人類史上初めて太陽圏を脱出した探査機「ボイジャー1号」現在は247億kmの距離を時速6万kmで航行中(スペースチャンネル)
1977年、1機の探査機が地球を旅立ちました。その名は「ボイジャー1号」。打ち上げから47年、現在も宇宙の深淵を航行し続けるこの人工物は、人類の探究心の象徴として今もなお歴史を塗り替え続けています。
■ 歴史の幕開け:木星・土星探査のために誕生
ボイジャー1号が撮影した土星。土星最接近の4日後に530万kmの距離から撮影された。出典:NASAボイジャー1号は、1977年にアメリカ・NASAによって打ち上げられました。当初の任務は、木星・土星およびその衛星と環の詳細な観測でした。
- 1979年:木星に最接近。巨大な嵐「大赤斑」や衛星イオの火山活動など、多くの観測成果を収めました。
- 1980年:土星を通過し、その最大の衛星タイタンへも接近。分厚い大気を持つこの謎の天体の調査により、地球外生命の可能性に関する理解が深まりました。
この観測により、ボイジャー1号は惑星探査という第一の使命を果たし、第二の使命である「太陽系外縁部の調査」へと移行していきます。
■ 太陽圏の“境界線”を越えて:ヘリオポーズ突破
新モデル (バブル型)2012年時点で、バウショックが存在しないことは確認されている 出典:NASA太陽から吹き出す高温のプラズマ「太陽風」が届く範囲を「太陽圏(ヘリオスフィア)」と呼んでいます。地球を含む太陽系の惑星は、すべてこの“太陽のバブル”の内側に存在しているのです。ボイジャー1号は、2004年に太陽風の速度が急激に低下し、太陽圏の最外殻「ヘリオシース」に突入したと判断されました。
そして2012年、太陽から約121AU(約181億km)の地点で、ボイジャー1号は「ヘリオポーズ(太陽圏の最外縁)」を通過。これは人類が送り出した探査機として初めて、太陽圏を脱出し、星間空間へ突入した瞬間でした。
■ 現在のボイジャー1号はどこにいる?
オールトの雲 出典:NASA2025年現在、ボイジャー1号は太陽から約165AU(約247億km)の距離を、秒速約17km(時速6万km超)で航行中です。これは地球との通信に片道約23時間かかる距離にあり、今なお「地球から最も遠い人工物」として記録を更新し続けています。
現在、ボイジャー1号が目指す「オールトの雲」と呼ばれる領域(太陽系の重力圏の最果て)は、太陽から約1000〜10万AUの範囲にあると推定されています。その内縁に達するにはあと約300年、外縁を抜けるには約3万年と推定されています。つまり、ボイジャー1号が真に「太陽系を脱出した」と言えるのは、まだはるか先の未来の話となるのです。
さらに、約4万年後には、地球から17.6光年離れた恒星「グリーゼ445」の近くを通過すると予測されています。ボイジャー1号は天の川銀河を横切る長大な旅の途上にあるのです。
■ 長寿命の探査機を支える工夫とトラブル
ボイジャー1号 出典:NASAボイジャー1号には3基の原子力電池が搭載されており、発電能力は1977年当初の470Wから2025年現在では大きく低下しつつも稼働中です。節電のため観測装置の電源を順次停止するなどの措置がとられてきました。
近年のトラブルとしては、2023年に制御システムの不具合で意味不明な信号を送信し始めましたが、2024年5月に復旧。また、通信装置の一部が一時的にSバンドに切り替わる事態も発生しましたが、こちらも回復しました。
NASAの技術力と精神力の結晶が、限られた電力で長期運用を実現する丈夫な探査機である「ボイジャー1号」の偉業に繋がったと言えるでしょう、ボイジャー1号はいま、47年の時を超えて、地球から光速で23時間かかる場所で、静かに星々の中を旅しています。みなさんは、ボイジャー1号と地球との交信があと何年、そしてどれほどの長い距離まで続くと思いますか?ぜひコメントお待ちしています。
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