ソニー「Xperia 1 VII」が高額でも売れる理由、シェア低下の裏にある意外な勝算とは

1ページ目を1分でまとめた動画  ソニーは、フラッグシップスマートフォン「Xperia 1 VII」を発売した。ドコモ、au、ソフトバンクが取り扱うほか、SIMフリーモデルがソニーの直販サイトなどで販売されている。SIMフリー版はRAMとストレージ容量が異なる3タイプが用意されているが、RAM 12GB、ストレージ 256GBの最小容量モデルが20万4,600円(税込み)となっている。  Xperia 1シリーズは、昨年の「Xperia 1 VI」で従来モデルから大きな変化を遂げた。画面の縦横比が21:9から19.5:9に変更となり、4Kディスプレーも廃止に伴い解像度はフルHD+となり、ほかのスマホと同様の比率・解像度になった。また、本格カメラの性能や操作性を追求していた「Photography Pro」「Cinema Pro」などが廃止され、1つのシンプルなカメラアプリに統合された。これらの変更は、主に動画を撮影してSNSにアップするクリエイターの意見も参考に決定されたものだ。  4Kの縦長ディスプレーとこだわりのカメラアプリはXperia 1シリーズを特徴付ける大きな要素であり、発表後、ネット上では同シリーズに対する賛否が分かれた。ただ、ソニーマーケティング 執行役員(モバイルビジネス担当)大澤 斉氏によると、1 VIのクリエイターからの評価は「非常に高い」という。1 VIは、その前のモデル「Xperia 1 V」(2023年発売)と比較して「120%以上の販売数を記録」しており、「幅広いお客さまに受け入れられた」という認識を持っているという。  前機種比約2.1倍に大型化した1/1.56 インチのセンサーを使った新しい超広角レンズを搭載し、これを使った「AIカメラワーク」と「オートフレーミング」という新たな動画撮影機能を搭載。また、高音質はんだと高音質抵抗を新たに搭載して「ウォークマン」に匹敵する有線音質を実現した。さらに、前面に加えて背面にも照度センサーを搭載することで周囲の明るさを正確に認識。ディスプレーを環境に合わせた色、明るさに自動で調整し、直射日光下から暗い場所まで、ソニーのテレビ「ブラビア」の鮮やかな画質を体験できるといった特徴を持つ。


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 Xperia 1 VIIで特に注目したいのは、動画撮影機能のAIカメラワークとオートフレーミングだ。  AIカメラワークは被写体をファインダーの中央に固定して撮影ができる機能。たとえば、動き回る被写体を撮影者も動きながら撮影する場合、AIカメラワークを利用すると、手ブレ補正と独自の姿勢推定技術によって被写体の位置を一定に保つこと可能だ。動画撮影になれていないユーザーでも、安定したカメラワークで動画を撮影できる。  オートフレーミングは、動画を撮る際にカメラを被写体に向けておくだけで、全体の映像と決めた被写体だけを切り出した映像の2つの動画を撮影できる機能だ。これを使うと、学芸会などでステージ全体を撮りつつ自分の子どもだけを追いかけた2つの動画を撮ることができる。動画を撮影する場合、スマホの画面ばかり注視して撮影を続けてしまいがちだが、スマホを固定しオートフレーミングで追いかける被写体を決めてしまえば、実際のステージを自分の目でしっかり見ながら、同時に撮影もできるのが最大のメリットだ。  ソニーは従来のXperiaでもカメラなどにAIを搭載してきたが、1 VIIではAIカメラワークやオートフレーミングをはじめとするリアルタイム処理を行うAIを「Xperia Intelligence」として訴求している。最近のスマホの中には、オンデバイスAIで音声の文字起こしや要約を可能にするものも多いが、1 VIIではカメラやディスプレー、サウンドといったソニーが得意とする分野に活用してきた格好だ。  それ以外の分野はGoogleのAIに任せる形になる。生成AIの「Gemini」を搭載し、画像の「かこって検索」、GoogleフォトのAI編集機能である「消しゴムマジック」や「編集マジック」なども使える。GoogleとはAIの面でも引き続き連携して実装していくとしている。

 ところで2024年のXperiaは、Xperia 1シリーズでの4K廃止と画面比率の変更、カメラアプリ統合のほかに、小型の「Xperia 5」シリーズで新モデルを投入しないという残念な動きもあった。Xperia 5シリーズは、機能性や価格帯が1シリーズと10シリーズの中間に位置するモデルだが、5月中旬に開催されたXperia 1 VIIのプレス向け製品体験会では、Xperia 5シリーズについての言及はなかった。  また、5月14日にMM総研が発表した2024年度通期のメーカー別国内スマホ出荷台数シェアで、ソニーは上位6位圏内から脱落している。1位アップル、2位シャープ、3位Googleなど6位までメーカー名が表記される中、ソニーは複数メーカーを合わせた「その他」に追いやられてしまった。なお2023年度のシェアでは、ソニーは5位だった。  シェアの低下については大澤氏も認めているが、「利益という意味では、24年度は大きく改善できた」と語っている。 「公開されている各種販売データを一元的に見るとシェアが下がっているように見えるかもしれないが、23年度は新モデルと旧モデルのミックスなどがあり、販売数が合算された形でマーケットシェアが出ていた状況。24年度においては、そのミックスを大きく改善し、ほぼ新商品の販売にシフトできた。新商品を数多く販売したほうが、我々の利益重視の戦略により近いアウトプットが出せると考えている」(大澤氏)  大澤氏は「シェアの具体的な目標は考えていない」とも語っていたが、販売台数の減少が続くと生産台数に影響し、生産コストが上がって端末価格が上がり、さらにシェア低下につながるという可能性もある。シェア低下も限度があるだろう。  販売台数を稼ぐためには、価格抑えめで買いやすいミドルレンジモデルが重要になる。昨年はXperia 1シリーズと同時発表だったXperia 10シリーズについては、ソニー モバイルコミュニケーションズ事業部 事業部長の大島正昭氏から「今年の秋をめどに発表したい」との説明があった。大島氏は「10シリーズは我々の感動体験の入り口として大事にとらえている」と、その重要性も語っている。  現モデルの「Xperia 10 VI」は、主要3キャリアはもちろん、楽天モバイルやUQ mobile、複数のMVNOで取り扱いのある人気モデル。10 VIは画面比率21:9を継続したが、今秋登場予定の“10 VII”もこの比率を継続するのか、「次は1 VIIに買い換えたい」と思わせられるような魅力を詰め込み、販売台数を伸ばしていけるのかに注目だ。

執筆:フリーランスライター 房野 麻子

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