【日本市況】株が続伸、米CPIで景気懸念後退-円は147円台に上昇

13日の日本市場では債券が下落。日本銀行の植田和男総裁が金融政策の正常化に前向きな発言をしたことで、利上げ観測が強まった。為替は円が対ドルで147円台後半に上昇し、株式は指数が前日終値付近で終えた。

  植田総裁は13日、参院財政金融委員会で答弁し、賃金の上昇率は強い姿が続いているとした上で、「今後、実質賃金あるいは消費についてはもう少し良い姿が見込まれる」と語った。人手不足の強まりに伴って賃金・物価は上がりにくいという慣行も変化しており、この継続が2%の物価目標の持続的・安定的な実現に重要だとの認識も示した。

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  岡三証券の長谷川直也チーフ債券ストラテジストは、植田総裁の発言について「正常化に向かっている内容の発信を続けている」と述べた。債券は割安感もあって現物が買われていたが、「投資家が安心して買っていける状況ではない」と指摘した。

国内債券・為替・株式の動き-午後3時半過ぎ
  • 長期国債先物6月物の終値は前日比24銭安の137円75銭
  • 新発10年債利回りは2ベーシスポイント高い1.54%-午後3時時点
  • 円は対ドルでニューヨーク終値比0.4%高の147円62銭
  • 東証株価指数(TOPIX)の終値は前日比0.1%高の2698.36
  • 日経平均株価は0.1%安の3万6790円03銭

債券

   債券は下落。植田日銀総裁の発言を受けて先物を中心に売りが強まった。

  SMBC日興証券の田未来シニア金利ストラテジストは、植田総裁の発言に目新しいものはなく、今の相場の地合いが弱いことに尽きると指摘。日本国債は売り優勢のトレンドが続いており、総裁の前向きな発言がヘッドラインとして流れると、アルゴリズムなどが反応してしまうと話した。

  午前は12日の20年国債入札を通過したことで安心感が広がり、超長期債を中心に買われていた。岡三証の長谷川氏は、春闘の第1回回答集計結果を14日に控えている上、年度末も越えておらず、「買いが鈍ると相場は重くなる」と語った。

新発国債利回り(午後3時時点)

  2年債 5年債 10年債 20年債 30年債 40年債   0.855% 1.150% 1.540% 2.270% 2.590% 2.895% 前日比 +1.0bp +2.0bp +2.0bp +1.5bp +0.5bp 横ばい

為替

  円は1ドル=147円台後半で推移。トランプ米政権の関税政策を巡る懸念がドルの重しになった。

  関西みらい銀行の石田武ストラテジストは、植田日銀総裁の発言について「オントラックであれば利上げ継続ということを改めて確認」と指摘し、影響はあまりなかったと述べた。米消費者物価指数(CPI)が予想を下回り、米株価指数先物が時間外取引で下げていることから、「センチメントが改善したわけではなく、ドルの上値は重い」と言う。

  あおぞら銀行の諸我晃チーフマーケットストラテジストは、「日経平均が3万7000円を割り込んだことでリスクオフ的な円買いが強まった」との見方を示した。

株式

  株式はTOPIXが小幅高。米CPIで関税の悪影響は広がっていないとの見方が出て大幅高となった後、植田日銀総裁の発言を受けて為替相場が円高に振れたことから、急速に上げ幅を縮めた。日経平均は下落に転じて終えた。

  T&Dアセットマネジメントの浪岡宏チーフ・ストラテジストは、中国株や米ナスダックの先物が下がり、グローバルにリスクオフの雰囲気があったと指摘。年金勢によるリバランス売りがあった可能性にも言及した。

  東海東京インテリジェンス・ラボの池本卓麻マーケットアナリストは、ドル・円相場が企業の想定レートで多い149円より円高に振れており、「株の上値が重い展開が続く」との見方を示した。

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