台湾人インフルエンサー、浅草寺で“おしり見せ”超ホットパンツ姿「#人前露出」が国内外で物議…それでも「公然わいせつ罪」には当たらない理由
年間延べ約3000万人もの参拝客が訪れる東京・浅草寺。その境内で撮影されたとみられる、台湾人女性インフルエンサーのSNS投稿が国内外で物議をかもしている。
Xでのフォロワー数が12万人を超えるこの女性は、際どい服装や自身の性生活を「セルフアダルトコンテンツ」として有料サイトで配信しているようで、浅草寺での写真も単純に観光を楽しむ様子を写したほほえましいものではない。
本文には「#露出」「#人前露出」「#羞恥任務」というハッシュタグが並び、尻が半分以上見えるホットパンツ姿でお堂の前に立つ女性の写真が添えられている。
この投稿が、神聖な場所での振る舞いとして、日本国内にとどまらず台湾でもメディアやSNS上で非難の的となった(当該投稿は現在削除されている)。
外国人の行為、日本の法律が適用される?
過度な露出行為については、通常、刑法で定める「公然わいせつ罪」(刑法174条)などに該当する可能性もあるはずだが、外国人観光客であっても該当しうるのか。
刑事事件に多く対応する中西辰憲弁護士は、「日本の刑法は、日本国内において罪を犯したすべての者に適用する(1条1項)とされているため、外国人による行為であっても、日本国内で行われている限り適用されます」と話す。
その上で「公然わいせつ罪」についても、「日本社会における健全な性的風俗を守る対象(保護法益)とするものですから、外国人の行為であっても、その行為が日本国内で許されるかが基準になると思います」と付け加える。
「公然わいせつ」該当する行為とは?
そもそも「公然わいせつ罪」に当たる行為とはどのようなものか。
中西弁護士は「その罪名の通り『公然とわいせつな行為をした』場合に成立します」として、次のように詳述する。
「まず『公然と』というのは、判例によれば、不特定または多数人の認識しうる状態のことで、実際に第三者に見られていなくても該当します(最高裁 昭和32年(1957年)5月22日決定)。
また、何が『わいせつな行為』に当たるかですが、判例によれば『徒(いたず)らに性慾(せいよく)を興奮又は刺激せしめ且(か)つ普通人の正常な性的羞恥心を害し善良な性的道義観念に反する』行為とされています(最高裁 昭和26年(1951年)5月10日判決)。念頭に置かれているのは公道での性行為や陰部の露出等だと考えられます。
今回のケースでは、浅草寺は不特定多数の人々が行き交う公共空間なので『公然と』には該当しますが、『わいせつな行為』に当たるかは個別的判断になります。露出の多い服でただ立っているだけなのか、性的なことを連想させる動きまでしているのかなど具体的な状況によっても異なると思います。
そして、この判断は社会通念によるところも大きく、時代によっても変化します。現在であれば、単に露出多めの服装で撮影をしただけの場合には、公然わいせつ罪にまでは該当しない可能性が高いと考えられますが、時代が変われば今後摘発される可能性もありうると思います」
『しり』の露出「軽犯罪法違反には十分に該当する」
では現在なら女性インフルエンサーの行為は法的に何も問題がないのかというと、そうではないと中西弁護士は首を振る。
「過度な露出は、公然わいせつ罪の他にも、軽犯罪法や各都道府県の迷惑行為防止条例に違反する可能性があります。
罪としては刑法犯である公然わいせつ罪が一番重いですが、軽犯罪法や迷惑行為防止条例でも違反者には罰則が科せられています」
たとえば、軽犯罪法では「公衆の目に触れるような場所で公衆に嫌悪の情を催させるような仕方でしり、ももその他身体の一部をみだりに露出した者」(1条20号)に対し、拘留または科料に処すると定めている。
「今回のケースでは、『しり』の露出ということで、軽犯罪法違反のレベルでは十分に該当する可能性があるでしょう」(中西弁護士)
また、女性が有料コンテンツとして配布している動画がわいせつと判断されるものであれば、わいせつ物頒布罪(刑法175条)にも問われる可能性があるという。
「過度な露出」見かけたら?
街中で過度な露出をしている人を見かけた際、特にそれが今回のように神聖な場所であれば、なおさら良い気分にはならないだろう。
こうした場合の対処法について、中西弁護士の答えは「速やかにその場を離れるべき」と明快だ。
「警察に通報する方法もありますが、『公然わいせつ罪』として通報できるハードルはそれなりに高く、露出が多い服を着ている人がいるというだけでは警察が取り合ってくれない可能性も高いです。
条例や軽犯罪法違反に当たる場合もありますが、その判断も状況によって異なり、警察の対応はケースバイケースです。どうしてもその場から離れられない事情があれば別ですが、自分からその場を離れることが、もっとも簡単かつ合理的な対応といえるでしょう」(中西弁護士)。
君子危うきに近寄らず。自らがトラブルに巻き込まれないよう行動することが肝要だろう。