Visa、“タッチ”に続くEC専用の「クリック決済」 年内開始
Visaは、eコマース(EC)での決済体験を向上させる新たなソリューション「クリック決済」を日本で導入する。具体的な導入日は未定だが、2025年中に実現する意向を示している。海外では「Click to Pay」の名称で先行展開されているサービス。 【この記事に関する別の画像を見る】 Visaが実施した調査では、ECサイトにおける複雑な決済プロセスやセキュリティへの不安、カード決済の承認が下りないことなどが課題としてあった。これらがECサイトにおける購入放棄、いわゆるカゴ落ちにつながる要因としている。クリック決済は、事前に登録したカード情報を利用することで、カード番号の入力を省略。手間を無くして、すばやく購入できるのが特徴。 ■ Web版の「タッチ決済」を目指す クリック決済は、ECサイト上におけるクレジットカード番号の入力の手間をなくし、対面でのタッチ決済のような手軽さと安全性を提供する。利用者側は購入の複雑さや安全性への不安が解消され、EC事業者側では、決済時のユーザーの離脱(カゴ落ち率)を減らし、加盟店の売上向上に貢献することを目指す。決済にかかる時間を約20秒削減し、カゴ落ち率の減少に寄与する。ヨーロッパでの先行導入事例では、カゴ落ち率が半減したケースも報告されているという。 また、クリック決済では、16桁のカード番号の代わりにトークンを使用することで不正利用を防止する。トークンはVTS(Visa Token Service)が保管・管理する。さらに、本人認証には顔認証や指紋認証と連携できる「パスキー」を導入。このパスキー認証は、Visaのカード1枚ごとに設定する必要があるとしている。 ■ 業界標準採用で共通のUX体験を実現 クリック決済は、スマートフォンやPCなどデバイスを問わず利用できる点が特徴。これは、クレジットカードやデビットカードの国際標準規格を策定するEMVCoのスキームに基づいているためであり、Apple Payのように特定のデバイスやアカウントに限定されない。ECサイトがクリック決済に対応していれば、ユーザーはどの端末からでもスムーズに決済が可能になる。 また、Visa以外の国際ブランドも、EMVCoの仕様に準拠した同様の機能の導入を予定しており、ブランドが異なってもユーザー体験(UX)が変わらない点も大きな利点といえる。一方で、既に先行導入が進む海外市場においては、「Click to Pay(クリック決済)」に対応しているECサイトは現時点では限られており、対応店舗の拡大が課題となっている。 Visaは、日本のPSP(決済サービスプロバイダー)やイシュア(カード発行会社)、加盟店と連携し、クリック決済の導入を進めている。「既存のシステムからのスムーズな移行に向けて、各パートナーとの協議も重ねている。1~2年ではなく、それよりも短いスパンで案内できると思う」(ビザ・ワールドワイド・ジャパン テクニカル・イネーブルメント部 田中氏)としている。 これまで、同社は「Visa Checkout」と呼ばれる類似の機能を提供していたが、日本では導入されていなかった。こういった背景もあり、クリック決済の導入に時間を要したとしている。なお日本では、「Visaでタッチ決済」のCMで浸透している呼称との統一を意識し、グローバル名称「Click to Pay」に対し「クリック決済」という名称で展開される。
Impress Watch,佐々木 翼