ゼレンスキー大統領、ロシアの「卑劣」な12時間空爆を非難

画像提供, Reuters

ジェイムズ・ウォーターハウスBBCキーウ特派員、レイチェル・ムラー=ヘインディクBBC記者

ロシア軍は28日朝にかけて12時間以上にわたり、ウクライナの首都キーウなどへの大規模な空爆を展開した。ここ数カ月で特に激しかった今回の攻撃では、少なくとも4人が殺害され、少なくとも70人が負傷した。

今回の攻撃では、約600機のドローンと数十発のミサイルがウクライナの7地域に向けて発射された。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ロシアの攻撃の大多数が首都キーウを標的としたもので、犠牲者はいずれもキーウで死亡したと明らかにした。犠牲者には12歳の少女も含まれているという。

ゼレンスキー大統領は「卑劣」な攻撃だと非難。ロシアがいかに「戦いと殺戮(さつりく)を続けたい」のかを示すものだと述べ、ウクライナは報復すると警告した。ロシア側は、軍事施設およびウクライナ軍を支援する産業施設を標的にしたと発表している。

ウクライナでは、空爆は突発的ながらも日常の一部と化している。ロシアの空爆は土曜日深夜から始まることが多く、今回もそうだった。

対空砲火の音に混じって、ドローンの迎撃音や着弾音とみられる爆発音が響いた。

キーウでは、空襲警報アプリが住民に避難所への移動を呼びかけた。その後、数百機のドローンが市内に降下する中、事態悪化の警報が鳴り続けた。

ウクライナのイーホル・クリメンコ国防相によれば、全国で少なくとも100カ所の民間施設が損傷し、複数のまとまった地区一帯が壊滅的な被害を受けたという。

救急当局によると、キーウにある国立心疾患研究所への攻撃では、看護師と患者が殺害された。

動画説明, 住宅地の中心に着弾 ロシアの攻撃受けたキーウからBBC報告

ゼレンスキー大統領によると、大きいパン工場、自動車用ゴム工場、集合住宅、その他の民間インフラも標的となった。

また、ザポリッジャ州、フメリニツキー州、スーミ州、ミコライウ州、チェルニヒウ州、オデーサ州も攻撃を受けたと話した。

ザポリッジャ州のイワン・フェドロフ知事によると、同州では子供3人を含む34人が負傷。子供は11歳と12歳の少年、9歳の少女だという。少年の1人は爆発に巻き込まれ、もう1人は一酸化炭素中毒となり、いずれも重体だという。

スーミ州の知事は、59歳の男性が過去24時間の攻撃で死亡したと発表した。

ゼレンスキー大統領は、ロシアが「外交的な対応」をせざるを得ないようにするため、ウクライナとして「反撃する」と述べた。また、欧州とアメリカによる「強い反応」に期待していると話した。

「この卑劣な攻撃は、国連総会の最中の週末に起きた。ロシアはこうして、自分たちの本当の姿勢を表明した」と、ゼレンスキー氏は批判した。

ゼレンスキー大統領は、ドナルド・トランプ米大統領による対ロシア制裁強化の警告と、欧州諸国に対するロシア産石油・ガス輸入の削減要請を支持すると改めて表明した。

トランプ大統領は23日に初めて、それまでの立場を逆転させ、ロシアに奪われた領土をウクライナが奪還できるとの考えを示した。ロシア経済が長期戦の影響で疲弊しているとも述べた。

トランプ氏はこれまでロシアへの追加制裁を控えてきたが、ロシア側が和平交渉に消極的なことに対し、いら立ちを強めているとみられている。

ゼレンスキー大統領は27日、「ロシアの侵略はウクライナだけにとどまらない」と警告。北大西洋条約機構(NATO)加盟国に対してロシアがこのところ領空侵犯を繰り返しているのは、欧州の防空体制を試しているからだと述べた。

ポーランド空軍によると、ウクライナ西部をロシアが空爆し続けた28日未明、事態に対応するため、戦闘機を緊急発進させたという。

デンマーク国防省は、軍事施設上空で2夜連続でドローンを確認したと発表。NATOはこれを受けて、バルト海での任務強化を発表。監視体制を強化するほか、少なくとも防空艦1隻を配備すると述べた。

ポーランド、エストニア、ルーマニアもロシアによる領空侵犯があったと非難しており、NATOは同盟の東側の防衛を強化する方針を示している。トランプ大統領は、NATO加盟国は自国領空に侵入したロシア機を撃墜すべきだとさえ発言している。

ロシアのセルゲイ・ラヴロフ外相は27日の国連総会で演説し、「欧州連合(EU)やNATO加盟国を攻撃する意図はない」と述べる一方、ロシア政府に対するあらゆる「侵略」にも「断固として対応する」と警告した。

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