【衆院選2026・大分3区】苦境の前外相 流れる公明票…中道の新人候補に追い風

 3カ月前まで政権中枢にいた前外相を、保守系の新人3人が苦しめている。

 「岩屋毅に勝つために立候補した」。1月27日の公示日。無所属の平野雨龍(32)は大分県中津市での第一声で、自民党前職の岩屋毅(68)を名指しで挑発した。昨年7月の参院選東京選挙区で、交流サイト(SNS)で対中強硬姿勢を訴えて旋風を巻き起こし、23万票を獲得した。同12月に立候補を表明。「媚中(びちゅう)派」などとSNSで「炎上」が続く岩屋の落選が狙いだ。

 「父がつくったモンスターを退治するのは私しかいない」。日本保守党の岩永京子(64)も激しい言葉で牙をむいた。岩屋を長らく支えた後援会長の長女。主張はやはり「媚中」批判だ。テレビで著名な弁護士で、同党参院議員の北村晴男も繰り返し来援している。

 参政党の野中貴恵(41)は1日、中津市で「前外相批判の受け皿になりたい」と声を高めた。公示4日前に慌ただしく出馬会見。党の看板を前面に出し、保守層の取り込みを図る。

◇    ◇

 「『反高市』と言われるが、それは違う」。岩屋は1月31日、同県宇佐市の集会で力を込めた。首相の高市早苗を引き合いに攻撃する保守派への反論。公示直前から、演説会や街頭で必ず訴えているフレーズだ。

 2024年12月、外相として中国人の訪日観光ビザ(査証)緩和を表明して以降、批判がSNSで本格化した。デマや中傷が多く、岩屋は当初、相手にしていなかった。古参の支援企業がSNSの内容を気にし、岩屋のポスターを外すなどの「実害」が発生。方針を変えた。だが-。

 公示後のマスコミ各社の調査。中道改革連合の新人、小林華弥子(58)との接戦が報じられた。自民支持層の5割しか固めきれていないとの報道もあった。

 岩屋は24年の前回、立憲民主党から出た小林に2万7千票余りの差をつけた。「今回はかつてなく厳しい」と岩屋。「明らかに保守系新人3人の影響。支持層を切り崩されている」。関係者は焦りを募らす。

 苦境の要因は他にもある。中道の結党で、陣営が「1万3千」とみる公明党票の大半が小林に流れる恐れが出てきた。前回約1万票を獲得した共産党の候補が今回は出馬しないことも、小林に追い風となる。

 終盤戦。岩屋の陣営は「自民公認」をアピールし、高支持率を誇る高市の人気を取り込む戦略を描く。だが、岩屋は高市と党内で政治姿勢が対極に位置する前首相石破茂の側近。高市とは距離がある。

 1月30日に大分1区入りした高市。大分市の野外広場は聴衆であふれた。自民県連関係者によると、3区への来援も打診した。大分市から岩屋の地元の同県別府市までは車で20分。それでも高市は素通りし、福岡県内の遊説に向かった。

 「張り付いてどぶ板に徹するしかない」と陣営幹部。1日夜には陣営が別府市で緊急会合を開いた。「危機感がばねになり、支援者の目の色が変わってきた」。幹部は土壇場の引き締めに期待する。当選10回のベテランに試練は続く。

◇    ◇

 保守系新人3人が岩屋の票を奪えば奪うほど、リベラル色のある小林が抜け出す皮肉な構図。小林陣営によると、立民と公明の共闘もスムーズだ。「公明の支援者は細かくて速い。思った以上に動いてくれる」。地元の立民関係者は喜ぶ。

 「この選挙は首相の人気投票でも誰かの落選運動でもない。日本の行く先を決める選挙だ」。1月31日、別府市内で小林は訴えた。「向こうの争いは放っておいていい」。陣営幹部は手応えをかみしめた。

=敬称略

(中野剛史、森亮輔、野村創)

■立候補者(届け出順) 野中 貴恵 41 参新 岩屋  毅 68 自前 小林華弥子 58 中新 平野 雨龍 32 無新

岩永 京子 64 保新

関連記事: