韓国、電気料金さらに値上げへ?…産業界に迫る“エネルギー危機”の現実(KOREA WAVE)
【08月23日 KOREA WAVE】韓国のイ・ジェミョン(李在明)政権が電気料金の引き上げを予告したことで、これまで不況打開策として電気料金の引き下げを求めてきた産業界の懸念が一層深まるものと見られている。国家の炭素排出削減目標を達成するには石炭発電の比率を減らさなければならず、その過程で発電単価の上昇は避けられないというのが理由だ。 目標値を考慮すると、電気料金の引き上げによる負担は相当大きくなると予測される。住宅用、一般用、産業用を問わず、幅広い分野で電気料金が引き上げられる可能性が高いためだ。多くの企業は政府の税収不足を考慮して、直接的な支援策の代わりに電気料金の引き下げを要望してきたが、それを期待するのは難しくなった。 ◇ 過去3年で75%上昇した産業用電気料金、さらに上がる見通し イ・ジェミョン大統領は8月14日の首席補佐官会議で、再生可能エネルギーの普及拡大と国家温室効果ガス削減目標の達成の必要性を強調した。その際、「電気料金の引き上げは避けられない。国民に積極的に知らせて理解と同意を求めなければならない」と発言したと伝えられている。 産業用電気料金は過去3年間で約75%上昇し、現在は1kWhあたり185ウォン水準となっている。同じ期間に住宅用電気料金が37%の上昇にとどまったのに比べ、急激な伸びを示しており、すでに料金の逆転現象が起きている。それにもかかわらず、さらに値上げされる可能性が高いという見方が出ている。韓国の再生可能エネルギー発電単価は他の発電方式に比べて高く、発電量も不安定なため、送配電網の増強が必要であり、エネルギー貯蔵装置(ESS)などの補助インフラも求められるからである。 これまで電気料金の引き下げを求めてきた石油化学、バッテリー、鉄鋼などの産業界にとっては、大きな負担となる状況だ。これらの関連企業は、最近の関税やグローバル政策の不確実性、景気後退の流れ、中国発の供給過剰などにより事業の収益性が悪化している。産業競争力を補うためには安価な電力供給が必要だと訴えてきたが、むしろ値上げの可能性が高まっている。 麗水(ヨス)石油化学団地に入居している企業は、全羅南道と共に、電気料金を1kWhあたり182.7ウォンから今後2年間、160〜165ウォンに引き下げてほしいと産業通商資源省に要請した。これは、昨年の引き上げ幅(10.2%)分を元に戻してほしいという要求だ。石油化学産業の主要な生産費用のうち電力費は約3.2%を占めており、年間で数千億ウォン規模の電気料金を支出しているとされている。 石油化学は特に電力消費の割合が高い産業に分類される。エネルギー経済研究院の「2024年国内エネルギー消費」によると、業種別の電力消費比率で、機械類が34%で最も高く、石油化学は20.5%でそれに次ぐ第2位だった。 韓国政府は8月20日、石油化学業界の産業構造改編に向けた3大方針を発表し、21日には金融委員会が石油化学産業に対する金融支援の原則を協議するなど、構造調整を進めている。ただ、電気料金の引き下げをはじめとする業界からの要求については、企業ごとの事業再編計画が提出された後に対応を検討する。 また、電気自動車市場の低迷により不振に陥っているバッテリー業界も電気料金の負担を訴えている。米国や欧州などの海外では現地生産に伴う税制支援が提供されている一方で、韓国ではコスト競争力を確保する手段が不足しているという主張だ。現地生産促進のための税制支援に対して政府が消極的な姿勢を見せていることを受け、法人税控除分の直接還付制度と合わせて、電気自動車市場の低迷期間中の一時的な電気料金の減免を代案として望んでいる。 業界関係者は「原価における電気料金の割合が約20%と高いため、減免を受けられれば原価競争力が大きく向上する可能性がある」と述べた。 産業用電気料金が急速に上昇しているなか、代替手段として電力直接購入契約(PPA)を検討する企業も増えている。これは韓国電力公社を介さず、民間の再生可能エネルギー発電企業と電力消費企業が長期契約を結ぶ方式だ。最近の電気料金の急上昇を踏まえると、コスト管理の面でメリットが期待されている。 しかし、民間の供給業者が不足しており、中小企業にとっては必要な発電容量のハードルが高いため、現時点ではPPAの活性化は難しい状況だ。 (c)KOREA WAVE/AFPBB News
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