パ・リーグ「3割打者消滅」がほぼ確実…村林一輝、柳町達らの争いに見えるけど「異例の規定打席未達なのに首位打者」可能性のある選手とは(Number Web)|dメニューニュース
パ・リーグ「3割打者消滅」がほぼ確実…村林一輝、柳町達らの争いに見えるけど「異例の規定打席未達なのに首位打者」可能性のある選手とは photograph by Nanae Suzuki
筆者は8月半ばに今季NPBの「3割打者消滅」の可能性について取り上げた。この時はセ・リーグだったが、現時点ではパ・リーグでその可能性が高まっている。しかもその可能性はかなり高い。
セはカープ小園が3割キープできそうだが、パは…
まずは8月11日時点でのセ・リーグ打率5傑。
近本光司(神).291(436打127安) 中野拓夢(神).290(386打112安) 佐藤輝明(神).289(398打115安) 小園海斗(広).286(381打109安)
佐野恵太(デ).279(384打107安)
この時点では阪神の3打者が3位までを占めているが、「.291」の近本が首位打者。1942年以来の3割打者消滅の恐れがあった。しかし9月23日時点ではこうなっている。
小園海斗(広).306(519打159安) 泉口友汰(巨).295(495打146安) 中野拓夢(神).285(515打147安) 森下翔太(神).278(533打148安)
近本光司(神).277(555打154安)
40日前に4位だった広島の小園は、以後、138打数50安打、率.362と高打率をマークした。規定打席の「443」はすでにクリアしている。広島の残り試合は「5」だ。残り打数を20と考えると、小園は3安打すれば.301(539打162安)となり3割をキープできる。小園は初の3割、広島の打者が首位打者になれば、2021年の鈴木誠也以来となる。
一方でパ・リーグである。8月11日の時点で打率5傑は以下の通りだった。
村林一輝(楽).309(353打109安) 周東佑京(ソ).302(291打88安) 太田椋(オ).294(299打88安) 柳町達(ソ).293(304打89安)
ネビン(西).290(369打107安)
楽天の村林とソフトバンクの周東が3割超え、打率は高いとは言えないが、3割打者は出ると考えられた。しかし9月23日時点では……。
村林一輝(楽).290(486打141安) 柳町達(ソ).288(413打119安) 周東佑京(ソ).286(384打110安) 中島大輔(楽).281(423打119安)
中川圭太(オ).281(409打115安)
3割打者が消滅している。この間、村林は133打数32安打、率.241と低迷した。しかし他の打者も追い上げることができずこの状況になっている。
3割をキープしていた西川龍馬が痛恨の今季絶望
この間に、安打を量産して「首位打者当確」を打っても良いような打者が出現した。オリックスの西川龍馬だ。
広島からFAで移籍して2年目の西川は7月1日の西武戦で走塁時に左足首を負傷し登録抹消。その時点で打率.314だったが、8月19日に再登録されると、以後も好調をキープし、9月14日には規定打席に到達。打率.314でトップに立った。
西川は大谷翔平や鈴木誠也と同じ1994年生まれ。敦賀気比高校では現レッドソックスの吉田正尚の1年後輩。「変態打ち」と言われる自在なバットさばきが売りで、広島時代の23年に.305で打率2位になっている。しかし脇腹、足首など故障が多く、10年のキャリアで規定打席に達したのは4回だけだった。今季も9月21日のソフトバンク戦で、自打球を当てて右脛骨骨折、今季絶望となった。西川の打席数は412、最終的な規定打席にはあと「31」だったが、それもかなわなくなった。
村林、柳町はどれだけ打てば3割に?
では、他球団の選手の状況はどうか。
楽天・村林の打数を「40」とすると17安打すれば526打数158安打で「.300」となる。打率にして.425。かなり厳しい数字だが、不可能とまでは言えないだろう。
また2位の柳町は打数が少ない分、1安打ごとの打率が高くなる。残り打数を「32」とすると、15安打だと445打数134安打で打率.301となる。打率.469は村林以上に厳しい数字だが、3位の周東を含めて短期間なら可能性はないとは言えない。
もう一人規定打席未達で、今後3割に手が届きそうな打者がいる。
牧原大成(ソ).304(392打119安)
牧原の打席数は「415」。最終の「443」まではあと「28」、ソフトバンクの残り試合を踏まえると十分に可能性がある。この間、調子を落とすことなく出場し続ければ可能性はあるが、ソフトバンクはマジックが点灯しているとはいえ、日本ハムと厳しい競り合いを続けている。個人記録を優先できる状況ではない。
なぜ「規定打席未達」の西川に首位打者チャンスが?
実はもう1人、首位打者のダークホースがいる。前述の西川だ。
公認野球規則には、以下の特例がある。
《打者が規定打席に達していない場合でも、不足している打席数を打数に加算して計算した打率が、他の規定打席到達者の最高打率を上回る場合に、その打者が首位打者として認定される》
もし現在の打率上位選手が軒並み打率を落とせば、西川は出場しなかったとしても、首位打者になる可能性がある。西川の打数に未達分の「31」を足すと、以下の成績になる。
西川龍馬(オ).287(418打120安)
この規定が適用されたことは、ファームではあったが一軍では一度もない。今季のパ・リーグはこの特例が適用される可能性さえあるのだ。
1936年に始まった日本プロ野球で、首位打者の打率が3割を割り込んだのは1942年の巨人・呉波だけ。
呉波(巨).286(370打106安)
前年に太平洋戦争がはじまり、日々物資にも事欠く状況の中記録されたこの記録に、83年後のNPBが並ぼうとしている。
メジャーでもナ・リーグが3割打者消滅危機
「投高打低」は、MLBでも顕著になっている。
今季のナ・リーグでは、3割打者はフィリーズのトレイ・ターナー(.305/現地時間22日終了時点)とカブスのニコ・ホーナー(.302)の2人だけ(ア・リーグは6人)。このままいくと、ナ・リーグ首位打者の打率は88年パドレスのトニー・グウィンの.313を下回りリーグ最低、MLB全体でも68年レッドソックスのカール・ヤストレムスキーの.301に次ぐワースト2位になる。なお、MLBは1901年のア・ナ両リーグの設立以来、3割打者がいなかったシーズンはない。
NPBでもMLBでも「投高」傾向が顕著になっている。この事態はさらなる分析が必要になってくる。
首位打者争い常連の近藤健介が好調だった
【第24週】 2025年9月16日から9月23日まで 〈セ・リーグ〉 チーム順位 阪神139試83勝52敗4分率.615差-優勝 DeNA138試68勝64敗6分率.515差13.5 巨人138試67勝68敗3分率.496差16 中日138試61勝75敗2分率.449差22.5 広島138試59勝74敗5分率.444差23.0 ヤクルト135試52勝77敗6分率.403差28.0 第24週 DeNA6試4勝1敗1分率.800 ヤクルト7試4勝3敗0分率.571 巨人6試3勝3敗0分率.500 阪神7試3勝3敗1分率.500 中日6試3勝3敗0分率.500
広島6試1勝5敗0分率.167