《直筆遺書を入手》「死にたいと願う言葉が口を突く」「生きてきた中で最悪の1年」茨城県知事・大井川和彦(60)自死職員の遺族が“県政最大の闇”を告白(文春オンライン)
「昨年の誕生日、LINEを送ったら〈上が最悪だから辞めたい〉と返信が来たんです。それまで仕事の愚痴なんて聞いたことがなかったのに、あの副知事の下で働くようになってから、弱音を吐くようになった」 【画像】「あの副知事の下で仕事するのは限界」桜木さんが遺した直筆遺書 後悔を滲ませながら語ったのは、茨城県の飯塚博之副知事(62)の秘書を務め、昨年10月20日に自ら命を絶った桜木拓也さん(仮名、享年41)の遺族、AさんとBさん。桜木さんは亡くなる5日前、飯塚氏からのパワハラに悩んでいたことを明かす遺書を残していた。 ◆◆◆
県政担当記者の解説。 「桜木氏の自殺後、県は遺族の要望を受け、昨年11月に極秘で第三者委員会を設置。今年2月、最終的に、飯塚氏と秘書課長を最も軽い処分の厳重注意とし、パワハラはなかったと結論づけました」 「週刊文春」はこれまで飯塚氏の任命権者の大井川和彦知事(61)について、 職員や県関係者へのパワハラ 、 公用車の私的利用 、 県の最高意思決定機関での議事録を残さない など「独裁」ともいえる県政の実態を報じてきた。桜木さんが秘書として仕えた飯塚氏は、その大井川知事の側近中の側近として知られる。 定年退職後、新設された県庁改革推進官を経て2023年末に副知事になった。桜木さんは22年4月から秘書課に配属となり、小野寺俊前副知事時代から副知事の秘書を務めていた。
桜木さんの人柄について、年が近いBさんが懐かしみながら語る。 「拓也は3人兄弟の長男。弟たちからも信頼されていました。たまの休みに会えば、ご飯を奢ってあげたり、家族旅行ではいろいろな段取りをしたり。あとは凝り性なところもあって、ドラクエウォークとかポケモンGOとか、地域限定のものが出ると、『行かなきゃいけない』みたいなことをよく言っていた」 Aさんも続ける。 「周囲の人を傷つけることは言わないような、気が遣える優しくて真面目な性格でした。 地元の公立高校から筑波大学に進学。県庁での秘書の仕事も、(前副知事の)小野寺さんのことは『ボス』と呼んでいて、『あの人のために頑張ろう』と仕事に打ち込んでいた。だから、遺書を読んだときに驚いたんです。あんな風に人のことを言うなんて」
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遺族の2人が桜木さんの遺書を目にしたのは、彼が自ら命を絶った翌日のことだ。遺書には、飯塚氏の下で働くことへの絶望感や、パワハラを訴える内容が連なる。 〈今年が40年以上生きてきた中で最悪の1年だったことは間違いない もともと沈む一方だった中で、アレ(飯塚氏)の就任以降、さらに深く、激しく沈み込んでいく日々 これほど人を憎む 恨む 呪うことがあるだろうか 言い過ぎではなく、本当に毎日、目覚めればすぐにアレの死を望む言葉、あるいは死にたいと願う言葉が口を突くようになった〉 遺書を読んだ瞬間のことをBさんが振り返る。 「『こんなに副知事のことを恨んでいたのか』と驚きました。拓也も仕事ができない部分はあったのかもしれない。 だけど、自死を選ぶほど追い込まれた人が、遺書の8〜9割で副知事のパワハラや理不尽を訴えていた。こんなことになっていたのかというショックもありましたし、真相が知りたいとも思うようになった」
桜木さんの葬儀前には大井川知事も訪れ、遺体と面会し、遺族から手渡された遺書に目を通したという。知事は「第三者委員会で調査をします」とあくまで事務的な対応に終始した。 その後、県は昨年11月に死因の調査を行う第三者委員会を設置。だが、同委が出した結論は前述の通り、「パワハラはなかった」というものだった。そして、遺族が最も首を傾げるのは、その処分内容だ。
「飯塚氏の処分は、〈死亡の原因が職場環境にあると遺族から疑念を持たれる状況を招いた結果責任〉として最も軽い『厳重注意』でした。そして、所属長として〈疑念を持たれる所属管理を行なった〉として、秘書課長Oさんも厳重注意処分となった。 でも、課長のOさんは拓也が亡くなる前から、丁寧に話を聞いてくれており、その後についても真摯に対応してくれた。感謝しているくらいです。そんなOさんと飯塚氏が同じ処分なんて、『本当にしっかり調査をしているのか』と疑問を持たざるを得ませんでした」(Bさん)
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飯塚氏の任期は27年12月まで。8月21日には、大井川氏の3期目当選が確実視される県知事選が告示された。現在の県政を遺族はどう見ているのか。 「葬儀では、飯塚氏の弔問は断りました。しかし、拓也が亡くなって10カ月が経ち、新盆を迎えようというのに、飯塚氏からは手紙はおろか、秘書課を通じた伝言もない。いま彼はどういう心境で副知事の椅子に座っているのでしょうか。その思いが知りたいです」(Aさん) Bさんも無念を滲ませながら続ける。 「葬儀は家族葬と告知していたのに、弔問には数十人の県職員が来てくれた。そんな彼が、副知事を呪う言葉をあれだけ残して、命を絶った。遺族としては、拓也が残した遺書がすべてであり、許すことはできません」 時折、声を詰まらせながら取材に応じた2人。県知事選を前に大井川氏が成果を強調する裏で、泣き寝入りを強いられる遺族がいる。 ◆◆◆ 現在配信中の「 週刊文春 電子版 」では、遺族の150分告白ロングバージョンを公開している。
「週刊文春」編集部/週刊文春 2025年8月14日・21日号