる中、プーチン氏はトランプ氏に電話をかけた。トランプ氏はその後、ブダペストでの首脳会談の可能性を誇示した。

トランプ氏はその翌日に、ホワイトハウスにゼレンスキー氏を迎えたが、緊迫したとされる会談は成果なしに終わった。

トランプ氏は、プーチン氏に操られているわけではないと強調した。

「私は人生を通じて、最高の連中に操られてきたが、結果的には非常にうまくやってきた」と、トランプ氏は述べている。

しかしゼレンスキー氏はその後、一連の出来事の流れに言及。

「長距離攻撃能力の問題が、ウクライナにとって少し遠のいた途端に、ロシアはほぼ自動的に外交への関心を失った」と述べた。

こうしてわずか数日の間に、トランプ氏はウクライナへのミサイル供与の可能性を検討する姿勢から、プーチン氏とのブダペスト首脳会談の計画へと転じ、さらにゼレンスキー氏に対して、ロシアが未制圧の地域を含むドンバス地方全域の譲渡を非公式に迫った。

最終的に、トランプ氏は現在の戦線に沿った停戦を呼びかける方針に落ち着いたが、ロシアはこれを受け入れていない。

昨年の大統領選でトランプ氏は、ウクライナでの戦争を数時間で終わらせられると宣言していた。しかしその後、これを撤回し、戦争終結は予想以上に困難だと認めている。

これは、トランプ氏が自分の力の限界を認めためずらしい発言だ。そして、ロシアとウクライナの双方が戦いをやめる意思も余裕も持たない状況で、和平の枠組みを見いだすことが難しいことも認めたものだ。

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