中国製兵器、印パ衝突が再評価促す-信頼性巡る認識に変化の兆し

最近のインドとパキスタンの軍事衝突をきっかけに、中国製兵器に対する評価が高まっている。欧米の兵器より劣るとされてきた長年の認識に疑問が生じ、中国に警戒感を抱く国・地域の懸念を招いている。

  パキスタンは先週、インドの軍事攻撃に対する報復として、中国製戦闘機「殲-10C(J-10C)」でインド軍戦闘機5機を撃墜したと発表。撃墜した中には、フランス製戦闘機「ラファール」も含まれていたという。

  発表内容は確認されておらず、インド側もコメントしていないが、殲-10Cを製造する成都飛機工業の株価は急伸し、時価総額が大きく膨らんだ。

  中国共産党機関紙、人民日報系の新聞「環球時報」の編集長だった胡錫進氏は、パキスタンの発表が事実なら、台湾は「一段の脅威」を感じるはずだとSNSに投稿。台湾を自国の領土の一部と見なす中国政府は、「祖国統一」に向け武力行使も辞さないとしている。

  台湾国防安全研究院の舒孝煌アソシエートリサーチフェローは、台湾はパキスタンとインドの対立を注視していると指摘。「中国人民解放軍の空中戦闘能力は東アジアにおける米空軍の水準に近づいているか、これを上回っている可能性もあり、再評価が必要かもしれない」とし、米政府は台湾へのより高度なシステム売却を検討すべきだと述べた。

  実戦経験の少ない殲-10Cが今回の戦闘で成果を挙げたとされ、台湾海峡の哨戒任務に用いられる同機への懐疑的な見方は打ち消されつつあるとみられる。ただ、台湾空軍の主力で、長年にわたり各地で実戦を経験してきた「F16」などの米国製戦闘機と対戦した場合の性能については、まだ分かっていない。

  中国は世界4位の武器輸出国だが、買い入れているのは主にパキスタンなどの資金力が限られる途上国だ。トランプ米大統領の防衛費増額の呼びかけに欧州やアジアなどの主要国が耳を傾ける中で、今回の動きは中国製兵器の販売に追い風となり得る。

  武器購入は途上国にとっても重要な課題となっている。貿易不均衡の是正を求めるトランプ政権に配慮し、複数の途上国が米国製兵器の購入を検討。しかし、そうした国々の中には中国を主要貿易相手国とする国もあり、中国製兵器の導入をリスク分散の手段として考慮する可能性もある。

  ストックホルム国際平和研究所のデータに基づく推計によると、中国の武器輸出は増加傾向にあり、2020-24年の5年間の平均輸出額は2000-04年の3倍以上に増加した。中国政府と国有企業は武器輸出に関するデータを公表していない。

  専門家の間では、中国製兵器には不備が多く、初期コストが安く見えても、メンテナンス費用が安全保障予算を圧迫しかねないと長年指摘されてきた。

  ミャンマーは22年、中国製戦闘機の機体に亀裂や技術的な問題が発生したため、飛行停止を余儀なくされたと報じられた。バングラデシュは昨年、中国製軍事装備の品質について中国政府に抗議し、パキスタン海軍も中国製フリゲート艦「F-22P」で問題に見舞われた。

  中国国防省は、過去の兵器の不具合や最近の殲-10Cのパフォーマンスに関するコメント要請に応じなかった。中国政府は人民解放軍が世界の安定維持に貢献しているとしたほか、台湾問題の平和的解決を望んでいると一貫して主張している。

  マサチューセッツ工科大学(MIT)安全保障研究プログラムのディレクターを務めるテイラー・フレイヴェル氏は今回の殲-10Cの成果について、設計自体は新しいものではなく、中国軍にとって「画期的な転換点」と捉えるのは誤りだとしている。

  同氏は今年に入り世界中を驚かせた中国のスタートアップ企業、DeepSeek(ディープシーク)の人工知能(AI)チャットボットに触れ、それほどではないにしても、「重要な意味を持つ。中国のシステムが実戦でどのように機能するかについて、多くの知見が得られている」と語った。

原題:Chinese Weapons Gain Credibility After Pakistan-India Conflict(抜粋)

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