「目が痛くて数秒も見ていられない」福島県の山を覆う“9万6000枚”の太陽光パネルに地元住民が悲鳴(週刊SPA!)
福島県と山形県に連なる大火山帯の吾妻連峰。福島市の市街地から連峰の一部である先達山を見ると、山肌が削られ、60haの敷地にまるで蛇のウロコのように約9万6000枚ものソーラーパネルが張り巡らされていた。 「山が傷ついているのを見た瞬間、心が折れました」 そう語るのは、市民団体「吾妻山の景観と自然環境を守る会」代表・矢吹武さん。’24年から県や市に対し、パネルの建設工事の停止を求める要望書や、反対署名を提出し続けている。しかし、状況は何も変わらない。
「山は地元のシンボルです。東日本大震災で多くを失ったときも、この景色は心の支えでした。雪が積もるとうさぎの形が浮かび上がる、ふるさとの象徴なんです」 景観破壊だけが問題ではない。伐採された地域がツキノワグマの生息地とも言われており、行き場を失ったクマが街に下りているという。 因果関係は定かではないが、実際に福島市内ではクマの目撃件数が例年の2倍に増えた。さらに、最近では“光害”という新たな問題も発生している。 「パネルに太陽光が反射して、太陽が2つあるみたいに眩しい。目が痛くて数秒も見ていられない」(地元住民) 実際、記者も時間帯と角度によって相当な眩しさを感じた。ハンドルを握る手に、思わず力が入った。
先達山のメガソーラー事業を調査し続けている「先達山を注視する会」代表の松谷基和さんは、事業者Amp社と行政の根深い闇を指摘する。 「事業者が林地開発許可を取るために行政に提示した景観予測より、大きく範囲を超えて山林が切り開かれている。緑化計画も失敗。環境への影響を過小に説明していたのではないかと言われています」 松谷さんが県の担当課に許可の経緯を訪ねても、「詳しいことは事業者に聞いてください」とたらい回しにされた。 「福島市の木幡浩市長は、景観予測を『虚偽に近い』と批判しているのに、行政は住民から工事の違法性を指摘されても、お願いベースの指導止まり。なぜでしょうね……」 さらに、山の麓では、事業者による“謎の金銭提供”が行われたと松谷さんが明かす。 「Amp社は現場近くの複数の町内会で構成される“区”に、工事着工後の’22年に1800万円を超える資金提供をしています。事業者は、あくまでも地域貢献が目的だと言っていますが……」
Page 2
この件について、同じ地域に住む男性に話を聞いた。 「お金を受け取り、事業者と協定を結んだのは区長の独断です。もともと区自体が区長や役員の独裁状態で、はむかうと、人間関係に影響する。この地域にもメガソーラー反対派は多かったのに、上がお金をもらったので意見を言いづらくなってしまいました」 地元を混乱させた事業者は今、雲隠れしようとしている。松谷さんいわく、「山を破壊し、売って儲けるビジネスモデルがある」と話す。 「事業者は開発前に実体のない合同会社をつくる。そしてそこが融資を集め、開発許可を得て工事を進めていく。最終的には売電収益権や発電所を別会社に売却することで巨額の利益を得る。これは短期間で儲けて逃げる、金融の手法です。再エネの名のもとに、山が投資商品と化し、破壊されているのです」 木幡市長は、’23年に「ノーモア メガソーラー宣言」を行った。しかし、すでに壊されてしまった先達山にはどう向き合っていくのか。先達山の深い傷は、今もじゅくじゅくと膿んでいる。 取材・文・撮影/週刊SPA!編集部 ―[[メガソーラーが壊す日本]の惨状]―
日刊SPA!