NASA流、プレッシャー下でも最高の結果を出すチームをつくる5箇条

リンディ・エルキンス=タントン(Lindy Elkins-Tanton)が、近著『Mission Ready: How to Build Teams That Perform Under Pressure(ミッション・レディ:プレッシャー下で成果を上げるチームのつくり方)』から得られた5つの重要な洞察を共有しています。

エルキンス=タントン氏は、カリフォルニア大学バークレー校の教授であり、バークレー宇宙科学研究所の所長、そして金属小惑星を目指す10億ドル規模のNASA無人宇宙探査機ミッション「サイキ(Psyche)」のリーダーを務めており、その功績からNASA優秀公的リーダーシップメダルを受賞しました。

また、彼女は『A Portrait of the Scientist as a Young Woman(若き科学者の肖像)』の著者でもあります。

優れたチームを構成する要素は?

エルキンス=タントン氏は『Mission Ready』の中で、高いパフォーマンスを発揮するチームは、カリスマ性や厳格な階層、あるいは完璧な計画によってつくられるのではなく、「文化」によってつくられるのだと主張しています。

つまり、人々がどのようにコミュニケーションをとり、問題を解決し、対立に対処し、プレッシャーに反応するかということです。

宇宙船が地球を離れたら二度とミスを修正できないという、10億ドル規模の宇宙ミッションを率いた自身の経験から、エルキンス=タントン氏は、不確実性と複雑さに一体となって立ち向かうことができる、レジリエント(しなやかで強い)なチームを構築するための、実践的で深く人間味にあふれたガイドを提示しています。

彼女の教えは、問題の早期報告や生産的な対立の推奨から、組織内の知識の維持、そして逆境に直面しても決して諦めない姿勢まで多岐にわたります。

その根底において本書は、役職に関係なく、チームのあらゆるメンバーが、ミッションの成否を決める文化を形づくる責任を共有しているという、説得力のある事実を訴えかけているのです。

1. 優れたチームが必要ならまずは自分自身から

私たちの行なうすべての仕事は、2つの部分に分けることができます。「私たちが何をやるか(業務内容)」「それをどのようにやるか(進め方)」です。

自分自身、そしてチームのすべてのメンバーは、その両方の部分で秀でている必要があります。すなわち、仕事の技術的な側面(何をやるか)と、文化的な側面(どのようにやるか)です。

文化的な部分、つまり「どのように仕事を進めるか」こそが、マイルストーンを達成できるか、効果的に協力・意思疎通ができるか、そして成果物の質がどれほど高くなるかという点で、天と地ほどの差を生み出します。

「文化は戦略を朝食に食べる(Culture eats strategy for breakfast)」という有名な格言がすべてを物語っています。チームが卓越できるかどうかを決めるのは、私たちがどのように協力し合うかであり、その「どのように」は私たち1人ひとりの手の中に委ねられているのです。

これは、最も成功しているチームにおいては、各メンバーが自分自身の行動におけるリーダーである、と言うのと同じことです。

だからこそ、自分自身からはじめることが重要なのです。そして、どのように行なうかという点においては、あらゆる人がリーダーなのです。

最も効果的なチームメンバー、そしてリーダーになるために、私たち1人ひとりが自分自身の中でコントロールできる、特に重要な要素をいくつか挙げます。

私たちは誰しも、明確に、冷静に、そして本題に沿ってコミュニケーションをとり、敬意を持って耳を傾けることができます。ほかのすべてのチームメンバーとの関係に責任を持つことができます。自己反省し、自分自身のプロセスを分析し、優れた問題解決者になることができます。

優れた問題解決──これこそが鍵です! そして、それが次のテーマです。

2. 「最悪の報告」ほど早く、積極的に迎え入れる

プロジェクトチームの主な仕事とは何でしょうか? プロジェクトチームの主な仕事とは、一緒に問題を特定し、解決することです。

もしかしたら、あなたはある問題に気づいたものの、それが自分の職務に該当しないため、ほかの誰かの仕事だろうと思い込んでしまうかもしれません。

しかし、もしあなたが気づいているのであれば、ほかの誰もそれに気づいていない可能性が高いのです。ですから、その問題を拾い上げ、抱え、適切な担当者が見つかるまで責任を持たなければなりません

これは異常な事態でも、通常の仕事に対する例外でもなく、不都合なことと感じるべきでもありません。解決すべき課題があることこそが、人生の織り成す糸そのものなのです。

そして、解決が間に合うタイミングで問題を発見することこそが、チームメンバーの根本的な仕事です。

NASAのサイキ・ミッションのチームには、次のようなモットーがあります。

「最高のニュースとは、早くもたらされた悪いニュースである」

実際に、時間内に解決できるほど十分に早くもたらされる、ということです。

それが私たちのチームにとって何を意味するか、想像してみてください。

私たちは、宇宙空間で、ほぼ完璧に、数年、あるいは数十年も動き続ける必要がある宇宙船を製造しています。しかし、一度打ち上げられてしまえば、修理人が訪れることは決してありません。

