災害対策の専門家が「非常用持ち出し袋」に入れているものとは
地球温暖化の明白な結果のひとつが、激しさを増す異常気象だ。たとえば、死者が出るレベルの熱波、洪水、台風、森林火災、そして科学者の中でも議論があるが吹雪などだ。災害を研究する専門家にどう備えているかを聞いてみた。(MARK THIESSEN, NATIONAL GEOGRAPHIC)
地球温暖化の影響で、台風や洪水、熱波、山火事などの頻度と厳しさが増している。その被害もかつてないものになっている。米国では、2025年の前半は災害の被害額が過去最高の1010億ドル(約16兆円)を記録した。
異常気象の研究者は、こうした災害のリスクは今後も上がっていくと予想している。つまり被害を受ける人は増えていくということだ。2025年5月7日付けで学術誌「ネイチャー」に発表された研究によれば、自然災害に遭遇するリスクは、1960年と比べて倍になっているという。(参考記事:「【解説】LA山火事、気候変動で35%起きやすくなっていた」)
ただ同時に、事前に準備をしておけば命が助かる可能性が上がることを示している研究も多い。(参考記事:「南海トラフ地震の対策計画を改定 被災者の「命をつなぐ」も重点」)
来るべき災害に備えるのは今だ。暑く、湿度の高い夏には災害が増えがちになる。備えの最善策を知るために、ドイツ、ハンブルク大学で、気候変動適応を研究するベンヤミン・ホーフバウアー氏と、米ワシントン大学で気候変動の健康への影響と対策を研究するニコール・エレット氏に、普段それぞれどんな備えをしているのかを聞いてみた。(参考記事:「2026年に「スーパーエルニーニョ」の可能性、NOAAが予測」)
――異常気象や自然災害に事前に備えておくことがなぜ重要なのでしょうか?
ホーフバウアー氏: 気候変動と、災害をもたらす気象現象の増加は直接関連しています。高潮や熱波、森林火災へとつながる干ばつ。そのどれもが、常にではないにしろ、たいてい気候変動に引き起こされています。
その頻度や規模は増しています。ここ10年で、これだけ多くの台風や洪水が起こる状態が普通になってきてしまったのを考えれば、それは誰の目にも明らかです。かつてない状況ですし、これからもその傾向は続くでしょう。
エレット氏: もし今日なにか起こったとしたらどう対応するか。そういった状況について考えをめぐらせるのは、危機に直面していない、落ち着いている場面でやっておくべきです。災害対策について「大事なのは対策そのものではなく、対策を練ること」だとよく言われます。まず対策について考えるだけで備えにつながりますし、それを家族と話しておくことが大切です。
左上から順に:N95マスク、携帯用浄水器、懐中電灯、ポケットナイフ/マルチツール、スペースブランケット、ガーゼ、抗菌性の軟こう、水、缶詰食品、絆創膏、タオル。(MARK THIESSEN, NATIONAL GEOGRAPHIC)
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――日常における非常事態への備えについてどう考えていますか?
エレット氏: わたしの場合、備えは日常に組み込まれています。たとえば、車と家には余分に水を置いています。水のボトルには賞味期限があるので、年に一度大きなパックを買って、ローテーションするようにしています。同じボトルが何年も放置されないように。
車のガソリンはいつも満タンにしておくよう心がけていますし、多少の現金が家と財布の中にあるようにしています。このように、備えはわたしの行動パターンの一部になっています。必要なものは多めに残しておいて、いざというときに頼れるようにしてあるのです。
災害対策キットを買っておいたはいいものの、収納の奥に放置されていて、いざというときに古すぎて使えなかったり、そもそもどこに置いたのか覚えていなかったり、なんてことはよくある話です。そのためわたしは、日常のローテーションの一部、リストの上の方に、常に備えに関することを置いています。
また、危険に関してきちんと自覚をもつようにしています。たとえば太平洋岸のオレゴン州の海岸に行って津波警報が出たときは、自分がいるのが危険なエリアなのか、だとしたらどこに行けばそこから脱出できるかをいつも把握しています。身のまわりで何が起こっているのかに関する強い自覚をもち、何かが起こったときに対応できる余力をもっておくのが備えになります。