科学者が警告!人工の「鏡像生命体」が「完璧な生物兵器」となる可能性(宇宙ヤバイchキャベチ)
どうも!科学ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「鏡像生命体の致命的なリスク」というテーマで解説します。
最近、鏡像生命体(Mirror life)と呼ばれる仮説上の特殊な生命体が、人類の健康や地球の生態系に「前例のない不可逆的危害」をもたらす可能性があるという論文が公表されました。
もしそのような生命体が現実に出現すれば、私たちの免疫や環境に甚大な影響を及ぼすかもしれない、という警告がなされているのです。
そこでここでは、まずは鏡像異性体と呼ばれる左右反転の分子構造から解説し、なぜそれが生命にとって重要なのか、そして鏡像生命体がどのように“致命的な脅威”になり得るのかを整理していきたいと思います。
●鏡像異性体と鏡像生命体
分子には「鏡像異性体」と呼ばれる、鏡に写したような左右反転の関係があります。
鏡像異性体の分子のペアは、それらを構成する原子の種類は同じであるものの、立体的な配置が異なるため、どのように角度を変えてもこれらを重ね合わせることができません。
つまり鏡像異性体の分子のペアは非常に似ているものの、厳密には「異なる物質」といえるのです。
鏡像異性体には、L型(左手型)とD型(右手型)があります。
これはタンパク質の構成要素であるアミノ酸や、DNA・RNAに含まれる糖など、地球上の生物が生命活動において利用する物質についても同様です。
化学的には D/L の両型を取り込むことも可能ですが、地球生命は初期に片方を選び、そのまま固定化されました。
このように左右反転の分子(鏡像異性体)のうち、一方の型だけに偏っている現象を「ホモキラリティ」と呼びます。
なぜ生体分子においてホモキラリティがみられるのかについては、初期の偶然によってわずかに優勢になった型がそのまま固定化された説、偏った構造のほうが酵素反応や自己増殖の効率を上げた説等々、いくつかの可能性が議論されていますが、現在でも決定的な答えが出ていません。
もし、生命が用いている鏡像異性体分子の偏りがすべて反転し、D型アミノ酸やL型糖を中心に細胞や遺伝子が構築される生物が存在するとしたら、いったい何が起こるのでしょうか。
こうした、左右反転した分子構造をベースに生命活動を営む存在は「鏡像生命体(mirror life)」と呼ばれています。
まだ仮説の域を出ませんが、いくつかの研究者がその可能性を議論しています。
●鏡像生命体の致命的なリスク
2024年12月、世界の専門家38人からなる国際チームが「鏡像生命体の創造は極めて危険である」とする報告をScience誌に発表しました。
筆頭著者は「それは基本的に完璧な生物兵器の作り方を教えているようなものだ」とまで述べ、研究の中止を強く訴えています。
鏡像生命体がこれほど危険視される理由として、以下のような具体的リスクを指摘しています。
○免疫回避と感染症リスク
鏡像の微生物は、その表面のタンパク質や代謝物が私たちの体内の分子と鏡像関係にあるため、人間や動物の免疫系がそれらを認識できなかったり、無害だと誤認したりする可能性があります。
その結果、鏡像微生物が体内に侵入しても炎症反応や免疫応答が起こりにくく、宿主に症状が出ないまま増殖する「ステルス感染」が起こり得ると考えられます。
最初は研究施設の作業者などから静かに感染が広がり、気付いた時には手が付けられない事態になる可能性があるのです。
さらに厄介な点は、既存の医薬品や治療法が鏡像病原体には効かない恐れがあることです。
多くの抗生物質や抗ウイルス薬は病原体の特定のタンパク質構造に結合して作用しますが、その標的が鏡像型になっていれば薬剤がうまく結合できず無効となる可能性があります。
実際、科学者チームは「治療不能な感染症」が発生しうると述べており、人類が有効な対抗手段を持たない新種の病原体を生み出してしまうリスクを強調しています。
○生態系への侵入と拡散
鏡像生命体は、自然界に放たれた場合に際限なく増殖するおそれがあります。
生物は通常、捕食・被食や病原体・宿主の関係によって個体数が調節されていますが、鏡像生命体にはそれら従来の「天敵」や「病原菌」が存在しません。
例えば鏡像細菌を食べられる捕食者や、鏡像細菌に感染するウイルスは地球上にはいないため、環境中で鏡像細菌が出現すると他の生物に阻止されることなく繁殖・拡散する可能性があります。
さらにその影響は特定の生物種に留まらず、人間を含む、前例のないほど広範囲の多細胞生物にまで及ぶとされます。
つまり、生態系内のあらゆる動植物を脅かす存在になりかねないのです。
○食物連鎖・栄養循環への影響
鏡像生命体は既存の生物にとって栄養源にもならず、分解もされにくい可能性があります。
例えば、鏡像植物を通常の草食動物が食べても、その消化酵素は鏡像のデンプンやタンパク質を分解できず栄養にできません。
また鏡像微生物の死骸が蓄積しても、土壌中の分解者(細菌や菌類)はそれを分解できないかもしれません。
生態系内のエネルギーや栄養素の循環が滞り、食物連鎖に断裂が生じるリスクがあります。
これは例えば、鏡像微生物が農作物や野生植物に付着・繁殖しても、従来の微生物と競合しないため増える一方になったり、作物を守る生物的防除が効かなくなったりする可能性を示唆します。
その結果、農業被害や野生生態系の破壊につながりかねません。
以上のように、鏡像生命体がもたらすリスクは病原性の脅威から生態学的撹乱まで多岐にわたり、既存の生命圏に対する「未知の異物」として働く点に共通しています。
●鏡像生命体は実在するのか?
