日本の企業が世界初の快挙。宇宙ごみを捕獲して除去するプロジェクト

Image: アストロスケール

日々、宇宙の研究が進んでいく一方、宇宙ごみ(スペースデブリ)の問題も深刻化しています。

増え続ける宇宙ごみ問題解決のため、ロケットの残骸をひとつずつ処理することを試みる日本の企業「アストロスケール」が、米Gizmodo主催の「ギズモード・サイエンスフェア」2025年の受賞者に選出されました。

宇宙ごみとランデブー

東京都墨田区に本社を置くアストロスケールは、軌道上にある宇宙ごみの除去や衛星サービスを専門とする企業です。同社は、宇宙ごみを捕獲して地球大気圏で燃え尽きさせることを目的とした衛星を開発しました。

この衛星は、2025年2月より開始した商業デブリ除去実証衛星「ADRAS-J(アドラスジェイ、Active Debris Removal by Astroscale-Japan)」のミッションとして、ロケット・ラボ社のエレクトロンロケットに搭載され打ち上げられました。このミッションの目的は、役目を終えた宇宙機に接近し、観測・特性評価を行う能力を実証することです。

ターゲットは、2009年に打ち上げられた日本のH-2Aロケットの上段。およそ15年にわたり軌道上を漂っている宇宙ごみで、長さ約11メートル、重量約3トンに及ぶ巨大な物体です。打ち上げから約3か月後、ADRAS-Jは観測対象のデブリから約15メートルの距離まで接近に成功しました。

世界初の快挙

これほどの至近距離での接近は前例がなく、アストロスケールは大規模なスペースデブリに接近した世界初の企業となりました。宇宙ごみは秒速7キロメートル(時速約2万5000キロメートル)、つまり弾丸より速い速度で飛行しているため、除去は簡単ではありません。

また、他のランデブーミッションと異なり、ターゲットとなったロケットの残骸には、GPSが搭載されていないため通信することはできませんでした。ADRAS-Jは、地上からの限られた観測データに頼って、廃棄された2段目を特定・接近しなければならなかったのです。そういった困難にもかかわらず、衛星は目標に接近し、周回飛行を行って上段の画像とデータを取得することに成功しました。

アストロスケール・ジャパンの主任技師である井上寿志氏は

プログラムの初期段階に候補リストがあり、その中から、遠すぎず、かつ地上からの観測データや挙動に関する情報をある程度持っている対象を選びました。

と、米Gizmodoにコメントしています。

衛星の寿命を延ばしてゴミを減らす

欧州宇宙機関(ESA)の最近の報告によると、現在、地球軌道上には数百万個の宇宙ごみが飛行しており、そのうち約120万個は直径1センチ(0.4インチ)以上である。これは、他の宇宙機と衝突すれば壊滅的な被害をもたらし得る大きさです。

井上氏は、

自動車産業を考えてみてください。最初のオーナーが使ったあと、中古として再利用されたり、修理されたりします。ですが宇宙では、一度使ったら捨ててしまう。それでは持続可能性に反します。

と語ります。

アストロスケールは、老朽化した宇宙機を物理的に除去するだけでなく、衛星の寿命を延ばすことでも、宇宙ごみの増加を抑えることに取り組んでいます。

衛星の点検、位置変更、燃料補給、その他の寿命延長サービスを可能にすることで、持続可能な地球周回軌道利用を切り開き、他の企業が追随し、各国政府が宇宙利用に関する規制を設定することを目指しています。

さらに、井上氏は以下のように語っています。

アストロスケールだけで世界の持続可能性を変えられるとは思っていませんが、こうしたサービス型のミッションを始動させ、顧客がこの考え方を支持してくれることを願っています。将来的には、持続可能な宇宙利用につながると期待しています。

今後のミッションは?

なおアストロスケールの次の衛星は、2027年に打ち上げ予定です。

実証ミッションとして機能したADRAS-Jで得たデータを用いて、次のミッションでは、実際にデブリと衛星を搭載したロケットの回転速度に合わせ、整列しドッキングを試みる予定です。ドッキングに成功すれば、衛星はロボットアームでロケットをつかみ、スラスターで軌道を下げ、大気圏突入の軌道へと解放します。その後、老朽化したロケットは大気圏で燃え尽き、軌道上のゴミがひとつ減ることになります。

井上氏は、

現在は設計段階にあります。やがてラボにハードウェアが届き、試験を開始し、来年には宇宙機の組み立ても始まるでしょう。

と今後の計画に期待しています。

Source: アストロスケール

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