プレッシャーがないわけがありません! 私たちは、修正が間に合ううちに、何が間違っているのかを知る必要があるのです。

私たちの宇宙船は、6年間の製造期間を経て2023年に打ち上げられましたが、その間、私たちは次から次へと問題を発見し、それを修正し続けました。それが、新しいものをつくり出すことの根本的な性質なのです。そして現在、宇宙船は宇宙を何年も飛行しており、非常に順調に進んでいます。

問題の早期発見のために必要な文化とは?

問題が早期に発見されるようにするには、どうすればよいでしょうか?

それは、問題を発見した現場のチームメンバーが発言し、その声が届くようにすることです。

何かがおかしいと気づくのは誰でしょうか? CEOや副社長が問題に気づくこともあるかもしれませんが、大抵の場合、彼らはほかの人々から二次的、あるいは三次的に情報を得ています。

そのため、サイキ・プロジェクトにおいて、問題の発見者は私やプロジェクトマネージャー、あるいは運用マネージャーである可能性もありますが、実際にコードの行を入力していたり、ワイヤーをハンダ付けしていたりする人物──つまり、現場で実際に作業を行なっている泥臭い人々である可能性の方が高いのです。

しかし、そうした人々は、声を上げて意見を聞いてもらえないことがよくあります。

だからこそ、チームの誰もが発言を求められ、問題が明らかになったときには真剣に受け止められ、決して処罰されることなく敬意を持って迎えられるような文化を確立しなければなりません。

そうすれば、チームの若手メンバーも、解決が間に合ううちに問題を明かしてくれるようになります。

この実践は、プロジェクトの大きなリスク軽減要因になると同時に、1人ひとりの貢献を尊重し、高めるための素晴らしい方法でもあります。

あなたのチームは、プロジェクトにとっても、そしてチームのすべての個人にとっても、すばらしい結果を得ることになるでしょう。

3. チームにとって「良い対立」もある

会議の席で、ある障壁や問題について検討しているとき、1人の人物が自信に満ちた声で発言し、なされるべきことを断言する場面に、あなたは何回遭遇したことがあるでしょうか?

時として、これは権力誇示です。その人物は、自分が解決策を思いついた人間になりたいのです。また、単に解決策へと普通に飛びついてしまっただけの場合もあります。

しかし、その人物の動機が何であれ、もたらされる効果はリスクを生み出し、時間を浪費することになります。

リスクが生じるのは、会議がその最初の可能性のある解決策へと突然勢いづいてしまい、考えられるすべての解決策を検討し、どれが最善であるかを吟味しないまま進んでしまうからです。

浪費される時間とは、活気や勢いを維持したまま、グループを再び巻き戻して、考えられるすべての解決策を検討させるために必要となる時間のことです。

知識を時期尚早に断言するのではなく、問題を問いの形で提示し、候補となる解決策を集めはじめましょう。これこそが、プロジェクトチームが行なう最も重要な仕事の核心です。

つまり、問題に対する解決策の可能性を収集し、分析すること。そして、可能な限り最大数の解決策を集めたいところです。

まず、あなたとチームは、解決策たちを分析する間、不確実性や不完全な情報とともにしばらく過ごすことに耐えられなければなりません。

まさにそこに鍵があります。

解決策は、それを提案した人物とは完全に切り離され、そのメリットに基づいて評価される必要があります。個人がどうであるかは関係ありません(提案したという時点で、彼らはすでに自身の価値を証明しています)。重要なのは、共通の課題に対する最善の解決策です。

仕事そのものをめぐる対立は、チームの絆を深めるはずです。事実や前提についての議論や、機能するものへの共通の追求がそれにあたります。

しかし、もし議論が文化やプロセスに向かってしまった場合、つまり、否定的な意味で個人的なものになってしまった場合(「解決策の選択肢1」ではなく「〇〇さんのアイデア」という捉え方など)、チームの力学へのダメージは永続的で、修復不可能なものになる可能性があります。

最善の対立とは、多くの解決策の中から文字通り最高のものを見つけ出すために揉み合うことであり、それによってチームはチームとして勝利を収めることができるのです。

4. チームとは対面で、ともに学ぶ

ケース1

そのメールには、サイキ宇宙船の通信システムの一部パーツの到着が、予定よりも数週間遅れることが淡々と説明されていました。理由は書かれていません。

下請け業者のスケジュールの遅れがこれが初めてではなかったという点を除けば、それほど大きな問題ではなかったのかもしれません。

私たちはすでに彼らのリーダー層の一部と定期的なバーチャル会議を実施していましたが、問題を引き起こしている原因は、それらのバーチャルな会話を通じて解決されることも、私たちにとって明確になることもありませんでした。

