「Gemini」はどれだけ電力を使うのか--グーグルが業界初のデータ公開(ZDNET Japan)

 人工知能(AI)の需要は急速に高まっており、それに伴って、AIを支えるインフラ――つまりデータセンターや電力を供給する発電所の整備も進んでいる。しかし、AIが実際にどれほどのエネルギーを消費しているのかについては、具体的なデータが不足しており、その環境への影響をめぐって懸念や議論が広がっていた。こうした中、Googleが新たなデータを公開し、状況に変化をもたらそうとしている。  Googleは業界で初めて、同社の対話型AI「Gemini」によるエネルギー使用量と炭素排出量の推定値を発表した。米国時間8月22日に公開された情報によれば、Geminiがテキストプロンプト1回に消費する平均エネルギーは0.24Wh、二酸化炭素(CO2)換算の排出量は0.03g、水の使用量は0.26mlとされている。これは、テレビを9秒未満視聴したときの環境負荷に相当するという。  ただし、これらはあくまで1回のプロンプトに対する平均的な数値である。Googleは、2025年3月時点でのGeminiの月間ユーザー数を約3億5000万人と推定しており、これは「ChatGPT」の推定ユーザー数のほぼ半分に当たる。そのため、特定のタイミングでの利用者数や、企業ユーザーの利用形態、あるいは複雑なプロンプトを送るパワーユーザーの存在を考慮すると、わずか数秒の負荷でも積み重なれば膨大な量になる可能性がある。  Googleはまた、Geminiアプリにおける排出量、エネルギー、水の使用量を追跡するための枠組みも公開した。その調査結果によれば、AIが消費する資源に関する多くの公的な推定値よりも、実際の数値は大幅に低いという。以下では、その詳細を見ていく。 業界初のレポート  Googleは2020年から、世界中のデータセンターにおける電力使用量の情報を公開しており、2008年以降の電力使用効率(PUE)に関する年次レポートも提供している。AIに関する生データは公開していないものの、AIのエネルギー消費に関する詳細なレポートを発表したのは、主要なテクノロジー企業の中で同社が初めてである。  2025年6月には、ChatGPTの利用が大量の資源や水を消費しているという懸念がソーシャルメディア上で広がった。これに対し、OpenAI 最高経営責任者(CEO)のSam Altman氏はブログで、ChatGPTのクエリー1回当たりの平均エネルギー消費量は約0.34Whであり、これはオーブンを1秒強使うか、高効率の電球を数分間点灯させるのと同程度だと述べた。また、1回のクエリーで消費される水の量は「ティースプーンの15分の1程度」とも付け加えたが、これらの主張を裏付ける具体的な方法論やデータは示されなかった。  一方、Metaのデータセンターが大量の水を消費しているという報道もあるが、Anthropicを含む他の主要なAI企業は、具体的な情報を一切公開していない。 予想よりも低い消費量  Googleによれば、一部のAIに関する資源消費の計算は「アクティブなマシンの消費量のみを対象としている」か、あるいはモデルの推論コストのみに焦点を当てているという。こうした計算方法では、AIシステムを効率的に動作させ、環境負荷を抑えるために重要な要素が見落とされてしまう。例えば、大規模な推論モデルは、小規模なモデルよりも多くの計算資源を必要とする。これに対し、Googleは「推測デコーディング」と呼ばれる手法を用いて効率化を図っている。この手法では、小規模なモデルが予測し、それを大規模なモデルが検証することで、大規模モデルが全ての処理を行うよりも少ないチップで多くのクエリーに対応できるようになる。  こうした背景から、Googleは独自の調査手法を開発し、従来の計算では見落とされがちな複数の要素を考慮に入れた。今回の調査では、モデルが実際に計算している際に使用されるエネルギーや水だけでなく、チップがどのように大規模に使われているかも追跡した。その結果、実際の使用量は「理論上の最大値よりもはるかに低い可能性がある」としている。  また、GoogleはAIを動かすTPUやGPU以外の消費エネルギーも監視し、ホストCPUやRAMも含めて評価した。これにより、AIクエリーに関与する全てのコンポーネントが考慮されるようになった。さらに、急増する利用に対応するため、計算していないときでも待機状態にある「アイドル状態のマシン」や、データセンターのオーバーヘッド、冷却システム、水の使用量といったAI以外のインフラも含めて評価している。  Googleは、こうした包括的な手法と、従来の「網羅的ではない」アプローチを比較した。従来の手法では、Geminiのテキストプロンプト1回当たりの平均エネルギー消費量は0.10Wh、CO2換算排出量は0.02g、水の使用量は0.12mlと推定されていた。しかしGoogleは、これらの数値はGeminiの環境負荷を「大幅」に過小評価しており、せいぜい「楽観的な推定」にすぎないと指摘している。  一方、Googleの手法による推定では、エネルギー消費量は0.24wh、CO2換算排出量は0.03g、水の使用量は0.26mlと、より高い数値が示された。Googleは、これが「AIの全体的なフットプリントに関する最も包括的な見解である」と述べている。  それでもGoogleはAIのエネルギー消費が過剰に誇張されていると主張している。  Googleの先進エネルギー研究所で責任者を務めるSavannah Goodman氏は、米ZDNETに共有された動画で、「エネルギー消費、炭素排出量、水の使用量は、一部の公的な推定値よりも実際にははるかに少なかった」と述べた。ただし、同氏は比較対象となる具体的な推定値については言及していない。  同社によれば、過去12カ月間において、Geminiアプリのテキストプロンプトに関するエネルギー消費量と炭素排出量は、それぞれ33倍、44倍の削減が達成されたという。これは、応答の質を向上させながら実現された成果である。ただし、これらのデータや主張は、第三者による検証を受けていないことも明記されている。

ZDNET Japan
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