長生きには身体の健康に着目するだけでは不十分、年齢に関係なく取り組むべきこととは

長生きするには、身体の健康に焦点を当てるだけでは不十分であるということが新たな研究で明らかになった/Maskot/Digital Vision/Getty Images

(CNN) 長生きするには、身体の健康に焦点を当てるだけでは不十分――。学術誌プロスワンに先月24日に掲載された研究でそうした事実が明らかになった。

研究者らは、高齢者の最適なウェルビーイング(心身の健康や幸福)について調査した。最適なウェルビーイングは、社会的な支援を受けている、加齢や心身の健康、幸福感、生活満足度に肯定的な認識を持っていること、そして大きな制限なく日常生活を送れる能力があることと定義したという。

研究は8000人超の高齢者を対象としている。トロント大学ファクター・インウェンタッシュ社会福祉学部で博士課程を修了し、研究の筆頭著者を務めたメイベル・ホー氏によると、研究開始時に最適なウェルビーイングになかった高齢者の4人に1人が、わずか3年以内にウェルビーイングを取り戻すことができた。「こうした研究結果は、ウェルビーイングは加齢とともに必然的に低下するという考え方に疑問を投げかけ、人生の後半に前向きな変化が訪れる可能性を浮き彫りにしている」

今回の研究は、老化に関するカナダの縦断的研究で収集されたデータの二次分析を行ったもの。得られた知見は現在最適な健康状態やウェルビーイングの状態にない60歳以上の高齢者に当てはまるという。

ホー氏は「精神的・感情的なウェルビーイングが良好だった人は、研究終了時までに最適な健康状態に到達する可能性が約5倍高かった」と指摘する。

この結果は、「支えとなる人間関係、社会経済的条件、そして定期的な運動、禁煙、十分な睡眠といった健康的な生活習慣の選択が大きな影響を与えることも強調している」という。

ただし、研究は皆保険制度が整備されているカナダを対象としているため、研究結果が65歳以上のすべての成人に当てはまるわけではない可能性がある。

健康と老化への包括的アプローチ

身体的にみれば、健康的に年を重ねるためには主に運動・睡眠・食事の三つの生活習慣を変更するといい。

ただし、孤独の問題や良好な人間関係の維持にも取り組まなければ、生活習慣の変更は効果を発揮しない。

CNNは以前、50歳以上でつねに孤独を抱える成人は、孤独感が低い成人に比べ脳卒中のリスクが56%高いと報じている。

ストレスを軽減し、頻繁に社会活動を行うことは、アルツハイマー病の初期段階にある成人の認知機能改善とも関連していた。

「強固な社会的つながりを育むことは、ウェルビーイング全般にとって不可欠な要素だ。禁煙したり、不眠症などの睡眠の問題に対処したりするなど生活習慣の変化も、健康状態を大幅に改善させる可能性がある」と、トロント大学ファクター・インウェンタッシュ社会福祉学部の教授であるエズメ・フラートムソン氏は述べた。

こうした重要な問題に焦点を当てることで、高齢者は既存の健康問題を抱えていたとしても、レジリエンス(回復力)と生活の質を高められる場合があるという。

研究は、若い成人の方が最適なウェルビーイングを達成しやすいが、高齢者が達成できないというわけではないという点を強調している。

ホー氏は、これまでの研究は衰えに焦点を当てることが多かったが、この研究は、人生の後半におけるレジリエンスや改善の可能性に焦点を当てることで、新たな視点を加えていると語る。研究は、老化には、ウェルビーイングを失うばかりでなく、取り戻す時期も含まれる可能性があることを浮き彫りにしているという。

専門家らは、年齢に関係なく、心身ともに健康になるための選択を始めることは可能だと指摘する。気分が良くなる、もっとうまくやれる、達成しようとしていることは何でも達成できる、という気持ちを持てば、実現する見込みは大幅に高まるという。

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