エヌビディア、5-7月売上高に強気見通し-中国不振でも

人工知能(AI)用半導体大手の米エヌビディアのジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)は28日、AIコンピューティング市場は依然として「急激な成長」が見込まれると述べ、中国事業減速を巡る投資家の懸念を落ち着かせた。

  同社の発表資料によれば、5-7月期(第2四半期)の売上高は約450億ドル(約6兆5000億円)を見込む。輸出規制で中国売上高は約80億ドル落ち込む見通しだが、全体の売上高見通しはアナリスト予想と同水準だった。

エヌビディアのジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)

  業績見通しは、エヌビディアが次世代AI半導体「ブラックウェル」の生産を加速させていることを示している。AIモデルの開発と運用を支えるAIアクセラレーター市場で圧倒的なシェアを占めている同社は、ハードウエアとソフトウエアの製品ラインアップを拡充することで、より多くの製品を顧客に提供できる体制を整えている。

  フアンCEOはアナリスト向けの決算会見で、「今やすべての国が、AIを次の産業革命の中核と位置づけている。これは、あらゆる経済にとって不可欠なインフラとインテリジェンスを生み出す新たな産業だ」と語った。

  決算発表後を受け、エヌビディアは時間外取引で一時5%強上昇した。通常取引終値は134.81ドル。

  2-4月期(第1四半期)の売上高は前年同期比69%増の441億ドルとなり、市場予想の433億ドルを上回った。増収率は過去2年間で最低だが、他の大半の半導体メーカーにとっては羨望(せんぼう)の的だ。1株利益は一部項目を除いたベースで96セントで、市場予想平均は93セントだった。

  事業別売上高は、データセンター部門が391億ドルで、市場予想平均の392億ドルをわずかに下回った。かつて主力事業だったゲーム関連は38億ドルで、アナリスト予想の28億5000万ドルを上回った。自動車向けは5億6700万ドルだった。

  こうした中で懸念の一つとして残るのは、米国の対中貿易規制がエヌビディアの長期的な成長を妨げる可能性だ。4月にトランプ政権は、中国顧客向けのデータセンター用プロセッサーの輸出に新たな制限を課し、エヌビディアは同市場から事実上締め出された。同社はこの問題に関連して、45億ドルの評価損を計上したと28日に明らかにした。

  エマーケターのアナリスト、ジェイコブ・ボーン氏はリポートで「より大きな懸念は、貿易摩擦や関税の影響でデータセンターの拡張が妨げられ、今後の四半期におけるAIチップ需要に逆風となる可能性があることだ」と指摘した。

  エヌビディアは2020年に完了したメラノックス買収に対する当局の承認と引き換えに、中国企業への供給継続を求められている。この件に関連して当局の調査を受けており、制裁を科される恐れもあることを28日に明らかにした。

  同社は「中国の規制当局は、米国の輸出管理規制の順守が中国市場の顧客に対する不公正な差別に当たるかどうかを調査している」と説明。「当社がこうした義務を果たしていなかったり、中国の関連法令に違反したりしたと当局が判断した場合、金銭的な制裁や事業遂行能力への制限が課される可能性がある」とした。

  フアン氏は決算会見で、中国向け出荷を再開できるような新型チップを開発する予定があるか問われた際、H20チップの性能をさらに引き下げると実用に耐える製品ではなくなると述べた。

  一方で、同社が中国市場向けに「興味深い」製品を新たに開発できるか模索しているとも述べ、構想を議論しているものの、現在のところ何も決まっていないと説明。設計が可能になれば米政府と協議する方針を示した。

  同氏は会見でトランプ政権に対し、中国向けチップの製造を再び認めるよう改めて訴えた。許可が得られなければ、AI分野における米国の世界的リーダーの座は保証されないと指摘し、中国企業は自力でAI開発を進めるだろうと予想した。

  「中国のAIアクセラレーター市場は500億ドル近い規模に拡大すると見込まれる。こうした市場へのアクセスを失えば、当社の今後の事業に重大な悪影響を及ぼす可能性がある上、中国および世界の競合他社の競争力を高めることになる」とフアン氏は語った。

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原題:Nvidia CEO Eases Concerns About China With Upbeat Sales Forecast、*NVIDIA SHARES EXTEND GAIN TO MORE THAN 5% AFTER EARNINGS (抜粋)

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