「元祖スパイ防止法推進」旧統一教会系シンポに維新、参政議員 関係断絶で自民の姿はなし
昭和60年に廃案になったスパイ防止法案を推進した世界平和統一家庭連合(旧統一教会)系の政治団体、国際勝共連合などが4日、制定促進シンポジウムを東京都内で開き、約300人が参加した。日本維新の会の石平、参政党の松田学の両参院議員が出席した。岸田文雄首相時代に旧統一教会との関係断絶を宣言した自民党の国会議員の姿はなく、動員力も40年前より激減し、教団排除が運動に影響している形だ。
「来年の通常国会で成立を」
スパイ防止法を巡っては、自民と維新の連立政権合意書に盛り込まれ、高市早苗首相が制定に意欲を示している。国民民主、参政の両党はそれぞれ似た趣旨の法案を国会に提出した。旧統一教会系としては、推進の「元祖」をアピールしたいとみられる。
シンポでは、実行委員長の若泉征三元民主党衆院議員が「私は53年前からスパイ防止法の活動をしている。チャンス到来なので頑張ろう」とあいさつ。
松田氏は、参政の法案について「基本的人権や報道の自由に配慮するという規定を盛り込み、公正な機関がチェックする」と説明した。
石平氏は「私自身としても、維新の一員としても制定に死力を尽くしたい。中国という強大な脅威に対抗するためにもスパイ防止法が必要。来年の通常国会で絶対やらなければならない」と訴えた。
政治団体「NHKから国民を守る党」の浜田聡前参院議員は「旧統一教会バッシングの中、現職の国会議員が来たのは大きい」と述べた。
参加者はスパイ防止法制定や対外情報機関創設などを国会に求める要望書を採択し、石平氏に手渡した。
かつては岸元首相ら参加
スパイ防止法は元々、共産主義に反対する旧統一教会が制定を推進し、昭和54年に勝共連合が事務局となって、保守系の学者や文化人を発起人として「スパイ防止法制定促進国民会議」が発足した。
55年に陸上自衛隊の陸将補がソ連に情報を流したとして逮捕されたものの、自衛隊法の守秘義務違反で「懲役1年」の判決を受けただけにとどまったことから、制定の機運が高まった。59年には、やはり勝共連合が事務局となって「スパイ防止のための法律制定促進議員・有識者懇談会」が発足し、政界を引退した岸信介元首相が会長に就任した。
自民は60年、「国家秘密に係るスパイ行為等の防止に関する法律案」を議員立法で提出。外交・防衛上の国家秘密を外国に漏らした場合、最高刑を死刑とした。
統一教会問題が運動に影響
この当時、制定を求める集会には最高で4千人が集まり、参加者は旧統一教会とは無関係の保守系市民のほうが多かったという。自民や民社党の国会議員も数多く出席していた。
当時の中曽根康弘首相は成立に意欲を見せたものの、社会党や共産党などが「国民の権利を制限する」などと猛反対。実質審議に入らないまま廃案となった。
61年、中曽根首相は再提出に意欲を示し、自民の特別委員会が最高刑を無期懲役に引き下げるなどした修正案をまとめた。だが、その後は再提出されず、岸氏の死去や中曽根内閣の退陣で制定の機運はしぼんでいた。
運動関係者は「当時と違い、事務局を担当する旧統一教会系が自民から関係断絶されたため、国民運動として盛り上がりを見せていない。教団排除の影響が安全保障に及んでいる」と話している。(渡辺浩)