コーヒーやお茶に含まれる「カフェイン」が抗生物質の効果を弱めてしまう可能性があると判明
抗生物質は体内の細菌を殺したり増殖を抑えたりするための薬であり、さまざまな感染症の治療に効果を発揮します。新たな研究では、コーヒーやお茶に含まれているカフェインが、一部の抗生物質の効果を弱めてしまう可能性があることがわかりました。
Systematic screen uncovers regulator contributions to chemical cues in Escherichia coli | PLOS Biology
https://journals.plos.org/plosbiology/article?id=10.1371/journal.pbio.3003260Study finds caffeine can weaken effectiveness of certain antibiotics | University of Tübingen https://uni-tuebingen.de/en/university/news-and-publications/press-releases/press-releases/article/study-finds-caffeine-can-weaken-effectiveness-of-certain-antibiotics/
Mixing Coffee And Antibiotics Could Be a Bad Idea, Study Shows : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/mixing-coffee-and-antibiotics-could-be-a-bad-idea-study-shows近年は抗生物質などの薬に強い耐性を持つ薬剤耐性菌が大きな問題となっていますが、こうした強力な薬剤耐性を持っていない細菌でも、遺伝子の働きや周辺環境への反応により、低レベルの薬剤耐性を持っているとのこと。これまでの研究でも、主要な病原菌である大腸菌などの細菌が環境に対して適応し、生存可能性を高めていることがわかっています。
カフェインをはじめとする食品に含まれる化学物質も、細菌が持っている低レベルの薬剤耐性に影響を及ぼす可能性があります。そこで、ドイツのテュービンゲン大学で分子生物学の准教授を務めるアナ・リタ・ブロチャド博士らの研究チームは、さまざまな化学物質が大腸菌に与える変化について研究しました。
今回の研究では、抗生物質や処方薬、食品などに含まれる94種類の化学物質が、大腸菌の主要な遺伝子調節因子と輸送タンパク質の発現に及ぼす影響が調べられました。輸送タンパク質は、細菌の細胞膜にある細孔やポンプとして機能し、細胞内への物質の出入りを制御します。
系統的スクリーニングで調査したところ、検査した物質の約3分の1は輸送タンパク質の発現を阻害することが判明。中でも顕著だったのはカフェインであり、大腸菌によるシプロフロキサシンを含む一部の抗生物質の吸収量が低下することが示されました。 この研究結果は、カフェイン入り飲料などの直接的な抗菌作用を持たない飲食物でさえ、輸送タンパク質を制御する特定の遺伝子調節因子に影響を与え、細菌に出入りする物質を変化させることを示唆しています。 論文の筆頭著者でありテュービンゲン大学分子生物学科の博士課程に在籍するクリストフ・ビンスフェルド氏は、「私たちのデータは、いくつかの物質が細菌の遺伝子調節に微妙ながらも体系的な影響を与えられることを示しています」と述べました。
分析の結果、物質の大腸菌への出入りを制御する上で、Robタンパク質がこれまで考えられていたよりも大きな役割を果たしていることがわかりました。Robタンパク質はカフェインが引き起こした変化も含め、今回特定された遺伝子調節因子と輸送タンパク質の変化のうち、約3分の1に関与していたとのことです。 ブロチャド氏は、「カフェインは遺伝子調節因子であるRobタンパク質を起点とする一連の反応を引き起こし、最終的には大腸菌における複数の輸送タンパク質の変異を引き起こします。これにより、シプロフロキサシンなどの抗生物質の取り込みが減少します」と述べました。
さらに今回の研究では、大腸菌の近縁種であるサルモネラ菌(Salmonella enterica)においては、特定の抗生物質に対する効果の弱まりが確認されませんでした。これは、たとえ類似した細菌であっても、同じ物質によって引き起こされる反応は異なることを示唆しています。 なお、今回の研究はあくまで実験室で行われたテストに基づいたものであり、実際の人間の体内でも同じ効果が現れるのか、そしてどれほどのカフェインを摂取すると影響が出るのかを知るにはさらなる研究が必要です。
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