私たちは、彼らが通信システムに必要なパーツの「調整」に成功しておらず、そのため使用できない状態であることを知りました。

しかし、なぜでしょうか? ビデオ会議をいくら重ねても、「このユニットは一からやり直します」「追加コストについて、新しい請求書をそちらに提出する予定です」ということ以外、何も得られませんでした。

そこで私たちは、本物の人間関係を築き、実際に何が起きているのかを突き止めるために、現地を直接訪問してプレッシャーを強めました

訪問した際、私たちは本当に起きていることを知りました。その会社の唯一の調整エキスパートであったヘレンという女性が、退職していたのです。

必要なパーツを製造するために、彼らはヘレンを引退生活から呼び戻さなければなりませんでした。

私たちは、彼女が「いや、もう十分だ」と言い出すのではないか、あるいは、恐ろしいことに──当時はパンデミックの最中だったため──その結果として彼女が新型コロナウイルスに感染してしまうのではないかと終始心配していました。しかし、ありがたいことに彼女はやり遂げてくれ、動作するパーツが納品されました。

ケース2

1年後、今度は国の反対側で、別の会社の納品スケジュールが遅れていました。この問題はさらに深刻でした。

なぜなら、その会社はパーツがなぜ機能しないのか原因を掴めていなかったからです。それは調整のような、欠落している単一の工程ではなく、もっと複雑な何かでした。

私たちは専門家チームを編成し、彼らはその複雑なパーツの1つをCATスキャンし、破壊分析を行いました。

彼らは、間違ったボルトの使用、あるべきではない場所にあるエポキシ樹脂の塊、そして可動パーツがある領域に見られる削り屑のような異物など、複数の問題を発見しました。

驚いたことに、この会社も適切なパーツをつくるために専門家を引退生活から呼び戻さなければならなかったことを私たちは知りました。そしてなんと、彼女の名前もヘレンだったのです!

違う会社、違うパーツ、しかし同じストーリーでした。なぜこれらの会社は、「秘伝のレシピ」を忘れてしまうのでしょうか?

対面でしか得られない「暗黙知」を継いでいく

突然、この問題、すなわち人間が何か重要で貴重なことを行なう、あるいはつくる方法を学び、そしてその知識を忘れてしまうという問題が、私の頭を離れなくなり、見渡す限りのあらゆる場所に現れるようになりました。

なぜ今までこの疑問を持たなかったのでしょうか。周囲を見渡しながら、私は「人間の進歩とはふるいのようなものであり、知識は常にそこからこぼれ落ちて永遠に置き去りにされていくのだ」と考えました。

チームのレシピを維持するということは、結局のところ、対面で、肩を並べて働き、お互いから学ぶことを意味します。

プロセスを書き留めること以上に(真面目な話、手順書やマニュアルは役に立たないことがよくあります)、対面で学び、対面でしか起こり得ない暗黙知、つまり言葉にできない専門知識を伝承することこそが重要なのです。

過度なリモートワークはチームを崩壊させます。このリモートワークという広大な海の中に、協働の島々をつくり出す必要があり、知識の個人的な伝達を最優先しなければならないのです。

5. 決して諦めない

人生や仕事において、人が諦めてしまうかもしれない瞬間をいくつか挙げてみます。

  • 職場で問題を発見して解決策を提案したところ、上司からそっけない態度で対応された。それ以来、何も音沙汰がない。
  • ここ数年、高等学位(大学院の学位)の取得に向けて努力してきたが、論文のステップが不可能に感じられ、スケジュールは延び、資金も底を突きかけている。
  • 職場で数年間、大きなプロジェクトを率いてきたが、重大な問題に直面し、多額のコストを伴ってプロジェクトの完了がさらに10カ月遅れることになった。そして、あなたが責められている。

ここで投票してみましょう。これらのケースのうち、どれにおいて諦めるべきでしょうか?

私の投票は「どれでもない」です。

自分が取り組んでいることを、いつ諦めるべきでしょうか? ほとんど「いつでもない」です。

代わりに、責任を全化し、前進とみなせる進むべき道を見つけ、失敗という概念を捨て去りましょう。自分の間違いを認めつつも、頭を高く掲げて前に進むのです。

粘り強く続けるということは、あなたに責任感があり、断固としており、信頼でき、ひるまないということであり、そのすべてがあなた自身の成功とチームの成功にとって極めて重要なのです。

決して諦めないでください。

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Originally published by Fast Company [原文

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