欧州部隊のウクライナ派遣、停戦が合意されれば「用意ある」 英国防相が発言
画像提供, EPA
イギリスのジョン・ヒーリー国防相は20日、アメリカのドナルド・トランプ大統領とロシアのウラジーミル・プーチン大統領がウクライナでの停戦で合意した場合、欧州の部隊を数週間以内にウクライナへ「派遣する用意はある」と述べた。
今後2週間以内に停戦合意が実現した場合、部隊をウクライナに派遣することは可能か問われると、ヒーリー氏は「トランプ大統領が和平を仲介できるなら、我々にはその和平を確保するために支援する用意がある」と述べた。
ただし、いかなる和平交渉においてもウクライナ人が「どのように、何を交渉するかを決定」すべきだとも付け加えた。
ヒーリー氏によると、ウクライナの安全を保証するためにキア・スターマー英首相が3月に立ち上げた、26カ国からなる「有志連合」は、「停戦が実現した場合に備えて、詳細な計画を策定してきた」という。
この計画では、イギリス軍が多国籍部隊に加わってウクライナの国境を守る可能性がある。
「過去6か月間に38カ国以上から200人を超える軍事計画担当者」が取り組んできたことで、必要なときに部隊を派遣できる態勢が整っていると、ヒーリー氏は述べた。
英政府は、ウクライナへの部隊派遣に1億ポンド(約200億円)を「大きく上回る」拠出を見込んでおり、その一部はすでに派遣準備にあてられているという。
ヒーリー氏は20日、ロンドン市長主催の年次防衛講演に出席した際、プーチン氏がイギリスを「最大の敵」とみなしているのは、イギリスがウクライナを支援しているからだとも述べた。
さらに、欧州が「新たな脅威の時代」に突入したと警告。第2次世界大戦以降、欧州でこれほど広範な紛争へのリスクが高まったことはないとした。
講演の中でヒーリー氏は、軍事基地を脅かすドローンを撃墜するための新たな権限を、英兵に与えることも発表した。
イギリスでは昨年、米軍が使用する四つの空軍基地で正体不明のドローンが目撃された。ここ数カ月では、欧州各地にドローンが飛来し、混乱が生じている。
ヒーリー氏が言及した新たな権限の適用範囲は、軍事施設に限定されるというが、将来的には空港などの民間施設にも拡大される可能性がある。
ヒーリー氏は、「キネティック・オプション(動力学的選択肢)」を導入することで、英兵や英国防省の警官が、国内の軍事施設を脅かすドローンを撃墜できるようになると説明した。
ゼレンスキー氏は、ロシア領深部への攻撃を可能にする長距離巡航ミサイル「トマホーク」の供与をアメリカ側に要請するためワシントンを訪れていた。
しかし、複数報道によると、トランプ氏はトマホークの供与の求めに応じるのではなく、ウクライナ東部ドンバス地方全域をロシアに明け渡すよう求めたという。ロシアは現在、ドンバス地方を構成するドネツク州の70%と、ルハンスク州のほぼ全域を支配下に置いている。
英紙フィナンシャル・タイムズは、両首脳の会談でのやり取りに詳しい関係筋の話として、トランプ氏はゼレンスキー氏が条件を受け入れなければ、プーチン氏がウクライナを「破壊する」だろうと警告したと報じている。
ロシアがウクライナに全面侵攻してから1300日以上が経過し、プーチン氏は北朝鮮、イラン、中国からの支援にますます依存するようになっている。
ヒーリー氏によると、ロシア側の死傷者数は100万人を越え、ロシア政府は支出の40%を軍事費にあてている。
しかしここ数カ月では、ウクライナのインフラを狙った攻撃を強め、ウクライナ各地で緊急停電を引き起こした。
欧州の指導者たちは、トランプ氏が姿勢を転換させることに懸念を示している。ポーランドのドナルド・トゥスク首相は、「宥和(ゆうわ)政策が公正で永続的な平和への道筋になったことはなかった」と、ソーシャルメディアに投稿した。
フィンランドのアレクサンデル・ストゥブ大統領は、「領土問題について決定できるのはウクライナ人だけだ」と述べた。
ストゥブ氏はBBCに対し、フィンランドは「有志連合」の一員として、クリミア半島やドネツク州、ルハンスク州をロシア領とは決して認めないと述べた。