NASAが冷戦時代の偵察機を利用、山火事が嵐を引き起こす現象の解明に期待

NASAがU2偵察機を改造して作った「空飛ぶ研究室」ER2=2023年/Carla Thomas/NASA

(CNN) 米航空宇宙局(NASA)が冷戦時代に開発されたU2偵察機を改造して、山火事が引き起こす嵐の研究に活用している。山火事の現場で「火災積乱雲」と呼ばれる火の雲が発生する気象現象については、まだほとんど解明が進んでいない。

U2を改造した「ER2」は、軍事装備の代わりに観測機材を装備した、いわば「空飛ぶ研究室」。山火事の熱によって発生した火災積乱雲は激しい雷雨を引き起こし、落雷や強風、場合によっては火災旋風を伴うこともある。

米海軍研究所のデービッド・ピーターソン氏はこの現象について、「一種の煙突のようなもので、雷雲の中へと押し上げられた火災の煙が、その垂直の柱を通って加速され、放出される」と解説する。同氏はNASAの火災積乱雲調査プロジェクト「INSPYRE」の主任研究員を務める。

「発生した煙の柱は温かい気泡となって雷雨を引き起こす。非常に高くて激しい積乱雲のようなものだが、そこに詰まっているのは煙だ。こうなると、火災がどんどん激しくなる」

ガルフストリーム5から見た火災積乱雲/Bernadett Weinzierl/NASA

火災積乱雲は予測できない状況で発生することから気象予報が難しい。最近になってようやく、こうした火災に起因する気象現象が自然の大気の壁を突破して、成層圏にまで到達できることが分かった。

「火山噴火のような状態で、煙が大気の非常に高い場所にまで押し上げられる。煙がそうした高高度に達すると、ジェット気流に乗って非常に高速で運ばれる」

ER2を使った観測は7月から始まり、米オレゴン州北部やカナダ西部の火災現場の上空を飛行した。

今月8日にカナダ西部で発生した山火事の上空を飛行したER2の航路/Flightaware

「NASAのINSPYREを通じ、何よりもまず、どのような条件でこうした嵐が発生するのかを解明する」とピーターソン氏。

NASAがER2を活用することにしたのは、高高度を飛行できる性能が理由だった。

「同機はいわば操縦可能な人工衛星のようなもの。気象現象の影響を受けない約2万メートルの高度で飛行し、山火事の上空を行き来しながら旋回できる」とピーターソン氏。「搭載された観測機器は全て、火災の煙柱のエネルギー測定に関係している。レーダーでは煙柱の大きさや高度、内部の空気の動きが分かる。雷も観測しているので雲の内部の電場も把握できる」

NASAは積乱雲の上空でER2を飛行させながら、同時にガルフストリーム5(G5)ジェット機を雲の中へ送り込んでいる。

「収集したデータを互いに提供するというアイデアだ。雲の中にいるG5は、雲を観測しているレーダーに情報を提供でき、それを上空の衛星が示すデータと関連付けることができる」(ピーターソン氏)

この研究の主な目標は、将来的にこうした嵐を予測できるようにすることにある。

「ミッションには、科学チームのメンバーが現在開発中のツールを使っている。同時に、ミッションを通じてそうした予測ツールの改良につながるフィードバックを提供している」とピーターソン氏は話す。

「ドラゴンレディー」の愛称で呼ばれるU2は、まだ偵察衛星がなかった時代の1950年代半ば、当時のソ連を偵察する目的で開発された。高高度を飛行すればソ連のミサイルも届かないという想定だったが、初飛行からわずか4年後の1960年5月1日、ソ連軍によって撃墜された。

2016年にカリフォルニア州ビール空軍基地を飛び立つU2偵察機/Beale Air Force Base

それでもU2は、冷戦時代からキューバ危機、ベトナム戦争、さらにはイランやアフガニスタンといった現代の紛争でも、重要な情報を提供し続けた。

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