反トランプが旗印、マムダニNY市政始動へ-ホワイトハウスと火花

ニューヨーク市長選に勝利したゾーラン・マムダニ氏は今後、全米で「二番目に難しい仕事」とされる同市の舵取りに挑む。その行く手には、「最も難しい仕事」を担うトランプ大統領との対立という最大の試練が待ち構える。

  34歳のマムダニ氏は、生活費の負担軽減を掲げた公約を武器に、市長選で歴史的な勝利を収めた。民主社会主義者を名乗る同氏の得票率は50%を超え、無所属で出馬したクオモ前ニューヨーク州知事の約40%を大きく上回った。

  マムダニ氏が公約を実現するには連邦政府からの資金をさらに確保する必要がある。しかしトランプ大統領は、すでにマムダニ氏を「過激な共産主義者」と批判し、資金の流れを締め付ける考えを明言している。

  勝利演説でマムダニ氏は強気の姿勢を示した。「ドナルド・トランプに裏切られたこの国に、彼を打ち負かす方法を示せるのは、彼を生み出したこの街しかない」と支持者に訴えた。さらに「専制的な権力者を恐れさせる唯一の方法があるとすれば、それは彼を支えた権力の仕組みを根本から変えることだ」と続けた。

  共和党はすでにマムダニ氏を攻撃対象に定め、同氏の政策を「民主党を象徴するもの」として描き出している。来年の中間選挙を見据えた動きだ。ジョンソン下院議長は選挙結果を受けてXに投稿し、「マムダニ氏勝利の影響は全米に及ぶ。民主党が『急進的で大きな政府志向の社会主義政党』へと変貌したことを決定づけた」と述べた。

  しかし、ジョンソン氏が投稿した同じ夜、中道派の民主党候補が各地で相次いで勝利した。バージニア州知事選ではアビゲイル・スパンバーガー氏が、ニュージャージー州知事選ではマイキー・シェリル氏がそれぞれ当選を果たした。

関連記事:米バージニア・NJ州知事選で民主勝利、トランプ政権下の経済不安映す

  トランプ氏は、民主党への圧力手段として連邦資金を使う構えを見せている。

  過去最長となった今回の政府機関閉鎖が始まった直後、ホワイトハウスは「多様性と包括性の取り組みへの懸念」を理由に、ニューヨークのインフラ整備向け資金180億ドルの支出を停止した。

  マムダニ氏は、医療や食料支援をめぐる連邦資金だけでなく、不法移民の強制送還を推し進めるトランプ政権の政策でも対立が予想される。同氏は移民保護都市としての姿勢を強化し、移民の法的支援に1億6500万ドルを投じる方針を掲げている。

民主党内にも冷ややかな視線

  しかし、マムダニ氏が対峙しなければならないのは、共和党だけではない。民主党の主流派も依然として同氏に懐疑的な視線を向けている。州議会での4年間を除けば政治経験は乏しく、ラッパーとして活動していた経歴もあるマムダニ氏の急速な台頭は、党の古参勢力を驚かせている。

  ニューヨーク州のホークル知事は、市長選でマムダニ氏を支持するまでに数カ月を要した。党主流派の重鎮であるシューマー上院院内総務は、最後まで公に支持を表明しなかった。

  ウォール街の著名投資家ビル・アックマン氏やダン・ローブ氏らの財界人も、マムダニ氏の政策をニューヨーク経済への脅威とみなしていた。ブルームバーグ・ニュースの親会社ブルームバーグLPの創業者で元ニューヨーク市長のマイケル・ブルームバーグ氏は、予備選と本選の双方でクオモ氏を支持し、その陣営を支援する政治行動委員会(PAC)にも資金を拠出していた。

  ホーム・デポ共同創業者ケン・ラングーン氏は選挙前、マムダニ氏の勝利の可能性に触れ、「ニューヨークは歴史的な過ちを犯そうとしている」と語っていた。

  しかし、ウォール街の一部はすでに新たな現実に適応し始めている。アックマン氏は選挙後、マムダニ氏に祝意を伝え、「私にできることがあれば教えてほしい」と声をかけた。

  マムダニ氏は、就任後ただちに公約の実現に取り組むと誓っている。家賃の引き上げ凍結やバスの無料化など、掲げた政策は多岐にわたる。こうした公約を果たせなければ、勝利の熱気が冷めた後、進歩派支持層を失望させるリスクもある。

  アポロ・グローバル・マネジメントのジム・ゼルター社長は「選挙は終わった。あとは約束をどう実行するかだ」と指摘。「企業も買収した日ではなく、成果を上げた日にこそ祝うものだ。マムダニ氏も市をまとめ、現実に取り組む姿勢を示す必要がある」と述べた。

原題:Mamdani’s ‘Trump-Proofing NYC’ Drive Sets Up White House Fight(抜粋)

— 取材協力 Nacha Cattan and Katia Porzecanski

関連記事: