AIをよく使う人はナルシシズムやサイコパシーなど「ダークな性格特性」を持っている傾向が強いことが判明

サイエンス

近年は教育分野や仕事、エンターテインメント分野におけるAIの利用が注目を集めています。合計1400万件を超えるウェブサイト訪問データを分析した研究では、AIを頻繁に利用する人は自己愛症(ナルシシズム)権謀術数主義(マキャベリズム)精神病質(サイコパシー)といった性格特性である「ダークトライアド」を持つ傾向が強いことが判明しました。

Evaluating Artificial Intelligence Use and Its Psychological Correlates via Months of Web-Browsing Data | Cyberpsychology, Behavior, and Social Networking

https://www.liebertpub.com/doi/10.1177/21522715251379987

Most people rarely use AI, and dark personality traits predict who uses it more https://www.psypost.org/most-people-rarely-use-ai-and-dark-personality-traits-predict-who-uses-it-more/

被験者に対してAIの利用状況やAIへの見解について尋ねた研究は数多く行われてきましたが、自己申告による使用状況の報告は信頼性に欠けることが多く、特に新しいテクノロジーに関しては誤った判断や記憶の間違いが頻繁に発生するとのこと。そこで、カリフォルニア大学デービス校の博士課程に在籍するエミリー・マッキンリー氏らの研究チームは、人々のウェブ閲覧履歴を使ってAIの使用状況を客観的に測定する研究を行いました。

マッキンリー氏は、「ChatGPTのようなツールに対する懸念や期待が広がっているにもかかわらず、実際の利用パターンに関する基本的な理解はほとんどありませんでした。私たちはAIの利用頻度だけでなく、AIを受け入れた人々の心理的プロファイルや、AIが彼らのより広範なデジタル行動にどのように統合されているかを調べて、実際に何が起こっているのかを測定したいと考えました」と述べています。

今回の研究では、「2つの大学に在籍する499人の大学生から収集したデータ」と「一般市民455人から収集したデータ」がそれぞれ用いられました。いずれの調査でも、被験者は最大90日間のウェブ閲覧履歴を共有しましたが、必要なデータのエクスポートにはGoogle Chromeが必要だったため、被験者はChromeユーザーに限定されたとのこと。また、被験者は性格特性やAIへの態度、人口統計学的特徴を測定するアンケートにも回答しました。 研究チームはChatGPTやMicrosoft Copilotといった著名なAIウェブサイトのリストを用いて、どのブラウザ訪問がAIに関連したものかを特定しました。その他のウェブサイトについても、大規模言語モデルを用いたコンテンツ分類システムを用いてAI関連の訪問かどうかを判断し、「AI関連ウェブサイトへの訪問が全体の閲覧数に占める割合」「AIの使用前後でどのようなウェブサイトを訪問したか」「AIの使用と関連する心理的特定」について分析しました。

分析の結果、学生の被験者ではウェブサイト閲覧全体に占めるAI関連ウェブサイトへのアクセスが、わずか1%にとどまっていることが判明。また、ほとんどの被験者はAI関連のウェブサイトを訪問しておらず、少数の被験者がトラフィックの大部分を占めていたとのことです。最も多く訪問されたAI関連ウェブサイトはChatGPTで、AI関連訪問の85%を占めていました。マッキンリー氏は、「新しい技術のアーリーアダプターになることが多い学生たちでさえ、AIの使用頻度が低いことに驚かされました」と述べています。 また、AIをより頻繁に利用している学生は、ナルシシズムやサイコパシーに関連する性格特性のスコアがわずかに高く、AI全般に対してより肯定的な態度を示す傾向がみられました。なお、収入や性別といった人口統計学的な特性は、AIの利用と弱い関連性がみられましたが、年齢や民族性といった項目は有意な関連性がありませんでした。 一般市民のサンプルではさらにAIの利用率が低く、ウェブサイト訪問全体に占めるAI関連ウェブサイトの割合はわずか0.44%にとどまりました。このグループでは性格特性とAIの使用に有意な相関関係がみられなかったものの、マキャベリズムとAIブラウジングの間には緩やかな関係がみられたとのことです。 さらに研究チームは、ウェブサイト閲覧の全体の4%以上をAI関連が占めるユーザーに焦点を当てた分析も行いました。学生の被験者においては、これらのユーザーはマキャベリズム、ナルシシズム、サイコパシーの指標において他の学生よりはるかに高いスコアを示しました。一般市民ではこれらのパターンがそれほど明確ではありませんでしたが、それはAIの利用頻度が全体的に低く、有意な差異を検出する能力が低かったためと考えられます。 マッキンリー氏は、「興味深いことに、AIをより多く使用する人は嫌な性格特性、特にマキャベリズムやナルシシズム、サイコパシーのスコアが高くなる傾向があり、これらのパターンは学生の間でより強く表れています」と述べました。

また、被験者がAI関連ウェブサイトを訪問する前後でどのようなウェブサイトを訪れているのかを調べた結果、AI使用前は「検索エンジン」「ログインページ」などが多かった一方、AI使用後は「教育やコンピューター、専門業務に関連するウェブサイト」への訪問が多い傾向が確認されました。これは、AIツールがワークフローの一部として、特に学術的または仕事関連の文脈で頻繁に使われていることを示しています。 もうひとつの重要な発見だと指摘されているのが、AIの利用に関する自己申告と実態の違いです。一般市民の被験者には、実際のウェブサイト閲覧履歴だけでなく、「自分がどれくらいの頻度でAIを使用していると思うか」についても尋ねられました。この結果と実際の利用データを分析したところ、両者の相関は中程度にとどまり、自己申告だけではAIの利用状況を正しく把握できないことが示唆されました。 今回の研究はあくまでウェブベースの行動に基づいたもので、モバイルアプリなどを通じたAI利用については含まれていません。また、焦点が当てられたのは性格特性や基本的な人口統計学的特徴にとどまり、感情的な幸福感やモチベーション、社会環境といった要因については検討されていないという限界もあります。 マッキンリー氏は、「今回の研究は数カ月におよぶ実際の閲覧データを用いて、自然な環境においてAIの利用状況を客観的に定量化する、初めての試みのひとつです。AIは現在、私たちの文化的な会話の多くを支配していますが、データはほとんどの人が依然としてAIを控えめにしか使用していないことを示唆しています」と述べました。

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