地球上に鏡像生命体が自然発生している確たる証拠は、いまだ報告されていません。
生命の起源期にL型アミノ酸やD型糖を利用する経路が優勢になり、そのまま現代まで固定化されたという説が有力です。
逆手のD型アミノ酸を中心に利用するような生命は、地球環境では生存競争に勝ち残れなかったのかもしれません。
ただし、合成生物学が目覚ましい進歩を遂げている昨今、“鏡像の酵素”や“鏡像の遺伝子”を試作する研究が行われています。
実際に2010年代には鏡像のDNAポリメラーゼ(遺伝情報を写し取る酵素)が開発され、「鏡像細胞」の合成への第一歩だと期待された例もあります。
将来的に技術が高度化すれば、実験室スケールで“鏡像生命体”に近い存在を作り出せる可能性も否定できません。
幸い、鏡像細菌の実現には少なくともあと10年は必要と考えられています。
完全な鏡像細胞を作るには推定5億ドルの莫大な資金と技術開発が要るため、現時点ですぐに生まれるものではありません。
しかし研究チームは「だからこそ今のうちに議論し、この道には進まないと決めるべきだ」と訴えます。
興味深いことに、論文の共同著者の中にはかつて鏡像細菌の創造を目標に掲げていた研究者も含まれており、彼ら自身が立場を変えて今回の警鐘に加わっています。
●将来の地球外生命探査への影響
鏡像生命体の議論は、地球外生命探しにも重要な示唆を与えます。
NASAなどが他惑星で生命の痕跡を探す際、ひとつの手掛かりとなるのがキラリティの偏り(ホモキラリティ)です。
非生物的に生成したアミノ酸は通常、左手型と右手型が半々ですが、生命が関与すると一方に偏ります。
もし火星や木星の衛星エウロパなど、液体の水が存在する可能性がある天体にて特定のキラリティだけが過剰に検出されれば、それは生命のサインかもしれないのです。
仮に他の天体で発見された生物が私たちと逆のキラリティを持っていた場合、既存の生態系がその生物を制御できないことを意味します。
このように、鏡像生命体の研究とそのリスク評価は、純粋な学問的好奇心にとどまらず現実的な意味合いを持っています。
万一私たちが将来、地球外の鏡像生命と遭遇するようなことがあれば、その影響を正しく評価し対処する知恵が求められるでしょう。
鏡像生命体に関する今回の発見と警告は、地球外生命探査の分野における重要な備えの一環とも言えるのです。
鏡像生命体は現時点では想像上の存在ですが、そのリスクに関する新発見をきっかけに、科学者たちは自ら立ち止まって議論を始めました。
今後の科学技術の進歩によっては、人類は意図せず鏡像の生物を生み出してしまうかもしれません。
そのとき私たちが十分な知見と対策を持ち合わせていれば、好奇心と安全のバランスを保ちながら新たなフロンティアに挑むことができるでしょう。
鏡像生命体というテーマは、生命の本質と科学の責任について改めて考えさせる契機となっています。
科学者たちが発したこの警鐘を無駄にせず、未来のリスクと叡智に備えていきたいものです。