「子どもが“かかりやすい感染症”」をご存じですか? 家庭内感染を防ぐ方法も医師が解説
公開日:2025/09/24
免疫機能がまだ十分に発達していない子どもは、感染症にかかりやすいもの。感染症の種類によって症状や治療は異なり、「家庭内感染が気になる」という人も多いと思います。そこで、20条小児科・内科クリニックの佐藤先生に、子どもがかかりやすい感染症について、そして家庭内感染の防ぎ方についても教えてもらいました。
監修医師:佐藤 琢史(20条小児科内科クリニック)
プロフィールをもっと見る
地方独立行政法人 静岡県立病院機構 静岡県立総合病院、地方独立行政法人 静岡県立病院機構 静岡県立こども病院、金町こどもクリニック 院長などを経て現職。日本小児科学会 小児科専門医。日本小児科学会、日本小児感染症学会の会員。
編集部
子どもは感染症にかかりやすいと聞きました。なぜですか?
佐藤 先生
子どもは大人と比べて体が未発達であるため、免疫力が低く、ウイルスや細菌と戦う力が弱いためです。また、集団生活を始める前の子どもは抵抗力が弱く、保育園や幼稚園などで集団生活を始めると途端にさまざまなウイルスや細菌にさらされ、感染しやすいという特徴があります。
佐藤 先生
子どもがかかる感染症はたくさんありますが、今回は大きく分けて、「予防接種があるもの」と「予防接種がないもの」でお話します。「予防接種があるもの」には麻しん(はしか)、風しん、水痘(みずぼうそう)、ロタウイルス、おたふくかぜ、インフルエンザなどがあります。
編集部
予防接種がないものにはどのような感染症がありますか?
佐藤 先生
ノロウイルス、ヘルパンギーナ、手足口病、プール熱、溶連菌感染症、RSウイルス、突発性発疹などがあります。
編集部
これらの感染症にかからないようにするには、どうしたらよいのでしょうか?
佐藤 先生
まず、予防接種があるものについては、積極的に接種をすることが大切です。予防接種を受けることで感染リスクを低くすることができ、たとえ罹患しても重症化するリスクを下げることができます。
佐藤 先生
感染症というと冬に流行するイメージを持つ人も多いかもしれませんが、実際は年間を通してさまざまな感染症が流行しています。特に近年では気候変動の影響により、今までの流行時期とずれてきているものもありますから、しっかり手を洗う、うがい、消毒を徹底するといった衛生管理を通年、おこなうようにしましょう。
佐藤 先生
まずは症状を確認しましょう。熱はあるか、食欲はあるか、発疹はあるか、咳はひどくないかを確認します。その際に、普段の様子と違っていれば、まずは小児科を受診しましょう。もし、38度以上の熱が続く、何度も吐く、強い腹痛が見られる、血便がある、ぐったりしている、意識障害がある、呼吸が苦しそうなどの症状が見られる際には、早急な検査や治療が必要な場合があるので、早めに小児科を受診しましょう。
佐藤 先生
原因となるウイルスや細菌によって異なります。風邪などウイルス性の感染症の場合には特効薬がないことが多いので、基本的には対症療法となり、解熱剤を使用したり、水分補給をおこなったりします。ただ、インフルエンザのように治療薬のあるウイルスもありますから、詳しくは医師の指示を仰いでください。一方、溶連菌感染症など細菌による感染症の場合には、抗生物質を用いることが一般的です。
編集部
子どもが感染症にかかったら、大人にうつることもあるのですか?
佐藤 先生
ウイルスや細菌によっては、子どもから大人へ感染するものもあります。たとえば溶連菌感染症、ノロウイルス、インフルエンザ、水痘、おたふくかぜなどは、子どもから大人へうつることも多く、場合によっては大人のほうが、症状が重いこともあります。もし、お母さんが妊婦さんの場合、お腹の赤ちゃんに影響が及ぶこともありますし、また低年齢の弟や妹にうつると重症化するリスクもあります。そのため子どもが感染症にかかったら、家庭内感染をしっかりと予防することが必要です。
編集部
具体的にどのようなことに気をつけたらよいでしょうか?
佐藤 先生
感染症の子どもが使用した食器やタオルはほかの人と使いまわさないようにするなどといった工夫が大切です。アルコール消毒がきかないノロウイルスなどの胃腸炎を発症している子どもが嘔吐・下痢をした際に、次亜塩素酸の含まれた洗剤で、嘔吐物・下痢の処理をするのが有効です。また、嘔吐物や便などは揮発によっても人に感染する可能性があるので、処理の際にはマスク着用と換気をすることをおすすめします。また、ゴミ箱へ捨てる際にはビニール袋などに密封してから捨てましょう。
佐藤 先生
小さい子どもの場合には難しいかもしれませんが、ある程度大きな子どもであれば、部屋を隔離することも有効です。できるだけ接触の機会を減らすことで、家族内感染のリスクを下げることができます。
編集部
最後に、メディカルドック読者へのメッセージがあれば。
佐藤 先生
子どもは感染症を繰り返すことで少しずつ免疫を獲得し、強くなっていきます。鼻水や軽度の咳などの風邪ということが多いですが、子どもは自分の状態をうまく伝えられないですし、大人に比べて急に状態が悪化することがあるので注意が必要です。もし、熱が続いていたり、普段と違った様子だったりするときは、遠慮せずにかかりつけの小児科を受診するようにしてください。
編集部まとめ
子どもは大人に比べて感染症にかかりやすいもの。しかし予防接種で感染予防できるものもたくさんあります。そうしたものは積極的に予防接種を受けましょう。特にお母さんが妊娠していると薬を使うことが難しくなり、症状の重篤化が危惧されます。予防接種があるものは受けつつ、手洗いやうがいを習慣化するなど基本的なことも見直してみましょう。