「刑事責任問えない」無罪判決に泣き崩れたのは被告「おかしい。2人の命を奪っているんですよ」北広島放火殺人(STVニュース北海道)

北広島市で2022年9月、生活困窮者向けのアパートに火をつけ、男女2人を死亡させたとして殺人などの罪に問われていた男性の裁判員裁判で、札幌地裁は2025年9月17日、男性に無罪判決を言い渡しました。 殺人と放火の罪に問われていたのは、荻野正美被告70歳です。 荻野被告は2022年9月、北広島市の生活困窮者向けのアパートの自室に火をつけ、管理人の男性と入居していた女性を殺害したとして起訴されていました。 裁判では、荻野被告に刑事責任能力があったかどうかが争点となっていました。 検察は論告で「精神疾患の影響はあったものの、最終的な意思決定の自由は残っていた」と指摘し、懲役30年を求刑。 これに対し弁護側は、「犯行当時、幻覚・妄想などの激しい症状の圧倒的影響により心神喪失状態だった」として無罪を主張していました。

札幌地裁は9月17日の判決で、「幻覚や妄想に起因するという発端が異常というほかない」として、責任能力があったことの根拠とはできないと指摘。 被害者を殺害するという目的に対して、被害者の部屋だけでなく施設全体に火をつけたことや、放火直後に「逃げろ」と叫ぶなど、目的に照らして不合理な行動をしていると判断しました。 さらに荻野被告に対して、他の入居者が「周りの状況を気遣う人」「とてもきさくな人で、仕事はまじめにこなしている」などと発言していることからも、急性一過性精神病性障害の激しい症状の圧倒的影響により、犯行を実施する以外の選択肢が考えられなかったとしています。 そのため、犯行当時は善悪を判断する能力や、自身をコントロールする能力が失われていた。心神耗弱とは言えず、心神喪失の疑いが残る。心神喪失者の行為として罪にならないとして、無罪を言い渡しました。

判決を言い渡された直後、「おかしい、2人の命を奪っているんですよ」と泣き崩れた荻野被告。法廷内はどよめきに包まれました。 判決を受けて弁護側は「刑事責任能力があるかどうかというのは専門的な内容で、裁判員が真摯に向き合って検討いただき判断していただいたことに敬意を示したい」とコメント。 札幌地検は「検察官の主張が受け入れられなかったことは残念である。判決内容を精査し、上級庁と協議の上、適切に対応したい」とコメントしています。

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