ノルド・ストリーム爆破、ウクライナ人ダイバーを関与の疑いで拘束 ポーランド警察

画像提供, Danish Defence handout

画像説明, デンマーク国防当局が撮影した、ノルド・ストリームからガスが漏れ出した様子とされる映像の静止画。2022年9月、バルト海を横断するノルド・ストリームのパイプライン4本のうち3本が、デンマーク領ボーンホルム島近くで、爆破により損傷した

この男性は熟練のダイバーで、「ウォロディミル・Z」という呼び名がつけられている。ドイツ検察によると、ポーランド・ワルシャワ近郊の町で30日未明、逮捕状に基づき身柄を拘束された。

2022年2月にロシアがウクライナへの全面侵攻を開始してから数カ月後、バルト海底を経由してロシア産天然ガスをドイツへ送る「ノルド・ストリーム1」と「ノルド・ストリーム2」のパイプライン4本のうち3本が爆破された。

この爆破事件は長らく謎に包まれてきた。犯行を認めた者はおらず、ウクライナも関与を否定している。西側諸国はロシアに疑いの目を向け、ロシア政府はアメリカとイギリスを非難した。

この爆発により、欧州諸国は重要な天然ガスの供給源が断たれた。各国指導者たちは、ウクライナ侵攻をきっかけとしたエネルギー危機に直面することとなった。

当時、ノルド・ストリーム2は未稼働だったが、ノルド・ストリーム1の2本のパイプラインは、ロシア沿岸からドイツ北東部まで約1200キロメートルにわたり、ガスを安定供給していた。

そして、2022年9月26日に、バルト海で複数の爆発が確認され、パイプライン4本のうち3本が破壊された。

爆発について捜査するドイツ検察は昨年8月、事件に関連して初めて逮捕状を発行した。「ウォロディミル・Z」容疑者については当時、ワルシャワの南東に位置するプルシュクフ在住のダイビング・インストラクターだと報じられていた。しかし、当局はこの男性を見つけられずにいた。

ドイツ検察は30日の声明で、ポーランド警察が拘束した容疑者について、2022年9月26日に起爆した「爆発物をノルド・ストリーム1とノルド・ストリーム2のガスパイプラインに設置したグループの一員」だったと説明。

この容疑者が「そのために必要な潜水作業に加わっていた」とした。さらに、「共謀して爆発を引き起こし、(中略)憲法を脅かす破壊工作を行い、(中略)建造物を破壊した」強い疑いがあると付け加えた。

ワルシャワ地方検察庁のピョートル・アントニ・スキバ報道官はBBCに対し、プルシュクフ出身の「ウォロディミル・Z」容疑者に対する手続きが開始されたと述べた。

「男性は現在、欧州逮捕状の執行に関する捜査を受けている」という。

弁護人は男性が30日未明に拘束されたことを認めたが、ウクライナでの戦争の影響で逮捕状は無効だとして、ドイツへの身柄引き渡しについて争う姿勢を示した。

「ノルド・ストリームのインフラに対する攻撃は、パイプラインの所有者の一つである(ロシアの国営天然ガス会社)ガスプロムに関わる問題だ。同社はウクライナでの軍事作戦に、直接資金提供している」と、ティモテウシュ・パプロツキ弁護士はロイター通信に語った。

こうした中、8月に拘束された「セルヒイ・K」という男性をめぐっては、現在イタリアで裁判手続きが進められている。

この男性は爆破事件で調整役を担ったとされる。ボローニャの裁判所は、ドイツへの身柄引き渡しを認めたが、弁護人がイタリア最高裁に不服を申し立てた。

検察によると、両容疑者は「アンドロメダ」という名のヨットでドイツ北東部のロストック港からデンマーク領ボーンホルム島近くのバルト海域へ航行した集団の一員だったとみられる。ヨットは仲介業者を通じて、偽造した身分証明書を使ってドイツの会社から事前にレンタルされたものだったという。

「ウォロディミル・Z」と同様に、「セルヒイ・K」も、「共謀して爆発を引き起こし、憲法を脅かす破壊工作を行った強い疑いがある」という。

ドイツの報道によると、ノルド・ストリーム爆破事件に関連して7人の容疑者が特定されているが、うち1人は事件後に死亡している。この集団には、キーウの民間ダイビングスクールの元メンバーも含まれていたとされる。

ドイツ、デンマーク、スウェーデンはそれぞれ捜査を開始したが、スウェーデンとデンマークの捜査は今年2月に容疑者を特定できないまま終了している。

現時点では、ウクライナやロシア、そのほかの国家がこの攻撃に関与したという証拠は確認されていない。

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